白井さゆり氏が警鐘 今年半ばまでに金融政策正常化すべき・・・
日刊ゲンダイDIGITAL
【転載開始】
■白井さゆり氏が警鐘 今年半ばまでに金融政策正常化すべき
2018年1月15日 (抜粋)
白川総裁時代に2年間、黒田時代に3年間、
審議委員を務めた慶大教授の白井さゆり氏。
2013年4月の異次元緩和は賛成したものの、
16年1月のマイナス金利導入には反対票を
投じた。
国債とETFを通じた株式の大量購入が
ズルズル長期化する現状には懸念を示す。
一般の人にも異常な政策が続くことへの
危機感を持ってもらいたいと、昨年
「東京五輪後の日本経済」(小学館)も出版。
黒田総裁の続投見通しが根強い中、
今年は緩和の出口が見えてくるのか?
出口はあるのか? ズバリ、聞いた。
■2019年の景気減速に備える
――異次元緩和は間もなく丸5年になります。
今の金融市場はいびつです。3カ月先しか
見ていない海外のヘッジファンドが円安を
見込んで円を売るポジションをとり、いつでも
売り逃げできるような期間の短い国債や株に
投資している。そういった短期筋のヘッジファンド
は儲けることだけが目的なので責められませんが、
日本経済のことはよく知りません。でも彼らが
いつも最初に動き、市場を牛耳っているのです。
――衆院選で安倍自民党が大勝し、緩和は
継続と見たヘッジファンドの資金流入が2万円と
いう株高を演出しました。政府・日銀がそうした
短期筋ばかり気にしているのは問題だと思ってい
らっしゃるようですね。
世界の年金基金など、長期投資の人たちも
日本市場に入ってきていますが、ヘッジファンド
と違って日銀に対し、「大きな歪みをもたらす
政策はダメ」と、批判的な見方も多いです。
中央銀行が10年の長期金利まで0・1%に
低く抑えるというのは異常だと私にはっきり
言う人もいます。彼らは企業をきちんと分析
して投資しています。安倍政権は、長期投資
の人たちをもっと見る必要があります。
――早期の政策変更が必要であると。
私は、今年の半ばくらいまでに金融政策を
正常化したほうがよいと思っています。今年
3月ごろまでは1・6%以上の経済成長が続く
見通しです。米国の大型減税が実施されると、
日銀が現状維持ならば日米の金利差はさらに
開く。ますます円安が進み、日本株はさらに
上昇するでしょう。18年は世界の好景気も
続きます。しかし、19年以降は欧米が減速
局面に入り、日本も2020東京五輪に向けた
特需が一服し、減速の兆しが出てくる。東京
五輪後の経済は厳しくなるので、再び緩和
できる余地を残しておくためにも、今のうちに
正常化しておくべきなのです。
――なるほど。今しかない。
企業収益が今、すごく好調で、日本株が一段
と高くなっている。もはや日銀が支える必要は
ありません。ところが、圧倒的な影響力がある
短期筋は日銀の金融緩和がこのまま続くと
信じているから、正常化に動いたら、逆に円高
・株安になる。日銀はそれが怖くて動けない。
しかし、いつかは資産の買い入れをやめなけれ
ばならない。まずは、それに向けて買い入れ額
を着実に減らしておく必要がある。そのタイミング
は今を逃すとない。
<中略>
■ゼロ金利で投資の選択肢減少、貯蓄増という皮肉
――景気後退局面に入れば、ますます正常化が
難しくなりませんか。
東京五輪後の日本では、再雇用の団塊世代が
本格的に退職します。加えて、慢性的な人手不足
で、経済活動が抑制される。これを私は「成長制約」
と呼んでいます。そうなれば、日銀には緩和を続けて
ほしいとの声が強まり永遠に出口にたどり着けなく
なってしまうと危惧しています。
――そうなったら本当に悲劇です。
本来、金融緩和というのは長く続けられないので、
景気後退局面にやるもの。逆に、今のような景気
のいい時にはやめるものです。金融緩和時には
セットで構造改革をし、その際、規制緩和によって
既得権を失う人も多いけれど、そういう人たちの
苦しみも金融緩和によって軽減できる。短期間
だからこその政策なのです。ところが、緩和を
長くやりすぎて当たり前になって、改革の意欲が
なくなっているのが現状。本末転倒しています。
<中略>
■中央銀行総裁は正直になるに尽きる
――金融緩和によって預貯金を株式などの
リスクマネーに分散させようという思惑も外れました。
驚くことに、家計の預貯金残高は、どんどん
増えている。定年を迎えた団塊の世代が再雇用
され、以前より長く働いている分、収入も多く、
それが貯蓄に回っているのです。加えて、保険の
加入率と保険料の払い込みが減り、その分も
預貯金に回っている。証券投資も増えていない。
ゼロ金利なのに異常ですよ。本来ならもっと利回り
を高めて老後の資産形成が必要なのに、ゼロ金利
で利回りが低い預貯金への投資が増えていると
いうことは、高齢者の将来の生活が苦しくなるという
ことですから。
――日本人はリスクを取りたがらない国民性
なのでしょうか?
株式市場を信用していないのでしょう。貯蓄性
保険や変額年金保険、MMFなどの商品がなく
なってしまったことも大きい。国債の利回りが
低すぎて採算が取れないので金融機関が
やめてしまった。その結果、皮肉なことに、
家計にとって投資の選択肢が少なくなり、預貯金
が増えているという状況です。現在の金融環境が
続くと保険・年金の運用資産が低迷し、国民の
老後の不安を高める恐れがあります。
――最後にひと言。
中央銀行の総裁というのは、信頼できる物価
見通しを出して、長期的視点でこの国の将来を
考えながら、正直になることに尽きると思います。
いったんは、円高・株安になるかもしれないけれど、
そこは勇気を持って。国内の市場関係者はみな
先行きを心配しています。それなのに、「問題ない」
とフタをしてしまうのではなく、そうした人たちに
対して、どう答えるのか。総裁は市場と誠実に
向き合わなければダメだと思います。
(聞き手=本紙・小塚かおる)
▽しらい・さゆり 93年米コロンビア大・経済学博士。
国際通貨基金(IMF)エコノミスト、慶大総合政策学部
教授を経て、16年3月まで5年間、日銀政策委員会
審議委員。
【転載終了】
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黒田再選となれば出口戦略に
たどりつけなくなるということのようですね。
前にも同様の記事を書きましたが、
「アベクロ」で日本経済が崩壊するという
懸念が出てきているということなのでしょう。
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