「西日本豪雨がもたらす世界経済の停滞に懸念」
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【転載開始】
■ぐっちー
「西日本豪雨がもたらす世界経済の停滞に懸念」
経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で
連載する「ここだけの話」をお届けします。
モルガン・スタンレーなどを経て、現在は
投資会社でM&Aなどを手がける
ぐっちーさんが、日々の経済ニュースを
鋭く分析します。
* * *
西日本全体を集中的豪雨が襲い、
「平成30年7月豪雨」と名付けられました。
被害にあわれた方に心よりお見舞い
申し上げますとともに、一日も早い復興を
願っております。
さて、米中貿易紛争で米経済が停滞する
とか世界で株が暴落する、などとまことしや
かに話す「専門家」たちをよく目にしますが、
自分で会社一つ経営したことがないという
のはお気楽なもんだ、とつくづく思います。
米国はGDPの70%が国内の消費ですから、
貿易問題が米経済に与える影響は自ずと
限られます。
輸出入をやっている事業者の皆さんの心理的
変化というのは否定できません。
これによって彼らが当面投資計画を先送りする、
なんてことは起きるでしょうから影響がないと
までは言いませんが、限定的であることは確か
です。
問題はそこではなく、むしろ日本のような
高度工業生産国の内部でサプライチェーンが
ズタズタにされるような今回の災害のほうが
はるかに深刻なことは、7年前の東日本大震災
の時の世界経済の教訓です。
教訓はいいんですが、多くの企業は、結局日本
に取って代われる国がないので、せいぜい在庫
を増やすことくらいしか対処方法がなく、
当面は耐え忍ぶしかない。
一部、災害の少ないシンガポールなどに生産拠点
を動かすような動きが実際に出てきていましたが、
この災害の多い日本で多くのキラーコンテンツが
製造されており、そのサプライチェーンが切れると
世界経済が立ち行かなくなるという事実は、
米中貿易問題以上にセンシティブな問題である
ことを認識する必要があります。
米国の象徴ともいえるiPhoneを1台売ったときの
利益はどのくらい米国に残るのか、米国の大学生
にアンケートを取ると、70%以上と答える学生が
半分以上いる、という結果が出ていました。
まあ、わからなくもありませんが、実際に販売した
ときの利益の行き先を見てみると、
1.日本 34%
2.ドイツ 17%
3.米国 6%
4.中国 3.6%
となります。
要するに付加価値の高いものは圧倒的に日本で
供給されているということが言え、
トランプ大統領がこの数字を見たら再び暴れること
は間違いない(笑)。
世界のサプライチェーンにおける日本の位置づけ
を考えると、今回の災害が世界経済にかなりの停滞
を引き起こす心配があります。
関西から九州までエリアが広いので、東日本大震災
以上の影響が出るかもしれません。
我々実業家はそういう点では常に「臆病」ですが、
今回の災害においては米中貿易摩擦とは比較に
ならないほどの「感度」で情報がやり取りされていた、
という事実を「現場から」申し上げておきたいと思い
ます。
事件が起きるのは現場であって会議室では
ありません。
※AERA 2018年7月23日号
【転載終了】
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政府の対応の遅れは、経済的な影響を
甘く見積もっているということなのでしょう。
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