EV化で日本の自動車メーカー、大規模な人員削減と下請け淘汰必至・・・
Business Journal
【転載開始】
ガソリン車、世界的に禁止へ…
日本の自動車メーカー、大規模な人員削減と下請け淘汰必至
■ヨーロッパで燃え上がるEV熱
ヨーロッパで電気自動車(EV)が熱い。
多くのメーカーがEVの開発、生産に意欲をみせて
いる。
北欧ではボルボ・カーが、ドイツではフォルクス
ワーゲン(VW)を筆頭に、BMW、メルセデス・ベンツ、
アウディ、ポルシェと、ほとんどのメーカーがEVに
突き進む。
フランスでは、ルノーが早々にEVを発売し、
1充電で400キロメートルも走る新たなモデルも発売し、
EV戦略の第2弾に動き出した。
三菱自動車工業と共同でEVを開発してきたグループ
PSA(プジョー・シトロエン)も独自にEVを開発し始め
ている。
EVには距離を置いていた英国でも、大排気量エンジン
でユーザーを魅了してきたジャガー、ランドローバー、
アストンマーチン、そしてロールス・ロイスさえもEVに
参入する。
あれほどディーゼル車に傾倒してきたヨーロッパが、
なぜ急激にEVに向かうのか。
そして本当にEVは必要なのだろうか。
■EV化へ先陣を切るドイツ・メーカー
ボルボ・カーは2019年以降すべてのモデルをEV
あるいはハイブリッド車(HV)にし、エンジンだけの
モデルを廃止する。
VWは排ガス不正を起こしたディーゼルから大転換し、
25年までに30種類のEVを発売する。
BMWはすでにEV、プラグインハイブリッドカー(PHEV)
のブランドである「i」を立ち上げ、すべてのモデルに
PHEVを加え、電動車に急速に転換している。
ダイムラーは、25年までに10車種以上のEVあるいは
PHEVを発売する。
100万台といわれるディーゼル車の排ガス不正を
問われる現在、さらにEV化を推進することになる
だろう。
アウディは第1弾としてe-tronクワトロ(18年)に
続いて、第2弾のSUV、e-tronスポーツバック(19年)
を出す。
加えて、VWと共通車台(プラットフォーム)MEBを使う
小型のEVの用意もあるといわれる。
VW傘下のポルシェは、コンセプト・モデルとして
発表した「ミッションE」をベースにEVを開発、20年に
発売する。
■追う英国メーカーとフランス・メーカー
これに英国のメーカーも追従する。
早ければ19年には英国製EVが発売される。
さらにフランスでもEVの波が起きている。
ルノーはすでに数種類のEVを発売しているが、
その1台である「ZOE」をマイナーチェンジし、
電池搭載量を増やして航続距離を400キロ
メートルとしている。
PSAは、中国・東風汽車と共同で、EV・PHV用
の車台(プラットフォーム)、e-CMPを発表した。
EV版のそれには航続距離が400キロメートルを
可能にする電池が搭載される。
■各国政府がエンジン車を禁止 EVを推進
自動車メーカーだけではない。
多くの政府がエンジン車の販売を禁止し、EV化を
進めようとしている。
パリの大気汚染に泣くフランス政府は、40年までに
国内のガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する。
インドはそれに先駆けて30年までに、ノルウェー、
オランダは25年までにエンジン車の販売を禁止する。
また、自動車生産大国のドイツも、連邦議会で30年
までにエンジン車の販売を禁止すべきという決議を
している。
■トランプの米国もEVへ
米国では、トランプ大統領はパリ協定から離脱を
表明しているが、カリフォルニア州をはじめとする
12州は、実質的なエンジン車締め出しのZEV規制の
内容を強化して18年モデルから適用する。
12州の販売台数は全米のおよそ30%である。
20年には、そこでは販売台数の5台に1台から4台に
1台がEVになる。
年間100~130万台ほどのEVが販売されることになる。
ZEV規制に違反すると、1クレジットにつき5000ドルの
罰金である。
中国では、米国のZEV規制と同様のNEV規制が
18年から実施される。
これは実質的なエンジン車の締め出しであり、大気
汚染がひどいことを考えれば、当然の措置だろう。
■EVが迫る自動車産業の大転換
エンジン車からEVに移行すると、経済産業省の
試算では部品点数は3万個から1万9000個と約4割
の部品が不要になる。
まずエンジン本体だ。
シリンダーブロック、シリンダーヘッドといった大型の
鋳物から、ピストン、コンロッド、吸気バルブ、排気
バルブ、点火プラグなど小さな部品まで含めると
数千点に上る。
それ以外にラジエター等の冷却系、オイルフィルター
等の循環系、触媒などの排ガス浄化装置やマフラー
などの装備品も不要である。
また、大きな部品では変速機が不要だ。
このコストはエンジンに引けを取らない。
これらの部品が不要になれば、1次、2次の協力
メーカーは、場合によっては会社ごと不要になる。
トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車といった大きな
メーカーでは、これらの協力下請けメーカーは100社
に及ぶ。
一方、EVに転換することで新しく必要になる部品は、
モーター、インバーター、そして電池である。
大型のリレー等も必要だが、これらのメーカーは
HVで十分に育っており、規模が大きくなるにすぎない。
■電池メーカーがイニシアチブを握るか
EV化によって大幅に雇用を増やすのは、電池
メーカーである。
小さな自動車メーカーであれば飲み込んでしまう
ほどの規模の電池メーカーが出現するだろう。
エンジン車からEVへの転換は、自動車産業の
大幅な構造転換であり、自動車産業は縮小すると
考えるべきだ。
自動車メーカー内では大幅な社員の削減、配置
転換あるいは転職の推進が、協力企業は自動車
事業に代わる新たな事業計画が必要だ。
そこまでして、エンジン車をEVに転換する必要は
あるのだろうか。
■エンジン車の苦悩
世界でもっとも早くモータリゼーションの始まった
米国は、世界でもっとも早くから排ガス規制を実施
した。
エンジン車による大気汚染はカリフォルニア州を
悩ませ、戦前から排ガス規制が始まったのだ。
1908年に発表されると19年間で1500万台以上も
売れたT型フォードに始まる米国のモータリゼー
ションは、たった30年ほどで米国の主要都市の
大気を汚染してしまったのだ。
それからおよそ100年。自動車は、今度は途上国の
大気を汚染するばかりか、自動車先進国の大気汚染
も拡大するに及んでいる。
一方、世界の石油の半分を消費してしまう自動車
は、エネルギー問題も深刻にしている。
このまま自動車の燃料を石油に依存していると、
不安定な中東情勢を抱えざるを得ず、自動車のあり
方を石油産油国に握られたままとなる。
それは、ますます広がろうというモータリゼーションに
とって大きな不安要因となる。
極めつけは地球温暖化問題である。
石油を燃料にするエンジン車は、必ず二酸化炭素
(CO2)を排出する。
そして今やCO2排出量削減(燃費向上)は限界を迎え
つつある。
■EVは地球を救えるか
エンジン車は、大気汚染、石油エネルギー問題、
地球温暖化問題の大きな3つの問題を抱えており、
もしこれらの問題を解決できる自動車があれば、
それに早急に取って代わられることは明らかだ。
EVは、そうした限界を迎えた世界のモータリゼーション
の苦悩を救う可能性を持って現れた。
電池性能がもう少し向上し、その価格が低下し、
充電インフラが整えば、エンジン車に取って代わる
ことは明らかだ。
そして、その条件は満たされつつある。
時代はEVを求め、EVは期待に十分に応えられるだけ
進歩し始めた。どうやらEVは必要のようだ。
(文=舘内端/自動車評論家)
【転載終了】
**************************
EV化でパーツ数が減るのは誰しも知るところですが、
これほど急激にEV化へ進むとは思いませんでした。
0コメント