10~30代男子、高い安倍政権支持率の“正体”・・・
Business Journal
小笠原泰「日本は大丈夫か?」
【転載開始】
■10~30代男子、高い安倍政権支持率の“正体”・・・
「男だから」が通用しない社会への焦り
2019.08.11
7月21日に投開票された第25回
参院選は、予想通りの低投票率
(過去2番目に低い48.8%)となり、
自民・公明の与党が参院全体で
安定多数を確保した。
改憲、消費増税、年金問題など日々
の生活に密接にかかわる争点は
あったが、有権者の関心は薄かった
ようである。
フランスに暮らす筆者からすると、
なんとも平和で奇妙な国である。
まさに、自民党の望む
「日本という国の民主主義はかたち
だけで良い」という考えが、
きちんと機能しているということで
あろう。
話題になったのは、山本太郎氏
率いる「れいわ新選組」と 立花孝志氏率いる
「NHKから国民を守る党」(N国)
が比例区で議席を獲得し、
さらに得票率が2%に達したことで
公職選挙法や政党助成法が定める
「政党要件」を満たして、
公認政党になったことであろう。
れいわ新選組は比例で約228万票
(得票率4.55%)を得て2議席、
N国は約99万票で1議席を獲得した。
N国の比例の得票率は1.97%に
とどまったが、選挙区候補との合計
得票率が約152万票(3.02%)に
達した。
低い投票率と議席数を考えれば、
それほど騒ぐことではないと思う
のだが、マスコミはこの二党が
政治に改革をもたらすと大騒ぎ
している。
■高い自民党支持率
今回の参院選でもう一つ話題に
なったのは、自民党に対する若者
の支持の高さである。
朝日新聞の出口調査分析によると、
比例区投票で30代以下による自民党
への投票率が近年増えている。
実際に30代以下で自民党に投票した
人が、2010年の20%台から2016年
には41%に伸び、今回の選挙でも
同レベルを維持している。
一方、高齢者は自民党支持者が
多いと思われがちだが、自民党への
投票率は2013年から低下し、
前回の2016年の選挙では、30%前半
に低下し、30代以下と逆転し、
今回も同程度の投票率である。
60代以上での自民党への投票率低下
は、憲法9条改正や自衛隊派遣の正当化
への姿勢を先鋭化した安倍内閣への
批判とも捉えられるが、なぜ若者に
よる自民党支持が高まっているのだ
ろうか。
今の若者は保守化・愛国化しており、
憲法9条改正や自衛隊の海外派遣に
積極的に賛成であるため、自民党と
安倍政権を支持しているとも考えら
れる。
実際、日本経済新聞の調査によると、
安倍政権の
「任期中の憲法改正の国民投票」に
ついて、若年層ほど賛成が多い。
18~39歳でみると賛成64%・反対25%、
40~59歳は賛成58%・反対30%、
60歳以上は賛成43%・反対40%である。
高齢層ほど反対が多いが、全世代で
賛成が上回っていることから、
安倍政権の長期化を支持する世論が
うかがえる。
しかし、筆者は改憲の国民投票への
支持は、人々が社会的閉塞感のなかで
イベント的な変化を希求していること
の表れではないかと感じる。
このイベント感、一過性で節操がなく
ても盛り上がって面白ければそれで良い
という感覚に、若者の支持が高いという
のは、うなずけなくもない。
実際、日経新聞の調査によれば、
安倍首相に期待する政策で「憲法改正」
と答えた人は10%と7位で、
1位の「社会保障の充実」の46%、
2位の「景気回復」の39%とは大きな
隔たりがあり、希求度はかなり低い。
「やるなら、やれば」という当事者
意識のない賛成とも取れよう。
■希望を抱かない若者たち
自民党支持の高さの要因として次に
考えられるのは、自民党以外に選択肢
がないという消極的支持である。
野党の政策を見ても与党より甘言で
あり、日本の将来を考えて国民の痛み
を伴うタフな改革を謳う政党はない。
同じ甘言ならば、実績と経験のある
自民党を選択するのも、うなずけなく
もない。
そもそも有権者は、野党に政策実現
能力があるとは思っていない。
より正確にいえば、「格差だ、格差だ」
とマスコミは言うが、今の若い世代の
現実的な望みは現状を維持してもらう
ことであり、多くを望んではない。
とりあえず「私が生きていけているので、
それで良い。より良くなる保証もないの
に、変化を起こされて今の生活すら守ら
れなくなるなら、今のままがよい」と
いう、希望は抱かないということでは
ないか。
これは、環境の変化に適応できないと
いう諦念ともいえ、それを保守化といえ
なくもないが、安倍首相の望む
ナショナリズム的なアイデンティティに
基づく政治としての保守化とは、少し
違うのではないだろうか。
消極的選択かもしれないが、
若い世代の自民党支持の高まりは現実
のようである。
■男性中心主義社会の崩壊
それでは、30代以下の自民党支持を
男女別でみてみよう。
2018年12月21日付ウェブサイト「論座」
記事『安倍支持の中心は若年男性層』
によれば、2017年に発足した第4次
安倍内閣への平均支持率を年代別・性別
にみてみると、30代以下の男性の支持率
が圧倒的に高いことがわかる。
20代男性は57.4%、30代男性は52.8%
である。
これは、同世代の女性よりもそれぞれ
約20%高い。
そもそも、全世代平均は男性が44.4%、
女性が33.8%で女性が約10%低いと
いう男女差が存在しているが、それを
差し引いても、30代以下での男女の
支持率の違いはかなり大きい。
考えられる推論としては、社会の
組織力学構造において、一般的には
劣位におかれている女性のほうが
現実的で、冷静に現実をとらえて
おり、無駄な希望は持っていないが、
ここにきてさすがに男性も現実に
気付き始めたということであろう。
グローバル化・多様化のなかで、
日本においても「男だから」で通用
する男性中心主義が崩れてきており、
それを若い男性がヒシヒシと実感
してきているということであろう。
ハリウッド映画では女性の躍進は
著しい。『スター・ウォーズ』では
女性ジェダイが登場し、
『アベンジャーズ』ではキャプテン・
アメリカに加えて女性のキャプテン・
マーベルが現れ、
『アイアンマン』 の後継者はトニー・
スタークの娘だと 示唆されている。
『007』シリーズ最新作でも、
女優ラシャーナ・リンチ演じる
新キャラクターがジェームズ・ボンド
から「007」のコードネームを受け
継ぐ。
次期の欧州委員長とECB総裁も女性で
ある。
日本の若い男性が焦りを感じるのは
当然であろう。
安倍首相は「多様性・女性活躍が重要」
と口では言っているが、これらを熱心
に推進しているかのような「やってる感」
があるだけで、彼の本質は強固な伝統
保守主義者(=男性中心主義者)である。
選択的であっても夫婦別姓すら認めない
ダイハードな伝統的家族主義者、つまり
男性中心主義者である。
ヒシヒシと「男だから」で通用する
男性中心主義社会が崩れてきていること
を感じ、「男だから」で通用する社会の
解体の被害を被ると感じている若い男性
は、安倍首相の本質を嗅ぎ分けている
わけである。
弱者に転落する不安を感じる者の嗅覚は
鋭敏である。
安倍首相は若者の高い支持をありがたい
と言うが、自民党は、まさに将来が暗く
希望のない若者男子のための政党である。
「男だから」が通用する社会で守って
ほしいという意思表示が、30代以下の
男性の高い安倍内閣支持の背景にある
のではないだろうか。
海外で生活して思うのは、日本に
おける男子への教育を見るに、
グローバル市場における日本人の男女間
の価値の開きはいっそう大きくなって
いくのではないか、ということである。
“開いた世界”に向かう女子と、
“閉じた世界”に引きこもる男子という
構図が強まり、着実に日本の若者男子は
シーラカンス化に向かっているのでは
ないか。
男子の親はこのことに早く気づいて、
我が子を育てるべきであろう。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)
【転載終了】
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この記事を拝見すると、若者は
安倍首相の傲慢な政治手法にあこがれ
ているということでしょうか?
日本は、少なからず男尊女卑の
環境は残っているのでしょう。
昨今問題になった、医大の男女の
合格比率問題もその表れでしょう
かね。
過去より言われていたことは、
世界の医療界では、女医さんのが
優秀と言われています。
また、国によっては女医が70%以上
占める国もあるようです。
また、企業の入社試験では、
成績の 上位50名を採用すると女性だけに
なってしまうというデータもあるようです。
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