有田芳生氏「統一教会は毎月1億円の『対策費』で『政治の力』に頼った」
注目の人 直撃インタビュー
【転載開始】
■有田芳生氏
「統一教会は毎月1億円の『対策費』で
『政治の力』に頼った」
公開日:2022/08/08
■有田芳生(ジャーナリスト/前参議院議員)
統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を
めぐり、一体どんな「政治の力」が働いたの
か──。
教団の実態を暴き、社会問題化の端緒を開い
たジャーナリストの発言に各方面で衝撃が
走っている。
統一教会との距離を見誤り、凶弾に倒れた
安倍元首相の負の遺産は「内閣の最重要課題」
だったはずの北朝鮮拉致問題もまたしかりだ。
統一教会、そして拉致問題。
この間、何が起きていたのか。
渦中の人に改めて聞いた。
◇ ◇ ◇
──教団をめぐる約30年前の刑事摘発の
動きについて、「政治の力」が阻止した
という趣旨の発言をされました。
1980~90年代の社会問題化、オウム真理教
に対する95年の宗教法人解散命令、96年の
改正宗教法人法施行、2007~10年に相次い
だ霊感商法摘発。
いくつか波がありながら、教団は事実上、
野放しにされてきた。
なぜ追い詰められなかったのでしょうか。
順を追って説明すると、95年3月にオウム
が地下鉄サリン事件を引き起こしたことなど
で、当時の警察庁最高幹部や警視庁公安部
幹部と情報交換する関係ができました。
間もなく教祖・麻原彰晃が逮捕・起訴され、
局面は捜査から公判へと移った。
そうした中、警視庁幹部から「統一教会に
ついてレクチャーしてほしい」と呼ばれたの
です。
「集まっている人間がどこの誰かは聞かない
でほしい」との条件付きで。
霊感商法から赤報隊事件まで1時間ほど話した
後、幹部ら3人で食事をした。
「今日の集まりは何だったんですか」と聞く
と「オウムの次は統一教会を摘発する予定だ」
と。
「何から入るんですか」と重ねると、「経済
問題だ」と返ってきた。
──いまだ続く霊感商法も大問題ですが、
70年代には教団幹部が正規手続きを経ず、
数億円の小切手を韓国に持ち出した神戸事件
(証拠不十分により無罪)がありました。
入り口は霊感商法なのか、海外送金なのか。
そこはハッキリしなかったけれども、カネの
問題から入るとは言っていましたね。
■「有田さんには税金かけたなあ」と
──しかし、当局に表立った動きはありま
せんでした。
文化庁は統一教会に対する解散請求を議論し
たものの、断念。
一方の教団は97年以降、名称変更を求め続け、
第2次安倍政権下の15年に認証されました。
05年に警視庁の幹部らと居酒屋で飲む機会
があった。
「10年経った今だからこそ話せることを教え
てください」と言うと、最初に返ってきたの
は「有田さんには税金かけたなあ」と。
──どういうことですか?
当時、テレビ出演した僕の発言を公安部が
チェックし、危ういことを言ったと判断する
と、尾行をつけていたと言うんです。
朝から晩まで、僕が帰宅するまで。
1日延べ50人態勢だったと。
全然気づかなかった。
たまに行きつけの居酒屋に顔を出したことも
あった。
「そういう時はどうしてたんですか?」と
聞くと、「近くにいたよ」って。
──それだけ教団の動きを警戒していたん
ですね。
ただ、肝心なところは語らず、「政治の力で
すよ」と言われた。
要するに、政治家から圧力を受けて統一教会
本体の摘発はやめたと。
ですが、公安部は重点対象を絞り込み、
リスト化していた。
幹部の名前や住所のほか、運転免許証や前科の
有無、活動歴など幅広く調べ上げていた。
統一教会は間違いなくターゲットだった。
推測にはなりますが、警察官僚出身の有力議員
が動いたからコトが起きなかったのか。
■「空白の30年」が安倍元首相の銃撃につな
がった
──刑事裁判で教団の組織的犯行が認定され
た09年の新世事件(特定商取引法違反)では
横やりが入り、松濤本部は家宅捜索を免れたと
されます。
「いよいよ来たか」と思ったんですけどね。
宗教法人格の認証が取り消されて当然なので
すから、統一教会が「政治の力」に頼ったと
しか考えられない。
統一教会の内部文書のひとつに、毎月の海外
送金や国内経費を項目ごとにまとめたものが
ある。
07年は「PRチーム」に毎月500万円。
国会議員に対するロビー活動向け予算です。
それに対し、「対策」は毎月およそ1億円。
警察に影響力を持つ国会議員に対するロビー
活動と裁判に向けた経費です。
07年1月9000万円、2月1億円、3月1億円、
4月1億円、5月8000万円・・・。
──摘発が加速していた時期ですね。
松濤本部、つまり統一教会本体に捜査の手
が迫らないよう手を打っていたということ。
統一教会関連の報道があふれたのが92~93年。
95年のサリン事件発生で「カルト=オウム」
の図式が出来上がり、統一教会への関心が
薄れ、僕が言うところの「空白の30年」が
生まれてしまった。
この間、ノーマークだった統一教会は政治家
にさらに接近、浸透。
霊感商法も献金集めも続けていた。
政治やメディアが統一教会をチェックして
こなかったツケが銃撃事件という形で噴き
出してしまった。
オウム事件もそうですが、銃撃は日本の歴史
に刻まれる事件。
統一教会はこれまでにない最大の危機に直面
している。
かなり動揺していると聞きます。
■官邸外交で拉致問題は「未解決」
──岸田自民党は銃撃事件を「民主主義へ
の挑戦」と強調し、教団の存在や関わりを
うやむやにしようとしています。
安倍さんの決定的ミスは統一教会の関連
団体のイベントにビデオメッセージを送り、
(教祖の妻の)韓鶴子総裁に「敬意を表しま
す」と言ったばかりか、「家庭の価値」に
2回も言及し、「高く評価」したことです。
母親の法外な献金によって家庭が崩壊した
山上徹也容疑者からすれば、「何を言って
いるんだ」となるでしょう。
もっとも、統一教会の影響力については冷静
に評価すべきです。
過小評価も過大評価もいけない。
等身大の統一教会を見なければ。
宗教保守の中で特異なのは事実です。
68年設立の政治団体「国際勝共連合」を通じ
て政治家に近づき、主に自民党に対して
伝統的にロビー活動を展開し、秘書などを
無償で差し出すなどして助けを求める関係を
つくり上げてきた。
自民党からすれば、支援してくれる上、
タダ働きをいとわない組織。
持ちつ持たれつの関係が続いてきた。
ですが、第2次安倍政権以降の自民党、ひいて
は日本の政界が牛耳られているかのように見る
のは、統一教会を大きくとらえすぎている。
──アベ政治を振り返ると、拉致問題は
むしろ解決から遠のきました。
新著「北朝鮮 拉致問題」(集英社新書)では、
〈拉致被害者に対する聞き取り〉と題した
政府の極秘文書(04年作成)をひもとき、
安倍政権の取り組みを批判的に検証されていま
す。官邸外交が問題だったと。
小泉元首相の電撃訪朝を受け、拉致被害者5人
が帰国したのは02年10月。
まもなく20年が経とうとしています。
当時の背景を説明すると、外務省の田中均
アジア大洋州局長が、小泉首相にアジアで
唯一残った北朝鮮との国交正常化の実現を提案。
北朝鮮側のいわゆる「ミスターX」と極秘交渉
を1年間重ねて初の日朝首脳会談を実施し、
日朝平壌宣言、被害者帰国につなげた。
外務省主導のオーソドックスな外交、質の高い
「ヒューミント」に基づいた外交によって果実
を得たのです。
一方、安倍政権は外交経験の乏しい官邸外交に
シフトし、後退させてしまった。
──政府の極秘文書が生かされなかったとも
指摘されています。
あの文書は、拉致の実相を被害者の証言に
よって明らかにした資料的価値の高いもの。
安倍さんも「全文、何回も読んでいる」と国会
答弁していた。
安倍さんは拉致被害者が現実にどういう状況に
置かれていたかを理解していたと思います。
にもかかわらず、事態は動かなかった。
端的に言えば、政権基盤の強化に拉致問題を
利用したのです。
──14年5月のストックホルム合意あたりま
では前進しているように見えました。
決定的だったのが14年秋から15年にかけての
動きでした。
ストックホルム合意に基づき、外務省が北朝鮮
側と交渉する中で、認定拉致被害者の田中実
さんと特定失踪者の金田龍光さんの生存情報が
もたらされた。
2人とも結婚し、家庭を持っていると。
田中さんの結婚相手は日本人で、息子が日本風
の名前だということも分かってきた。
そうした情報が盛り込まれた中間報告を受け
取り、現地に職員を派遣して田中さんらに聞き
取れば、奥さんが被害者なのかも含め、
拉致問題をめぐる新たな情報を収集できた。
解明に向けた重要な手掛かりをみすみす捨てて
しまったのです。
──「中間報告を受け取れば幕引きされる」
とアナウンスされたものですが、象徴的な存在
である横田めぐみさんらの生存情報が含まれて
いなかったためとも聞きます。
そういうことです。
世論が納得しない、政権への打撃になると判断
したのです。
ボールは日本側にある。
北朝鮮側は朝鮮学校の授業料無償化外しや
朝鮮総連幹部の再入国禁止などの改善を求めて
いる。
日本側の動きが局面打開のカギなのです。
政権は代わった。
日朝平壌宣言、ストックホルム合意に立ち返り、
外務省主導のオーソドックスな外交で再始動
する必要があります。
【転載終了】
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なにがあろうと政治は変わらない
という事です。
旧民主党政権でも旧統一教会は手
を突っ込んできており、余程の政治
哲学を持っていないと魔手は付き
纏うのでしょう。
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