今の円安は危険、日本円からの逃避で国力低下?
Business Journal
【転載開始】
■今の円安は危険、日本円からの逃避で
国力低下?
1970年代の貧しさに逆戻り
2021.10.30 ※抜粋転載。
為替市場で円安が進んでいる。
米国の金利上昇やインフレ懸念を背景と
した動きであり、本来なら円高になって
もおかしくない。
一般的に円安は日本経済にとってプラス
とされるが、今回の円安が日本円からの
逃避の始まりだとすると、話は単純では
ない。
■米国の金利上昇でドル高という違和感
このところ外国為替市場で円安ドル高
が進んでいる。
9月まで1ドル=110円前後だった
ドル円相場は、あっという間に値を上げ、
10月に入って1ドル=114円を突破した。
米国で金利上昇が進んだことからドルが
買われたとの解釈が一般的だが、
「どうも釈然としない」という感想を
持った人は多いだろう。
日本では、米国の金利が上昇すると
米ドルでの運用が有利になるので、
ドルが買われ円が売られるという説明を
よく耳にする。
だが名目金利の差で為替が動くというの
はごく限られた条件下における現象で
しかなく、一般論とまではいえない。
むしろ過去の値動きを長期的に分析
すれば、基本的に為替レートというのは
購買力平価に沿って動くので、金利の
上昇やそれに伴うインフレはむしろ
通貨価値を毀損する
(つまり米国の金利が上昇すればドル安
になる)。
ニクソンショック以降の現実のドル円
相場についても、米国の金利上昇と
インフレによるドルの下落でほとんど
すべての説明が付く。
ある国の名目金利が上昇することで
通貨高になるというのは、両国の
ファンダメンタルズがほぼ同じ状態で、
何らかの理由で金利に差が付いた時など
に発生しやすい。
ただファンダメンタルがほぼ同じで
あれば、原理的に金利に大きな差が付く
ことはないので、ある程度時間が経過
すると元の状態に戻る。
米金利上昇で円安というのは、こうした
動きを見越した市場の投機的な動きで
あり、長期的なトレンドを形成するもの
ではないと考えたほうがよい。
セオリーに沿って考えた場合、米国で
金利が上がりインフレ懸念が台頭して
いる場合、ドルの価値は下がる可能性が
高く、逆に景気が順調に拡大して物価と
金利が上がるならドルは買われる。
現時点ではインフレが何をもたらす
のか完全に予想できない状況にある。
米バイデン政権はコロナ対策と
AI(人工知能)や再生可能エネルギーなど
次世代投資を兼ねた巨額財政出動を計画
しており、米国経済の成長加速を期待する
声がある。
米国経済が順調に成長すれば当然、
金利も上昇し、物価も順当に上がるので、
インフレは進むものの、経済に悪い影響は
与えない。
これは良いインフレであり、むしろドルの
評価につながるだろう。
米国での投資機会を求めて多くの資金が
集まるのでドル高になっても何ら不思議は
ない。
<中略>
■日本はすでに1970年代の貧しさ
日本円は国際金融システムの中で相応の
地位を保ってきたが、それは日本が世界
第2位の経済大国だった時代が長く続き、
しかも米国への輸出によって大量のドルを
受け取るという特殊な地位がそうさせて
きた面が大きい。
世界経済のブロック化が進み、米国、欧州、
中国という経済圏に集約された場合、日本
は望むと望まざるとにかかわらず、アジア
地域の周辺国にならざるを得ない。
そうなれば、従来、日本円が国際金融市場
で持っていたプレゼンスは維持されなくなる
だろう。
為替というのは、完全に市場メカニズムで
動いておりメジャーな通貨であるほど、
取引条件は有利になる。
マイナーな通貨に転落した場合、売り買いの
価格差(スプレッド)が大きくなってコスト
が増えることに加え、取引量も減るので、
ちょっとした要因で為替レートが動いてしま
う。
これまではドルが売られた場合、日本円に
は受け皿としての役割があったが、こうした
ニーズがなくなれば、単純に日本経済の実状
に合わせて円が売り買いされる。
そうなると現時点での為替レートが今後も
維持される保証はまったくない。
日本円の為替レートはしばらく安定的な
状態が続いていた。
だが為替レートが変化しなくても、海外の
物価が上昇すれば、それは円安になった
ことと同じ効果をもたらす。
日本経済は過去30年間でほとんど成長でき
ず、物価や賃金も横ばいだったが、諸外国
は同じ期間で経済規模を1.5倍から2倍に
拡大させ、賃金や物価も上昇が続いてきた。
海外の物価が上がれば、為替が変わら
なくても日本が輸入する商品の価格は
値上がりする。
製品価格に転嫁できないメーカーは、内容量
を減らして価格を維持するという、いわゆる
ステルス値上げを実施してきたものの、
それも限界に達しつつある。
ここで日本の国力低下に伴う円安が本格化
した場合、ただでさえ上昇していた輸入物価
がさらに上がり、日本人の実質的な購買力が
一気に低下してしまう。
諸外国との賃金差などから計算すると、
現時点において日本はすでに1970年代の水準
に逆戻りしており、もう一段の円安が進めば、
さらに昔の貧しい時代に近づくことになる。
(文=加谷珪一/経済評論家)
【転載終了】
***********************
コロナ禍で弱っている経済に大きな
打撃を与える動きですね。
ものが売れなくなれば、リストラの
不安も頭をもたげてきますね。
就職氷河期の再来も・・・
0コメント