中小企業を減らそうというのは時代錯誤 ・・・

日刊ゲンダイDIGITAL


【転載開始】


■中小企業を減らそうというのは時代錯誤

 山口義行氏が指摘 公開日:2020/11/22

 ※中小企業に関する部分を抜粋。


 山口義行氏(立教大学名誉教授)インタビュー


 菅政権は中小企業再編を主張する

デービッド・アトキンソン氏やかつて

不良債権処理を手掛けた竹中平蔵氏を

成長戦略会議の民間議員に起用した。

地方銀行再編ももくろむスガノミクス

は時代に逆行していると、長年、

中小企業支援をしてきたプロである

山口義行氏(立教大学名誉教授)は

指摘する。


 ◇  ◇  ◇


 中小企業と言っても業種も大きさも違います

が、全体としてコロナの影響で経営が厳しいこ

とは間違いない。

今年前半の政策もあって資金的には非常に緩い

状況にありますが、売り上げが伸びないので

依然として経営は厳しいままです。


 経済の現状を、私は「8割経済」と表現して

います。

売り上げが8割まで戻ってきているが、

そこで止まってしまっている。

中小企業は売り上げが14%減ると赤字になる

と言われています(大企業は30%)。

多くの中小企業が赤字です。

それでもやっていられるのは今のところは銀行

借り入れを増やした結果、資金的には余裕が

あるからです。


<中略>


■地銀再編論は的外れ


 その中で菅政権では地方銀行の再編、

中小企業の再編を促す動きがあります。

地方の金融機関の経営が厳しいことは事実です。

それをなんとかするのに、金融機関の数を減ら

すという発想なのですが、これは単純な需給

均衡論で、現実にまったくそぐわない発想です。


 第一に、金融機関の数を減らしても需給は

均衡しません。

たとえばレストランが3つあるがどうも多す

ぎるというので、2つに減らしたとする。

この場合には、供給が減りますから、確かに

需給バランスがよくなる。

しかし金融機関の場合、3行を2行にすると

どうなるか。

預金の切り捨てはできませんから、吸収され

た金融機関の預金を残りの金融機関が引き受け

ることになる。

ですから資金の供給過多、カネ余り状態は変わ

らないわけです。

結果として、金融機関の苦しい経営状態も変わ

りません。


 もうひとつはバンカー機能が低下します。

資金需給のバランス回復には資金需要を増やす

ことが必要です。

そのためには金融機関は率先して企業の事業創造

のお手伝いをしなければなりません。

ところが金融機関を減らせば結果的には支店を

減らし、行員の数を減らすことになります。

すると行員1人当たりが受け持つ企業の数が増え、

行員は企業の面倒をますます見られなくなる。

いわゆるバンカー機能はむしろ低下するわけです。

こうなった場合に地銀はどうするか。

金が余っていますから、外国の債券などを買う

ことで利益を得る方向に走る。

そんなことをしていても地域経済は強くなりま

せん。

政府はまったくナンセンスな議論をしています。


■大企業こそが行き詰まっている

 バンカー機能復活のための議論を


 確かに金融機関は全体的に資金需要が少ない

中で稼げなくなっています。

これまで国債運用でなんとかやっていたが、

国債がゼロ金利になりマイナス金利になり、

国債を買っても運用差益が出ない。

金融機関が利益を稼ぐ場面がなくなって

しまった。

そこで地域企業の事業を大きく育てようという

方向にいけばいいのだけど、なかなかできて

いない。

これを変えるためには、たとえば人事の評価

のあり方を変える必要があります。

貸し出しを増やしたから給料を上げるのでは

なく、事業創造や企業の面倒を見るのにどれ

だけがんばったのか、そういう種まきの機能

をきちんと評価する制度にする必要があります。

今のやり方だと懸命に企業の面倒を見て、

2、3年経ってなんとか資金需要が生まれる

くらいに事業が育ったところで担当者が異動

となり、すべての努力が後任者の評価になって

しまう。

そうした金融機関の運営上の問題をもっと議論

しなければいけないはずです。

ところがそうではなく金融機関の数を減らせば

いい、と。

そういうバカバカしい議論にくみしているとこ

ろに菅さんの限界が出ています。


 さらに中小企業自体も生産性が低いからと

減らし、再編して大きくすべきだと言ってい

ます。

中小企業の利益率が低いのは小規模な中小企業

が多いからだという発想です。

しかし企業規模と利益率は必ずしも相関しない。

たとえば大手自動車メーカーの下請けは非常に

低い利益率で経営しています。

利益が出ても親会社から設備投資をしろなどと

言われ借り入れをすることになる。

断れば下請けの仕事がなくなるためやらざるを

得ない。

そういうカツカツの利益で中小企業がやって

いるから日本の大企業はもっている。

こういう構造を問題にしないで中小企業の数を

減らせばいいと言うのは、これもまた単純な

議論です。


 愛知県の社員50人くらいのある会社が

トヨタの下請けをやめたんです。

自動車関係の仕事をやめると仕事の量が確保

できないため社員が10人ほどに減りましたが、

いまは宇宙産業や医療関係の仕事をやっていて

利益率は以前よりはるかに高い。

結局、従業員をたくさん抱えていると利益より

も仕事の量を確保しなければならなくなり、

親会社の言いなりになってしまう。

そこから脱却したのが良かったんです。

規模はむしろ小さくなった。


 コロナ禍でリモートワークも広がって今後は

消費が地方に分散していく傾向にある。

結果として、市場が細分化していきます。

大企業が細分化した市場を相手にすると、

コストがかかりすぎます。

ずうたいの小さい中小企業の方が適している。


 たとえばイタリアの小規模な時計屋の時計は

たくさん売れないけど、1個数十万円、数百万円

でも売れる。

ところが、日本の大企業の時計は性能が良くて

も値段はソコソコ。

そのかわり大量に売ることができる。

会社の規模の大きさに応じてビジネスモデルが

違うわけです。

これからの日本は、高付加価値な商品を提供で

きる中小企業をたくさん輩出することが重要

なんです。


 規模を大きくして生産性を高めるというのは、

効率的な生産をして同じモノを同じ時間でより

大量に作れるようにすることです。

しかし大量に作っても今の時代売れません。

マーケットが急拡大していれば別ですが、経済

が成熟期にありますから、そんなにマーケット

も伸びないわけです。

その意味で、いま行き詰まっているのは実は

大企業の方です。

それなのに中小企業を整理して大きくしよう

という発想は理解できません。


■財務省の狙い


 政府は中小企業を今まで守りすぎたという

議論を持ち出すことで、財政支出を伴う

中小企業支援策を縮小することを正当化した

いのではないでしょうか。


 民主党連立政権時代には緊縮財政と言って

いた財務省が、(第2次安倍政権後)ころっと

変わってバラマキを容認し始めましたよね。

ある時、財務官僚に「これでいいのか」と

聞いたら、

「これは消費税を上げるための戦略だ」と言い

ました。

消費税はもう10%に上がってしまった。

さらにコロナで大量にお金を使ってしまった。

財務省はこれからは財政支出を抑えるしかない

と考えている。


 この考え自体は国を心配してのことなんで

しょうが、正直に

「国はこれ以上お金を出せない。勘弁してくれ」

とは言わない。

これまで中小企業を守りすぎた。

これからは数を減らして再編すべきなんだという

理屈を持ち出す。

しかしこれは現実にそぐわない理屈です。

 中小企業は政府の再編誘導策に乗せられないで、

むしろ「小さいこと」に誇りをもち、

その優位性を発揮していくべきです。


■中小企業を救う永久劣後ローンとは


 三井住友信託銀行名誉顧問の高橋温氏が今年

4月、全国186万社の中小企業の売り上げが

3分の2になれば23兆円の損失が生じるから

5兆円の劣後ローンを実施せよと日経新聞紙上

で提案した。

劣後ローンは毎月の返済、返済期限がなく、

ほかの融資に劣後する。

山口義行氏も4月に永久劣後ローンを緊急提言

した。


【転載終了】

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 日本は中小企業の技術(部品供給)で

技術立国を維持してきました。


 親会社を持つ中堅企業は親会社が利益

を出せない製品の製造で親会社に貢献し

てきました。

そのことで、親会社は利益のでる大きな

仕事をとれています。


>ある会社がトヨタの下請けをやめたん

 です。自動車関係の仕事をやめると

 仕事の量が確保できないため社員が

 10人ほどに減りましたが、いまは

 宇宙産業や医療関係の仕事をやって

 いて利益率は以前よりはるかに高い。

 結局、従業員をたくさん抱えている

 利益よりも仕事の量を確保しなけれ

 ばならなくなり、親会社の言いなり

 になってしまう。そこから脱却した

 のが良かったんです。

 規模はむしろ小さくなった。



 ここに中小企業の生き残りのヒント

があるようですね。


 自動車業界は岐路に来ていると思います。

先手を打って、中小は自動車業界から離れ、

前述の企業のように、これから伸びそうな

ところに転換していくことが重要かと思い

ます。


 いずれ、自動車業界から切られるなら、

先に動くことが寛容かも。


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