ロシアへの制裁で目の当たりにした「経済の凶器化」と「通貨のデジタル化」の怖さ

日刊ゲンダイDIGITAL


【転載開始】


特別寄稿 浜矩子同志社大学教授

■ロシアへの制裁で目の当たりにした

 「経済の凶器化」と「通貨のデジタル化」

 の怖さ

 公開日:2022/03/20


 まず最初に言っておくべきことがあり

ます。

我々は蛮行や暴挙を、人類の進化の中で

歴史の向こう側に置いてきたはずです。

ロシアのウクライナ侵攻は絶対に許して

はいけない。

しかし一方で、こうした発言が、各国の

軍備増強を容認する方向につながらない

ことが重要です。

「核共有」や「非核三原則の見直し」

などを言い出す輩がいますからね。

物事を冷静に仕分けしながら対処しなけ

ればならない困難な状況にあるという

ことを、強く意識しておく必要があると

思います。


 ロシアへの対抗策として経済制裁が

行われています。

気のふれた独裁者を自在にさせないため

には、正しい選択ではあります。

ウクライナを見捨てるのか、という論調

に流され、第3次世界大戦になるのだけ

は絶対に避けねばなりませんから。

ただ、「経済的に干す」という行為には

経済を「武器化」する怖さが伴う。

人間の営みであり、人間を幸せにするため

の経済が時に「凶器」になること、

邪悪なるものを制圧するためには経済を

凶器として使わざるを得ない場面がある

ことを、我々はいま目の当たりにしていま

す。


■紙幣が手元にない怖さをロシア市民は

 痛感している


 国際決済網のSWIFTからロシアの銀行

を締め出す制裁はもちろん過激ですが、

それ以上に、主要国の中央銀行がロシア

の外貨準備を凍結したことは、かなり

効果的です。

暴落するルーブルを買い支えるために

ため込んだ外貨が使えない。

ルーブルが紙くずになっていくことを

阻止できない。通貨の無力化です。


 金融がデジタル化されていますし、

そもそも、外貨準備は必ずしも自国の

中央銀行の金庫に積み上げられている

とは限らない。

他の国の中央銀行に帳簿上で「預けている」

格好になっている場合があります。

この分については、各国中銀がロシアから

のアクセスを遮断すれば、事実上、ロシア

の外貨準備は存在しないのと同じになって

いるのです。


 その意味では、中央銀行通貨の暗号通貨化

という流れの怖さも、我々は今改めて目の

当たりにしているといえるでしょうね。

もともと私は通貨のデジタル化には懐疑的

ですが、今回改めてそれが確認できました。

現金のデジタル化がもてはやされる中、

手元に紙幣という物理的現金がないことの

怖さをロシア市民はいま痛感しているで

しょう。


 こうした極限的な状態では、まさしく経済

のファンダメンタルズ、原理原則が見えてき

ます。

くしくも通貨のデジタル化に大いなる天の

警告が発せられたと考えてもいいのでは

ないでしょうか。


 最後にもうひとつ。

プーチン大統領のファーストネームは

「ウラジーミル」、ウクライナのゼレンスキー

大統領は「ヴォロディーミル」。

読み方の違いだけで、同名です。

10~11世紀のキエフ公国の指導者であり、

キリスト教の聖人でもある「ウラジーミル1世」

から取った名前なのですから、聖人の導きに

よって、2人が和平に到達することを願って

やみません。


【転載終了】

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 ロシアへの経済制裁で一番ビビったのは、

多分、中国ではないでしょうか。

中国は、積極的に電子マネー化を進めてい

るだけに、他人事ではないのでしょう。


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