今そこにある日本の危機とは?

AERAdot. 連載「政官財の罪と罰」


【転載開始】


■古賀茂明「南北会談で“外交の安倍”のウソが

 露呈今そこにある日本の危機とは?」


 南北首脳会談が終わり、ゴールデンウィーク

が始まった。


 これに先立ち、安倍政権の支持率低下

に危機感を募らせた安倍総理は、北朝鮮

問題で蚊帳の外にされているというイメージ

払しょくを狙って日米首脳会談を行ったが、

米朝首脳会談で拉致問題を取り上げると

約束してもらっただけで何の成果もなく帰国

した。


 追い打ちをかけるように、南北首脳会談

では、南北に米を加えた3カ国、または米中

2カ国を加えた4カ国協議を行うことが発表

され、ますます「蚊帳の外」のイメージが

広がってしまった。


 「外交の安倍」は完全に不発どころか、逆に

それで躓いてしまった安倍総理としては、次の

切り札である「経済の安倍」で勝負するしか

なくなってきた。

そのため、来年秋の消費税増税の影響緩和

を大義名分として、来年度予算での巨額の

対策費計上などが早くも画策されている。

いつも繰り返される支持率目当てのただの

大盤振る舞いである。


 しかし、いくら目の前の株価や大企業の

利益が上昇したからと言って、地方経済を

含めた日本経済の競争力が回復するわけ

ではない。

安倍総理の立場に立っても、このままでは、

彼にとっての最重要課題である中国との

軍拡競争に勝ち抜くことなど夢のまた夢と

いう状況だ。


 日本経済の長期展望を語る時、財政

赤字や少子高齢化と社会保障の問題

などが議論の中心になっている。

しかし、私が最も不安に感じているのは、

日本の競争力の源が揺らいでいるという

ことだ。

中でも、人材と新規事業の創出における

日本の立ち位置を冷静に見つめてみると、

凍り付くほどの恐怖感に囚われる。


■先進国から転落しかかっている日本


 まず、これはかなり広く認識されている

ことかもしれないが、日本は今どれくらい

裕福な国だと見ることができるのかを

再確認しておきたい。

国民の豊かさを図る代表的指標が一人

当たり国内総生産(名目GDP)だ。

そのランキングで見ると、日本は世界何位

くらいに位置するのかと聞かれたら、

先進国のトップが集まるG7(先進国首脳

会議)というものがあるから、3位くらいか、

まあ、悪くても7位くらいかなと思う人がいる

かもしれない。

しかし、日本の順位は世界25位(2017年の

IMF統計より)。

90年代は、最高3位で、一貫してベスト10

に入っていたから、その地位の低下は明ら

かだ。

25位と言えば、先進国から転落寸前と

言っても良い。


 そうは言っても、アジア・中東諸国に比べ

れば、まだまだ断トツ1位だろうと考えたく

なるが、実はアジア・中東でも、日本の位置

づけは大きく後退している。

順位は毎年変動するが、17年は、マカオ、

カタール、シンガポール、香港、イスラエル

に次いで6位(2017年のIMF統計より)である。

イスラエルとは為替レート次第で順位は入れ

替わる可能性はあるが、今やシンガポール

に追いつくのはほとんど不可能という状況だ。


 経済規模では、まだまだ日本の規模は

大きいが、ついこの間中国にGDPで抜かれ

たと思ったら、今や中国は日本の2.5倍近く

にまで成長している。

つまり、日本経済の規模は中国の4割程度

しかないのだが、これも意外と知られてい

ない。


■将来を担う企業が育たない日本


 米中では、新興企業が短期間で急成長し、

世界を動かす影響力を持つまでになるが、

日本ではそういう動きが全くない。

安倍政権もそうした事態を憂慮し、お得意

の「成長戦略」で、新興企業などのビジネス

環境を他国に負けない水準にしようとぶち

上げた。その時のスローガンが、世界銀行

が発表するビジネス環境ランキングで

「先進国3位を目指す」というものだった。

そもそも、「先進国」3位としたのは、ビジネス

環境の整備には途上国が非常に力を入れ

ていて、既に上位に陣取っているので、世界

3位というとあまりにも実現性がないから、

先進国に限って3位に入ろうというまやかしの

目標にしたのだ。

しかし、この構想は全く不発。

かえって順位を落とす結果となった。

2017年の世界ランキングでは、日本はベスト20

にも入れず34位。

35位のロシアに激しく追い立てられるという

始末だ。

ベスト5には、1位のニュージーランドに続いて、

2位シンガポール、4位韓国、5位香港とアジア

3カ国が並び、この他にも15位に台湾が入って

いる。


 つまり、世界各国が新規事業を育てようと

そのための環境整備に邁進しているので、

日本が多少アリバイ作りの政策をやっている

だけでは、完全に置いてきぼりになっている

ということなのだ。

このままでは、さらに世界との差は開き、

新規事業の成長で大きな後れをとるのは

確実だ。


■将来を担う人材教育でアジアに遅れる日本


 日本経済の将来を占ううえで最も重要

なのが、人材だ。

そこでも日本はアジア諸国に大きく遅れて

いる。


 世界の大学ランキングというものがあるが、

実は、日本の大学は、東大でも世界46位と

大きく順位を下げている(Times Higher

Education2018)」。


 世界ではどうしてもアメリカやイギリスの大学

が上位に入るので、アジアだけのランキングで

見るとどうなるか。

当然東大が1位だと思う人が多いかもしれない

が、実は、毎年順位を落としてついに8位まで

下がってしまった。

1位シンガポール国立大学、2位清華大学(中国)、

3位北京大学(中国)、4位香港大学、

5位香港科技大学、5位南洋理工大学(シンガ

ポール)、7位香港中文大学で9位と10位は

韓国の大学である。

上位21校中(20位が2校あるので21校)のうち、

日本は東大と京大(11位)の2校だけ。

中国は7校、韓国と香港が5校、シンガポール2校

だった。


 将来のことを考えると、子供や孫の進学では、

東大や京大よりも中国やシンガポールや香港

の大学を勧めた方が良いということになるの

だが、実は、日本人には、これらの大学に

進学するのは極めて難しい。

語学の壁があるということもあるが、それ以上

に入試のレベルが、中国などの大学の方が

日本よりもはるかに難しいからだ。


 中国の受験競争の激しさは有名だが、

その厳しさに負けて、日本の高校に留学して

日本の一流大学を目指す動きがここにきて

急速に強まっている。

先日もNHKのニュースで放送していたが、

宮崎県の私立高校が中国で留学生獲得の

営業をかけたら多くの優秀な中国の学生が

応募してきた。

今や学生の過半が中国人で、日本の大学に

全員が合格している。

留学生に聞くと、中国で良い大学に入るのは

難しいから諦めて、日本の大学を目指すこと

にしたという。

彼らにとっては、日本語で受けるとしても、

まだ中国よりは易しいというのである。

それほど、日本と中国の若者の学力に差が

ついているということになる。


 この傾向は、経営大学院(MBA)については、

より顕著だ。

フィナンシャルタイムズが発表した世界のMBA

ランキング2018では、ベスト100のうち大半は

アメリカの大学院だが、アメリカ以外では、

英国の14校に次いで2番目に多くランクイン

したのが、中国の7校だった。

1位スタンフォード(米)、2位INSEAD(仏)、

3位ペンシルバニア大ウォートン校などの

常連に交じり、何と中国の中欧国際工商

学院が8位とベスト10入りをして世界を

驚かせている。

その下に続く9位がMIT(マサチューセッツ

工科大)、10位カリフォルニア大バークレー

校と聞けば、そのすごさがよくわかる。

5、6、7位がハーバード、シカゴ、コロンビア

だが、今の勢いだと、10年以内にトップの

座を占める可能性もあると言われるほどだ。

ちなみに、この大学院の卒業生の卒業直後

3年の平均年収は、16万2858ドル。

1ドル110円で計算すると1791万円だ。

日本のMBAを卒業してもほとんど箔付け

程度にしかならないのと比べると雲泥の差

と言って良いだろう。


 この中国の大躍進に対して、日本のMBAが

ベスト100にいくつ入っているのだろうかと

思って、ランキングを上から順にスクロール

してみると、ついに一番下の100位まで行って

も発見することはできなかった。

つまり、100位以内にゼロである。

中国の7校に比べて、何とも寂しい話だ。


 これらの情報は秘密でも何でもない。

新聞などでも報じられている。

ただし、記者に何の問題意識もないので、

これが何を意味するのかが理解できず、

極めて小さな扱いでごく一部の情報を

載せるだけである。


 一方、優秀な若者は徐々にこうした事実に

気づき始め、東大よりも海外の有名大学を

目指す動きが広がっている。

しかし、それは、残念ながら、まだごく一部

である。


 それを象徴する話を聞いた。

元民主党女性議員の令嬢が、上智大学を

卒業後、香港の大学院に進学した。

それをその元議員が友達に話したら、

「上智まで出たのに、なんでまた、香港なんか

に出したの?」という反応ばかりが返ってくる

というのだ。

その元議員の令嬢は、メールでこう連絡して

来たという。


 「ママ、中国は日本をドンドン追い越してる

のに、日本人は、気づいてない。それって、

相当ヤバくない?ここで勉強したことをちゃん

と生かせる仕事がないから、日本に帰っても

仕方ないね。アメリカかシンガポールで仕事

を探すわ。給料もずっと高いから」


 もう一人、カリフォルニア大バークレー校で

MBAを取って、アメリカで今年起業したある

日本人の若者の話を聞いた。


 「日本に帰る理由を考えたけど、一つも

なかった。強いて挙げれば、そこそこおい

しいご飯がタダ同然で食べられることかな。

ランチの定食が10ドル(1100円)なんて信じ

られないよね。アメリカだと、その何倍もする

からね。でも、アメリカの大都市なら、お金

さえ出せば、おいしい店はたくさんあるし、

日本の何倍も稼げるから、結局、安いご飯

は大した魅力にはならないな」


 そして、こう付け加えた。


 「日本人留学生は、ほとんどが政府や企業

のひも付きで、日本に帰る前提で勉強している。

留学は箔付けというレベルだから、米国で独立

して活躍できる人材は少ないね。中国人なら

たくさんいるよ」


 日本の未来を支えるはずの若者のレベルが

国際比較でこんなに低下しているとしたら、

日本経済の将来は本当に危機的状況にある

と言って良いだろう。


 しかし、よく考えると、それ以前に、「日本礼賛」

論がもてはやされる中、こうした事態を国民が

認識していないこと、そして、何よりも安倍総理

という政府のトップがその深刻さを全く理解する

能力がないように見えることこそ、最大の危機

ではないだろうか。


【転載終了】

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 抜粋しようと思ったのですが、長文でも

全て転載したほうが良いと判断しました。


 日本の大学ランキングや競争力が年々

落ちてきています。


 日本では、「東大=エリート」と考えがち

ですが、東大は元来官僚養成学校として

つくられ、官僚を目指して入学する方も

少なくないと思います。


 国民が知らないのも無理はありません。

メディアが忖度し、政権に都合の悪い

情報は配信しないからです。


 何回か書きましたが、東京大学は、

「日本の平壌大学」と世界からは揶揄

されています。


 意味は、日本国内でしか通用しない

大学という意味です。


 東大への海外からの留学生も年々

減少しているというのも、海外企業では

通用しないからだそうです。


 戦後70年、あらゆる面で自民政治の

失政の影響が出始めてきています。


 若い世代が自民党を支持するのも、

このような情報を持たないからでは

ないでしょうね?


LC=相棒's のじじ~放談!

時事関係や自動車関係などの記事を書いています。

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