田原総一朗「ウソが常識と化した安倍内閣の高い支持率に違和感」
連載「ギロン堂」
【転載開始】
■田原総一朗
「ウソが常識と化した安倍内閣の高い支持率に違和感」
モリカケ問題をはじめ、IR実施法や働き方
改革関連法の可決など波乱含みだった今期
の通常国会。
ジャーナリストの田原総一朗氏は、多くの
問題を抱えているにもかかわらず、依然と
して高い安倍政権の支持率に違和感を
覚える。
* * *
7月22日に、182日間の通常国会が閉幕した。
だが、西日本豪雨災害の中で、強引に可決
された統合型リゾート(IR)実施法や参議院の
定数を6増させる改正公職選挙法などは、
国民の多くが納得しておらず、民主主義に
対する政府の姿勢を強く疑わざるを得ない。
たとえばIR実施法に対しては、安倍内閣寄り
の読売新聞の世論調査でも反対が62%で、
賛成は28%である。
朝日新聞の調査では、反対が76%、
賛成は17%でしかない。
さらに、参院の定数を6増させる改正公職
選挙法についても、読売新聞の世論調査で
反対が67%、賛成は20%でしかない。
朝日新聞の調査では反対が56%、賛成が24%
となっている。
読売新聞よりも差が少ないのは、世論調査の
公正さを示している、といえるのかもしれない。
そして、今国会で安倍首相が最も力を入れた
はずの“働き方改革関連法”だが、野党が強く
反対した“高度プロフェッショナル制度”創設に
ついて、私は途中まで誤解していた。
私は、政府は高プロの対象者として、
“年収が1075万円以上で、専門性が高い金融
ディーラーやコンサルタントなどを想定している”
と捉えていたのだが、これは想定であって、
実は、対象業務や年収といった適用要件などの
具体的なことは、今後の労働政策審議会(労政審)
で議論され、何と国会審議を経ずに、厚生労働省
の省令で定めることになっている、というのである。
ということは、対象職種が拡大されたり、年収の
要件が引き下げられたりする可能性が大きく、
労政審への白紙委任のようなものだ。
これでは、とても認めるわけにはいかない。
前年から続いている森友・加計学園問題では、
ウソをつくことがまるで常識のようになってしまって
いる。
安倍首相が、自分や妻が森友学園の認可や
国有地売却問題などに関わっていたら、
首相も国会議員も辞める、と言った。
そこで、財務省は慌てて決裁文書を改ざんした
のである。
それを最高責任者である麻生財務相は
“なぜ改ざんしたのか、わからないから答えよう
がない”と記者たちに述べ、さらに“個人的に
やったことで、よくある話だ。
財務省には責任はない”とまで言ってのけた。
国会の証人喚問で偽証したということで、
野党が佐川宣寿氏を告発しようとしているが、
私はむしろ佐川氏に同情している。
彼が虚偽の証言をせざるを得なかったのは、
いってみれば麻生財務相や安倍首相を守る
ためで、その佐川氏が職を失って、麻生財務相や
安倍首相が何の責任も取らないとはどういうこと
なのか。
また、24日に経済産業審議官の柳瀬唯夫氏が
退任すると報じられた。
各紙は、柳瀬氏を証人喚問できなくするための
政府の措置だと報じているが、私は柳瀬氏にも
同情している。
彼については課長時代からよく知っているが、
上司の許可なく勝手に事を進めるような人物では
ない。
2015年2月に安倍首相が加計孝太郎理事長と面会
したとなると、柳瀬氏の行動がきわめて合理的に
なる。
安倍首相を守るために、自らの人格までも犠牲に
しているのであろう。
その柳瀬氏が、定年でもないのに、経産省を
辞めなければならないとはどういうことなのか。
しかも、その安倍内閣の支持率が、朝日新聞で
38%、共同通信では43.4%もあるのはなぜなのか。
理解に苦しむ。
※週刊朝日 2018年8月10日号
【転載終了】
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同じ日本人でも理解しにくい国民がいるのは
確かですから、田原氏の悩みもわかります。
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