日本の刑事司法は、国際的な批判に耐えられるのか!

 郷原総合コンプライアンス法律事務所 

郷原信郎 代表弁護士 


 【転載開始】


 ■ゴーン氏出国は「単なる刑事事件」 

 の被告人逃亡ではない~日本の 

 刑事司法は、国際的な批判に耐え 

 られるのか   1/1(水) 14:17  


  日産自動車の元会長の 

カルロス・ゴーン氏が、海外への 

渡航禁止の保釈条件に違反して 

日本を出国し、トルコ経由で 

レバノンに入国した。 


 2018年11月19日、羽田空港到着 

した直後の「衝撃の逮捕」以降、 

検察捜査の杜撰さ、重大な問題を 

指摘続けてきた私としては、 

ゴーン氏が出国したレバノンから 

日本に身柄が引き渡される見込み 

がなく、旧来の特捜事件での 

「人質司法」の悪弊の中で、ゴーン 

の早期保釈を獲得した弁護団の努力 

や、検察側の主張を排斥して保釈を 

許可した裁判所の英断があったのに、 

それらが裏切られる結果になって 

しまったのは、誠に残念だ。 


 しかし、被告人のゴーン氏が保釈 

条件に違反して出国して「逃亡」した 

ことから、そもそも裁判所が保釈を 

認めるべきではなかったと問題と 

単純化すべきではない。 

ゴーン氏の事件は、極めて特異な経過 

を辿ってきた、特異な事件であり、 

一般的な刑事事件と同様に扱うのは 

誤りだ。 


 ゴーン氏の事件をめぐる経過を、 

改めて振り返ってみれば、それは 

明らかであろう。  


 逮捕直後は、検察が金融商品取引法 

違反の容疑事実とされた 

「役員報酬の過少申告」の内容を全く 

明らかにしなかったため、隠蔽された 

報酬は「海外での自宅の提供」だとか、 

SAR(株価連動型報酬)だとか、 

それによって日本で税を免れていた 

とか、マスコミが勝手な憶測報道を続け 

ていた。 

そして、逮捕から5日後になって、 

その逮捕容疑が実際に支払われた役員 

報酬ではなく、退任後の支払い予定の 

「未払い報酬」に過ぎなかったという 

衝撃の事実が明らかになった 

(【ゴーン氏事件についての 

“衝撃の事実” ~“隠蔽役員報酬”は

支払われていなかった】)。

 勾留満期には逮捕事実の 

「2015年までの5年間」の有価証券 

報告書虚偽記載で起訴し、その逮捕 

事実と同じ「直近3年分」で再逮捕 

するという、従来の検察の常識から 

も逸脱したやり方で身柄拘束を継続 

しようとしたが、東京地裁が、 

それまでの特捜事件ではあり得な 

かった勾留延長請求の却下を決定 

(【ゴーン氏勾留延長却下決定が検察 

に与える衝撃 ~根本原因は“不当な 

再逮捕”にある】)。 

それに対して、延長請求却下の翌日に、 

当初は「形式犯」だけの立件しか予定 

していなかった検察は無理やり 

サウジアラビア・ルートを含む特別 

背任を立件して再逮捕した 

(【ゴーン氏「特別背任」での司法 

取引に関する “重大な疑問”】)。  


 まさに、「衝撃」の連続だった 

ゴーン氏の事件の経過を見るだけでも、 

この事件がいかに異常なものだったの 

かはわかるであろう。 


 そして、検察は、無理に立件した 

サウジアラビア・ルート、オマーン 

・ルートについては、日産から中東へ 

の送金が事業目的に見合うものであった 

のかどうかという 

「特別背任罪の成否の核心」に関する 

事実について、中東での証拠収集が 

ほとんどできていないまま日産関係者 

の供述だけで特別背任で逮捕すると 

いう、これまた従来の検察の常識に 

反するやり方を強行し 

(【ゴーン氏「オマーン・ルート」 

特別背任に“重大な疑問”】)、逮捕後に、 

中東各国への捜査共助要請をして証拠 

を収集しようとするという有様だった。 


 これらの捜査は、ゴーン氏逮捕の際 

に社長として記者会見を行い、 

「ゴーン氏の不正への憤り」を露わに 

した西川氏を中心とする日産経営陣の 

全面協力によって行われたが、 

その西川氏も、退任後に支払い予定の 

「未払いの報酬」に深く関わっている 

ことが明らかになり、さらに、 

自分自身の報酬に関する不正が明らか 

になって引責辞任に追い込まれた。  


 ゴーン氏の事件は、このような 

「異常な事件」であり、凡そまともな 

刑事事件ではないことは、いずれ 

刑事公判で明らかになるはずであった。 

しかし、その公判は一体いつ始まり 

いつ終わるのか、全く見通しがつか 

ない。 

金商法違反については、来年4月に 

初公判が開かれる可能性が出てきて 

いたが、中東ルートの特別背任に 

ついては検察の証拠開示すら十分に 

行われおらず(もともと中東に関す 

る証拠がほとんどないまま起訴して 

いるのであるから、開示がなかなか 

できないのも当然である)、いまだ 

に初公判の見通しすら立っていない。 


 こういう状況で、ゴーン氏は、 

保釈条件として妻との接触を9か月 

もの間禁止されたまま日本国内に 

公判対応のためだけに留め置かれ、 

いつになったら接触禁止が解除され 

るかもわからないのである。 


  しかも、このような明らかに異常 

な捜査経過の問題、長期間の身柄拘束

保釈条件による人権侵害の問題など

を自らの言葉で世の中に訴えようと

しても、当初の保釈後に記者会見を

しようとした途端にオマーン・ルート

の特別背任容疑で再逮捕されたことが

あって、また逮捕されるのではないか

との恐怖から記者会見すらできない。 

弁護団が予定主張記載書面を公開した

りしてゴーン氏の主張を公表 しても、

日本のマスコミは殆ど 報じない。 


 こういう「絶望的な状況」に置か 

れていたゴーン氏が、何者かの援助 

によって「国外脱出が可能」という 

ことを知り、15億円の保釈保証金を 

失ってでもその可能性に賭けてみよ 

うとしたのは、理解できないことで 

はない。 

日本人が北朝鮮や中国で不当に身柄 

を拘束された場合と同じように考え 

たとすれば、何とか国外に脱出しよ 

うと考えるのは、普通の人間であれ 

ば自然なことと言えるのではないだ 

ろうか。  


 レバノンに入国したゴーン氏は、 

「私は有罪が前提とされ、差別が 

まん延し、基本的な人権が無視され 

ている不正な日本の司法制度の人質 

ではなくなります」 

「私は正義から逃げたわけではあり 

ません。不公正と政治的迫害から逃れ

たのです。私は不公正と政治的迫害

から逃れました。ようやく メディア

と自由にコミュニケーション ができ

るようになりました。来週から始め

るのを楽しみにしています」

との 声明を出している。 


 ゴーン氏は、 

「レバノンに逃亡した被告人」の身に 

甘んじるつもりはないのであろう。 

日本の検察が逮捕・起訴した事件が 

いかに不当で異常なものか、 

日本でいかに非人道的な扱いを受けた 

のか、ということに関して、国際社会 

への発信を徹底した行うことで、自ら 

潔白を訴え名誉回復を図るであろう。 


 検察としては、保釈を請求した弁護人 

や、保釈を許可した裁判所を批判したり、 

恨んだりしている場合ではない。 

検察が起訴した被告人が海外に逃亡し、 

レバノンに所在することが明らかに 

なっているのであるから、そのレバノン 

に対して、外務省当局の協力の下に、 

被告人のゴーン氏の引き渡しをとことん 

求めるべきであろう。 

犯罪人引渡し条約が締結されていなくも、 

本当に、ゴーン氏を起訴した罪状が悪質 

・重大なものであり、ゴーン氏に対する 

日本での扱いが不当なものではないと 

「確信を持って」言えるのであれば、 

国際社会に対してそれを堂々と主張し、 

犯罪者を匿うレバノンを批判すればよい 

はずだ。 

国際世論に訴えて、レバノンに身柄の 

引き渡しへの協力を求めることは 

不可能ではないであろう。 


 問題は、「ゴーン氏事件」が、 

日本政府が逃亡犯罪人を匿う国に対する 

「当然の要請」として行えるような事件 

なのかどうか、である。 


 「ゴーン氏事件」は、日本の検察・ 

裁判所・司法マスコミの間では、 

「一つの刑事事件」であるかのように 

扱われてきた。 

そして、日本では多くの人がそう思って 

いる。 

しかし、それが、果たして、国際社会 

から客観的に見た場合、そのような 

認識を持ってもらえる事件なので 

あろうか。

 ゴーン氏が主張するように、日産の 

日本人経営陣と経産省と検察とが結託 

して国際的なカリスマ経営者を日産 

自動車から追放し、さらに犯罪者と 

して葬ろうとした「異常な出来事」に 

しか見えないかもしれない。 


 今年4月に、5年に一度開催される 

刑事司法分野における国連最大規模 

の国際会議である 

「国連犯罪防止司法会議(コングレス)」 

が京都で開催される(京都コングレス)。 

日本で開催されるのは50年ぶりであり、 

法務省は、ホームページに、 

「開催まで〇日」などと、オリンピック 

並みの扱いで開催をアピールしている。 


 日本の法務・検察当局は、ゴーン氏 

事件を契機に日本の刑事司法に対する 

国際社会からの批判が高まる中、 

コングレスに集まる海外の刑事司法 

関係者に納得できる説明・反論が行え 

るのであろうか。 


 【転載終了】 

 **************************  


 国家間の問題にもなりそうな感じ 

ですね。 


 トルコが、関係者を拘束した様です 

が、レバノンとフランスとの関係も? 


 検察は、籠池さんの長期拘留問題 

もあり、日本の検察の不当性が海外 

に知られていますからね~! 


LC=相棒's のじじ~放談!

時事関係や自動車関係などの記事を書いています。

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