トリガー条項、なぜ発動されず?
永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」
【転載開始】
■ガソリン価格上昇時の減税策・トリガー条項、
なぜ発動されず?発動時の影響を試算
2021.11.06
ガソリン価格が一定以上の水準で上昇
した場合に自動的に税率を下げる
「トリガー条項」は、東日本大震災の
復興財源の確保に支障をきたすとして
発動は凍結されている。
そもそもトリガー条項とは、総務省が
発表する小売物価統計調査において、
ガソリンの平均価格が3カ月連続で
160 円/ℓ を超えた場合、揮発油税の
上乗せ税率分である 25.1 円の課税を
停止するというものである。
そして、停止後に3カ月連続でガソリン
の平均価格が130円/ℓを下回った場合
に、課税停止が解除される仕組みになって
いる。
導入の背景には、2009 年の衆院選で
民主党が政権公約の一つにガソリン税等
の暫定税率廃止を掲げたことがある。
その後、政権与党となった民主党は、
財源不足から暫定税率廃止を見送らざる
を得なくなり、その代わりの燃料価格
高騰対策として 2010 年に
「所得税法等の一部を改正する法律」を
成立させ、トリガー条項が盛り込まれた。
しかし、2011 年に発生した
東日本大震災を受けて、適用されると
復興財源となる税収を大幅に減らし、
被災地でのガソリン不足を引き起こす
可能性があるとして、トリガー条項は
2011 年4月 27 日から凍結されている。
ただ、足元のガソリン価格の高騰が続け
ば、日本経済の足を引っ張りかねず、
このまま価格高騰が続けば、発動を求める
声がさらに高まる可能性がある。
そこで本稿では、トリガー条項の発動が
マクロ経済に及ぼす影響について定量的
に分析する。
■トリガー条項1年発動は▲1.5兆円以上
の減税効果
トリガー条項は、レギュラーガソリン
価格が 160 円/ℓ を3カ月連続で超える
と発動される。
そして、ガソリン税の上乗せ分 25.1 円の
課税を停止し、3カ月連続で 130 円を
下回るまで解除されない仕組みである。
現在は、東日本大震災の復興財源の確保に
支障をきたすとして発動は凍結されている
が、仮に凍結されていなければ、来年1月
からはトリガー条項が発動される状況に
までガソリン価格は上昇している。
仮にトリガー条項が発動されれば、
様々な税目を通じて税収に影響を及ぼす。
資料1は、2020年度当初予算をもとに
トリガー条項が年間を通じて発動された
場合の影響を示したものである。
まずトリガー条項の発動は、ガソリンに
課せられる揮発油税と地方揮発油税を
それぞれ 24.3 円/ℓ 、0.8 円/ℓ 引き
下げる。
そして、トータル 25.1 円/ℓ の
ガソリン値下げを通じて、
国税を約▲1.0兆円、地方税を▲340億円
程度それぞれ減らすことになる。
またトリガー条項の発動は、軽油引取税
の17.1 円/ℓ 引き下げを通じて地方税
を▲0.5 兆円程度抑える。
以上より、トリガー条項が1年間発動
されれば、2021年度予算を基にすれば、
国・地方分を合計して ▲1.5兆円以上の
減税効果があることになる。
■一世帯当たり平均 ▲1.3万円の負担減
続いて、トリガー条項発動の影響の
うち、各部門別の収支に及ぼす影響に
ついて検証する。
トリガー条項発動に伴う政府の税収減は、
家計や企業の税負担を軽減することに
より、公的部門から民間部門への所得
移転を意味する。
そこで、先に試算した各税目の影響額と
ガソリンや軽油の部門別需要比率等を
用いて企業と家計の減税規模を推計する
と、家計はトリガー条項の発動によって
2020年度当初予算を基にすれば
▲0.7兆円強の減税となる一方、
企業は約▲0.8兆円以上の減税規模と
なる。
この結果に、地域別のガソリン消費額
や世帯数、自動車保有比率等を用いて
一世帯当たりの負担減額を試算すると、
年間減税額は全国平均で▲1.3万円と
なることがわかる。
特に、地域別では北陸、東北、四国、
東海といったガソリンの支出が高い地域
では減税額が大きく、ガソリンの支出額
が低い関東、近畿の大都市圏では減税額
が小さいといった特徴がみられる(資料3)。
このように、地域の違いによって一世帯
当たりの負担減少額が 1.1万円も変わって
くることになる。
■経済活性化とトレードオフの関係に
ある財政収支悪化
以下では、これまでの結果をもとに、
トリガー条項発動がマクロ経済に及ぼす
影響を試算した。
具体的には、トリガー条項発動が
実質GDPに与える影響を、1年間発動
するケースについて先行き3年間の影響
を試算した(資料4)。
結果をみると、1年目には実質GDP
を+0.5兆円程度押し上げる効果を持つ。
すなわち、トリガー条項を発動すれば、
初年度は+0.1%程度の実質GDP
押し上げが期待できることになる。
さらに2年目には企業の減税効果が拡大
することにより実質GDPが+0.8兆円、
そして3年目には実質GDPは+0.6兆円
程度押し上げられることになる。
こうした乗数効果も加味すれば、1年間
発動のみでも民間部門の減税効果は
3年目の実質GDPを+0.1%程度押し
上げる効果を持つ。
一方、トリガー条項発動の効果は
財政収支の動向と切り離して評価する
ことはできない。
そこで続いては、民間需要動向に左右
される一般政府の消費税、所得税、
法人税について、近年の家計支出や
雇用者報酬、法人企業経常利益との関係
を用い、トリガー条項発動に伴う
民間需要の変動により事後的な財政収支
に及ぼす影響を試算した(資料5)。
得られた結果によれば、トリガー条項
発動に伴う民間需要拡大効果は、家計や
法人の所得税、消費税の自然増収をもた
らすことから、1年目▲1.5兆円の
財政赤字拡大要因となるが、
2年目は+0.2兆円弱、3年目は+0.1兆円
強の財政赤字縮小要因となる。
すなわちトリガー条項の発動は、発動時
には財政赤字の拡大要因となるが、
民間部門からの自然増収の効果で直接的
な税収減少額ほどは財政赤字を悪化させ
ないことになる。
■求められる他の歳出入も含めた視点
以上見てきたとおり、トリガー条項の
発動は短期的な地方経済活性化策として
検討に値する効果がある。
特に、過去に地方経済活性化に効果的と
されてきた公共事業が人手不足等により
効果が小さくなっていることも勘案すれ
ば、年末にかけて打ち出される可能性の
ある景気対策の項目としてトリガー条項
の一時的発動を組み入れることも検討に
値する。
いずれにしても、トリガー条項の発動
が東日本大震災の復興財源の確保に支障
をきたすために凍結されていることを
勘案すれば、トリガー条項の発動を国民
に十分に納得させるには、財源を含めた
議論が不可欠といえる。
従って、政府は復興財源を人質に
トリガー条項の凍結を固持するのではな
く、他の歳出入策とのセットで効果等を
含めて議論し、国民に審判を問うべきで
あろう。
例えば、昨年度の税収上振れ分や予算の
未執行分、さらには今年度の予備費を
一部使ってトリガー条項を一時的に発動
することも検討に値するといえよう。
【転載終了】
************************
トリガー条項は民主党政権時に制定
された法案だったでしょうかね。
自民党政権では制定どころか、法案
提出さえもされないでしょうね。
これが政権交代が必要な理由です。
多分、ガソリン価格が200円超えて
も発動されない可能性があります。
それどころか、自民党政権では法案廃止
の動きもあります。
ガソリン価格が200円超は景気後退の
可能性が大です。
国民をどれだけ苦しめれば気が済むの
でしょうか。
因みに、ガソリン価格の60%が税金で
す。
日本が世界に比べて、如何に異常な国か
と言うことです。
0コメント