新型コロナに続くインフルエンザ流行の備えはどこまで?
日刊ゲンダイDIGITAL
【転載開始】
■重感染、スーパー感染・・・新型コロナに続く
インフルエンザ流行の備えはどこまで?
公開日:2021/10/16
新型コロナウイルスの感染拡大がよう
やく一息ついたと思いきや、
今度はインフルエンザの感染に注意だ。
日本感染症学会は今冬に向けて
インフルエンザワクチンの積極的な接種
を推奨する、との声明を発表したが、
どこまで備えればよいのだろうか。
国立病院機構京都医療センターの
林琢磨氏(がん医療研究室室長)に聞い
た。
◇ ◇ ◇
――あらためて、インフルエンザは何が
原因で、どのような流れで感染が広がるの
でしょうか。
COVID-19(新型コロナウイルス)の
感染が拡大する前、毎年のように流行し
ていた季節性インフルエンザウイルスに
は、大きく分けて
「インフルエンザウイルスA型」と
「インフルエンザウイルスB型」があり、
毎冬になると、A型やB型の変異体が流行
を引き起こしていました。
これらの変異体のオリジナルウイルスは、
鳥インフルエンザウイルスであると考えら
れており、白鳥やカモなどに感染している
鳥インフルエンザウイルスが、感染宿主
(白鳥やカモなど)内で少しずつ遺伝子
変異を繰り返しながら変異体となったもの
です。
一般的には鳥インフルエンザウイルスは
ヒトには感染せず、豚に感染している
インフルエンザウイルスはヒトに効率よく
感染します。
白鳥やカモなどの渡り鳥が、中国南部や
カンボジアやベトナムなどの東南アジアに
飛来することが、季節性インフルエンザ
ウイルスの流行の起因といわれています。
中国南部や東南アジアには、同じ敷地内に
多数の養鶏場と養豚場が存在し、
インフルエンザウイルス変異体はまず、
同地域に飛来した白鳥やカモの糞便に
混ざって排泄され、それが養鶏に感染。
さらに、養鶏に感染した変異体が養豚に
感染し、変異を繰り返すことでヒトへと
感染しやすくなるのです。
このヒトに感染しやすくなった
インフルエンザウイルス変異体は、やがて
養豚場の飼育員に感染し、地域の住民間で
感染流行が起きる。
そして、今のようなグローバルな人流
(国際線が自由に往来)を通じて、世界各国
へと流行が広がっていくのです。
――新型コロナ対策の効果もあり、
昨シーズンは、インフルエンザは流行しま
せんでした。なぜ、今年は警戒が必要なの
でしょうか。
新型コロナ感染拡大の予防のため、今は
世界中でグローバルな人流が抑制されてい
ます。
その結果、2020年冬季には、
季節性インフルエンザウイルスの流行が
世界中で起こりませんでした。
しかし、今年はすでに10月の時点で、
南アジアやインド、中東各国で、
季節性インフルエンザウイルスの流行が起き
ています。
従って、日本でも、国境を超える人流移動
が再開(空港での出入国の規制緩和)され
れば、季節性インフルエンザウイルスの
流行が生じるのは自然です。
そのため、新型コロナウイルスと
季節性インフルエンザウイルスに対する
水際対策が重要課題となっているのです。
――今のようにマスク着用とうがい、
手洗いの励行でインフルエンザ感染は十分、
防げないのでしょうか。
WHO(世界保険機関)の基準によると、
季節性インフルエンザウイルスの感染予防
対策として、マスク着用は指定されていま
せん。
マスク着用やソーシャルデイスタンスなど
は、季節性インフルエンザウイルスの感染
防御策として有用と思われるものの、流行
の抑制としてはグローバルな人流の規制が
より効果的です。
とはいえ、マスク着用や
ソーシャルデイスタンスなどは必要で
しょう。
■新型コロナ、インフル両ワクチン接種の
間隔期間は2週間以上に
――インフルエンザワクチンを接種する
必要性はあるのですか。
インフルエンザの治療薬は大きく分けて、
飲み薬、吸入薬、点滴の3種類があります。
飲み薬はタミフル、ゾフルーザ、吸入薬は
リレンザ、イナビル、点滴はラピアクタと
いう薬です。
これらは、体内でインフルエンザウイルス
が増殖するのを抑える抗ウイルス作用が
あります。
インフルエンザ検査は発熱後12〜24時間
でないと正確な診断ができません。
またインフルエンザ治療薬は発症から
48時間以内に服用または投与されなければ
抗ウイルスとして効果的ではありません。
20年3月~今年10月初旬の時点までで、
日本国内では季節性インフルエンザウイルス
の感染者数が極めて少なく、そのため、
日本人の季節性インフルエンザウイルスに
対する抗体価および免疫応答は低くくなって
いると考えられ、インフルエンザ感染による
重篤な症状を予防するためにはワクチン接種
が必要と考えられているのです。
日本感染症学会が季節性インフルエンザ
ウイルスのワクチンの積極的な接種を推奨、
との見解を示したのも、このためです。
――今の時点で、インフルエンザワクチン
に対する国民の関心はあまり高くありません。
20年~21年冬季に季節性インフルエンザ
ウイルスの流行が起こらなかったことや、
新型コロナワクチン接種と同様、日本国内
ではワクチン接種の安全性について不安を
抱いている人がいるため、注意深くなって
いるのでしょう。
各製薬メーカーは、新型コロナと
季節性インフルエンザのワクチンを同時に
製造しており、資材などが世界的に不足し
つつあります。
今後、季節性インフルエンザウイルスの
ワクチンの供給が遅れる可能性も考えられ
ます。
――新型コロナワクチンの接種率が上が
る中、インフルエンザワクチンを接種して
も人体への影響はないのでしょうか。また、
これからコロナワクチンを接種する人は、
インフルエンザワクチンと接種の間隔など
をどう考えればいいのでしょうか。
新型コロナと季節性インフルエンザの
両ワクチンを同時期に接種した場合による
生体への安全性については今のところ、
医学的エビデンスが十分得られていません。
そのため、厚生労働省は、
新型コロナワクチンの接種と
季節性インフルエンザウイルスのワクチン
の接種は2週間以上開ける必要性を示して
います。
今後、海外での臨床研究などの医学的
エビデンスにより、両ワクチン接種の
間隔期間は変更される可能性があるで
しょう。
欧米では、新型コロナワクチンと
季節性インフルエンザウイルスワクチンの
同時接種が行われていますが、健康上での
問題はほとんど報告されていません。
すでに米国のノババックス社は、
新型コロナと季節性インフルエンザの
混合ワクチンの効果と安全性を確認する
ため、被験者640人を対象とした臨床試験
を開始しているほか、モデルナ社も、
同混合ワクチンの効果と安全性を確認する
ための臨床試験が検討されています。
■仮にインフルエンザが流行したら…
――仮にインフルエンザが流行した場合、
ウイルス干渉(あるウイルスが流行すると
他のウイルスが流行しない)によってコロナ
感染の危険性が抑えられるとの見方もあり
ます。あるいは逆のケースも考えられます
が、どう見ますか。
日本人を含む世界中の人々が、
季節性インフルエンザウイルスと
SARSコロナウイルス2の「重感染」、
新型コロナ感染後の
季節性インフルエンザウイルスによる
「スーパー感染」を心配しています。
新型コロナ患者のインフルエンザウイルス
の同時感染(重感染)の頻度は、アジアで
4.5%、米国では0.4%。
世界中で報告された臨床研究の結果を統合
したメタ解析によると、新型コロナ患者の
19%が「重感染」を起こし、24%が
「スーパー感染」を起こしていました。
「重感染」や「スーパー感染」は、死亡率の
増加を含む重症化への転帰と関連しています。
(ウイルス干渉については)例えば、
SARSコロナウイルス2の武漢型と
アルファ型(それぞれ100個)をハムスター
に同時感染させ、感染2カ月後の経過をみる
と、ハムスター内のウイルスは全て
アルファ型となるという研究結果が報告され
ています。
異なるウイルスが、同じ宿主に感染した場合、
生存力が強い(感染力が強い)方が、
宿主の生体内で増殖する傾向がみられるほか、
ウイルスの生存力と重感染の成立との関連性
の可能性も指摘されています。
日本国内では、三重県で、新型コロナと
季節性インフルエンザウイルスの「重感染」
の症例が報告されました。
感染症の重症化を防ぐためには、新型コロナ、
季節性インフルの両ワクチン接種が好ましい
でしょう。
(聞き手=遠山嘉之/日刊ゲンダイ)
【転載終了】
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11月からは、ブースターショットと
インフルワクチンの併用になるので
しょうか?
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