「医療従事者はもう限界です」・・・

注目の人 直撃インタビュー


【転載開始】


■森田しのぶ医労連委員長

 「医療従事者はもう限界です」

 公開日:2020/12/14


◆森田しのぶさん

 (日本医療労働組合連合会委員長)

 新型コロナウイルスの第3波が猛威を

振るっている。

春、夏を上回るスケールで、医療提供体制

は危機的な状況だ。

春からの長丁場に、医療従事者の奮闘は

続くが、病院経営が悪化する中、政府の

支援は行き渡らず、待遇は改善されてい

ない。

医療現場の最前線の現状について聞いた。

*インタビューは【動画】でもご覧いた

 だけます。


 ――コロナ第3波が深刻な事態になって

きました。医療従事者の負担は相当のもの

だと思います。


 緊急事態宣言の発令もあって、春の第1波

は落ち着いてきました。秋の第2波を想定し

ていましたので、夏は設備、人員体制など次

に向けた準備期間と考えていました。ところ

が、スタッフは心身ともに休む間もなく、夏

に第2波が来て、途切れることなく、規模の

大きな第3波に見舞われています。


 ――緊張状態は春からずっと続いているの

ですね。


 春の段階ではきちんとしたすみ分けもなく、

病院はコロナの患者をどんどん受け入れざる

を得ませんでした。医療用マスクやガウンな

どが不足し、感染症に不慣れなスタッフも

少なくなく、手探りだった。また、誹謗中傷、

差別も多かった。その中で医療スタッフは

耐えて働いてきました。


 ――病院の経営は苦しくなりました。


 コロナ患者を受け入れて負担が増える一方、

他の患者が減り、大幅に減収になった。

コロナ患者を受け入れていない医療機関にも

受診控えが広がりました。手術や検査は先延

ばしされ、健康診断は軒並み延期されました。


 ――医療機関の経営悪化により、最前線

で奮闘しているスタッフにしわ寄せが及ん

だ。医労連加盟組合の医療機関の3割超で

夏の一時金が前年より減る結果になりまし

たが、冬の一時金はどうでしたか。


 昨冬の一時金は前年に比べてマイナス

だった医療機関が約2割でした。今年は全体

で約4割超、コロナ患者を受け入れている

機関は7割近くが前年比マイナスです。昨年

より、また今夏よりマイナス回答の割合は

増えたのです。待遇は改善どころか悪化して

います。


■医療スタッフには「Go To」は全く無縁


 ――政府は「Go To キャンペーン」に多額

の税金を投じています。


 経済を回さなければならないのは分かるの

ですが、感染を抑えてからすることだと思い

ます。


 ――医療スタッフには「Go To」はどう

映っているのでしょう。


 全く無縁です。家と病院の往復や最低限、

生活に必要な外出をするだけですから。

医療スタッフには移動制限、会食制限など

があり、院外での集まりにも上司の許可が

必要。感染を警戒して、家族と離れて

ホテルから通勤する職員もいます。


 ――政府は医療関係者への感謝は盛んに

口にしますが、中身が伴っていない。


 医療従事者らに感謝や敬意を示すため、

航空自衛隊のブルーインパルスの飛行が

ありました。どれくらいの費用を使って

飛ばしたのか分かりませんが、感謝して

いただくのはありがたいですが、医労連

で行ったアンケートには「それよりも、

きちんと自分たちのところに、必要な

手だてをしてほしい」との記載がありま

した。


 ――政府は補正予算で医療機関を支援

しているのではないですか。


 コロナ対策として国が設けた総額

約3兆円の「緊急包括支援交付金(医療

分)」があるのですが、医療機関に届い

た額は10月末の時点で、全体の2割程度

の約5200億円にとどまっています。医療

機関の手持ちの資金がないので、職員の

ボーナスを減らさざるを得なかったケース

もあると推測しています。交付金が遅れ

たことでボーナスが減額になったのであれ

ば、後からでも何らかの手だてが必要です。

そもそも、国の支援は遅れているとしか

言えません。


 ――過酷な労働な上、待遇も改善され

ない。離職者が相次いでもおかしくあり

ません。


 医労連の加盟組織では、今のところ離職

は顕著には見られていません。医師も検査

技師も看護師もみな、プロ意識を持ってい

ます。「ここに必要な治療や検査がある。

看護がある」となると、放っておけないの

です。


■完全防護は2時間でキツい、6時間で

ヘトヘト


 ――日本特有の働き方も過重労働の要因

のようですね。


 欧州では、交代制勤務で時間が来たら、

仕事が残っていようがいまいが、次の人が

引き継いで仕事をするんです。チームと

して仕事をしている。日本の場合は、患者

の状態は引き継ぎますが、自分がやって

いる仕事が終わるまで残業するので、無理

して働くと、結局、ベストの状態で働けな

くなってしまう。


 ――かなり無理しているのですね。


 コロナ対応のスタッフの中には、休息の

ために防護服をいったん脱ぐと、着脱に

時間が結構かかるので、できるだけ休息を

しないように水分を控え、トイレに行くの

を我慢する方もいます。完全防護は2時間

でもキツい、6時間でヘトヘト。使命感と

責任感で何とか奮闘していますが、もう

限界だと思います。


 ――第3波では病院や高齢者施設でクラ

スターが多発しています。


 エッセンシャルワーカーの重要性は春から

指摘されています。病院や高齢者施設など

で、予防的に陽性者を見つける定期的な検査

を私たちも一貫して訴えてきました。

世田谷区を皮切りに、神戸市や江戸川区な

ど一部自治体で行われているようですが、

全国的には行われていません。定期検査を

していれば、防げたクラスターもあるので

はないでしょうか。


◆潜在看護師の復帰は容易ではない


 ――医療提供体制が危機的な状態です。

第3波では、重症化リスクの高い高齢者

感染も目立ち、重症者数も多くなってい

ます。


 重症者の増加が医療提供体制の逼迫を

加速させています。エクモや人工呼吸器

を使うような重症者は、1人の患者に

4~5人はスタッフがいないと対応し

きれません。


 ――入院病床や宿泊施設、設備は確保

できても、医療スタッフ不足が深刻です。


 春の時も、国や日本看護協会が、免許

は持っているものの現場を離れている

潜在看護師に“復帰”を呼びかけましたが、

応募は少なかった。感染地域の首長が

他府県に医療スタッフの派遣を要請して

も、なかなか集まりません。私も現場を

長く離れていますが、数カ月程度の

ブランクならまだしも、何年間も現場を

離れた人がこのタイミングで復帰するの

はすごい努力、決断、決心が必要になり

ます。昔は紙ベースのカルテ、今は電子

カルテ。今の時代に合ったやり方に対応

できるのか。感染症に対する考え方も

進歩してきている中で、対策のあり方も

変わってきているでしょう。一から研修

を受けた上で、やらざるを得ない。

そうじゃなくても、看護師が足らない

まま現場を回している中で、誰が復帰者

を指導し、迎え入れるのか。人間関係も

ぎくしゃくするかもしれません。


 ――これまでの医療政策のツケが回って

きた面もある。


 1980年代から始まった臨調(臨時行政

調査会)以降の行政改革や構造改革で、

医療社会保障の抑制政策が取られてきま

した。その中で公衆衛生も対象にされ、

保健所を削ってきた。公衆衛生をきちんと

やり、予防に視点を置いた取り組みをして

いく中でこそ、医療費は抑えられると思う

のですが。


 ――政府は公立病院の統廃合も進めて

きました。


 日本列島という地形を考えると、政府

が主張する病院が多すぎるというのは

違う。私は離島の出身ですが、山間部や

離島にだって病院がなければ命は守れま

せん。ところが政府は、山間部や離島を

含めて統廃合しようと計画している。


 ――コロナ禍を踏まえても、計画は

変更されないのでしょうか。


 驚くことに、コロナ禍で病床不足の問題

に直面しても、統廃合計画はそのままなの

です。しかし、最近では統廃合に賛成して

いた自治体の首長や知事会が見直し、凍結

を求めるようになりました。賛成していた

時には、感染症という視点がなかったと。

住民の健康、命を守るためには、やはり

病院は必要だということですね。コロナ禍

を通じて、自分が長として束ねている地域

を見た場合に、住民をどう守るかという

視点に立つようになったのだと思います。

国は医療が成り立たないと、経済も生活も

回らないという視点で考えてほしいと思い

ます。

(聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ)


【転載終了】

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 医療崩壊も心配ですが、日本の財界は

政府の助け(税金)が必要になるほど

弱体化してますから不安ですよね。


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