大失業時代到来。日本はどうなる?
PRESIDENT 2017年12月4日号より抜粋。
【転載開始】
■大失業時代到来。日本はどうなる?
大きく出遅れていると言われている日本の
AI開発。
現状を鈴木氏はこう解説する。
「トヨタ、パナソニックといった日本を代表する
企業の研究開発費は約5000億円。一方、グーグル、
アマゾンといったアメリカのIT企業の場合は約2兆円
です。トヨタやパナソニックは自動車、家電その
ものの開発に大半を使いますから、AIへの開発投資
は数百億円くらいでしょう。つまり、数百億円対2兆円
と投資金額の規模が全く違うのです」
林氏も「今も日本の産業を引っ張っているのは高度
経済成長期を牽引してきた企業です。しかし、基本的
に大企業は新しいことをやるのには向かない」と言う。
なぜ向かないのか。
成長した会社はどうしても失敗しないことに価値を
置いてしまい、チャレンジが苦手になる。
一足先に立ちゆかなくなったアメリカがITで成功した
のはスタートアップのエコシステムを選択したからだ。
つまり多産多死するたくさんのベンチャーの中から
突き抜けて伸びてきた小さな会社を大企業が買収
するというシステムである。
「それが大企業の新陳代謝にもなるわけです。
日本に何が必要かというと、まずスタートアップに
きちんとキャッシュが回ること。もう1つはM&Aを
した新規事業を伸ばすのは、スタートアップの
経験者ですから、失敗を恐れずに大企業は人を
送り込むべきです。この2つができれば、新陳代謝
が促され、日本の閉塞感も薄れていくはずです」(林氏)
AI開発で後れをとった日本に未来はないのか。
そんなことはないと2人は言う。
「AIでは圧倒的にアメリカに負けていても、日本は
メカトロニクスには強い。ロボット産業が最後の砦に
なるでしょう。AIはアメリカに任せ、それを搭載した
動く精密機械を製造することで日本は生きていくと
いうことになる」(鈴木氏)
「AIがロボットを造るというのはかなり先の話で、
当面は人間がロボットを造る。そして複雑になれば
なるほど、システムとして成立させるには、すり合わ
せが必要になります。つまり〈情報の取得、情報の
処理、運動〉の3要素をバランスよくすり合わせると
いうのは難度が高く、これを高次元でしかも大量生産
できる国は多くありません」(林氏)
では、日本の製造するロボットが人間の仕事を奪い、
仕事が一気に消滅するかというと、実はそういうわけ
でもない。
ロボットは高度な機械部品の組み合わせだから、
製造には相応の時間がかかる。
性能がアップし、需要があっても物理的に生産できる
台数がボトルネックになるのだ。
少子高齢化に伴う人口減少は避けられない。
労働力確保のために移民をという声も聞かれるが、
安易に移民を受け入れた後に大量失業時代がやって
くれば、移民排斥運動が起きるのは想像に難くない。
人口減少をむしろ好機として、ロボットで人手不足解消
を図る方向にアクセルを踏んでいくべきなのだろう。
とはいえ、疑問はまだ残る。
AIやロボットが働いて、いろんな製品を作り、交通機関
を運行し、サービスを供給する。
人が働かなくなるだけで、ほかは変わらない世界は
ユートピアなのかディストピアなのか?
「AIが仕事を奪う、ロボットが搾取すると思いがちですが、
そうではなくて、賢くてお金を持っている人が、より稼ぐ
ためにAIを使うという構造が恐ろしいわけです」(林氏)
今のまま市場原理に任せておけば、国民の1%が
富裕層、49%が中流層で、残りの50%は仕事がなく
生活保護に頼って生きる貧困層という社会になると
言われている。
それでも、富裕層が高額なプライベートジェットに
高級タワーマンションを買い漁れば、GDPは変わらず、
統計上は「経済は順調」ということになる。
「通過点としてはありうる話でしょう。流動性を放置
すれば、資本主義は格差が加速度的に拡大します。
でも、1%の人が大半の富を所有するという構図が
人類全体の生産性をマックスにするかというと、
そんなことはないはず。もっといい富の傾斜配分を
つくったほうが、全体の生産性は上がるはずです」(林氏)
「大勢が失業したとしても、経済は変わらずに回る。
そのときに富さえ配分されていれば、家も、生活に
必要なものも手に入る。問題はいかに富を再配分
するかです」(鈴木氏)
つまり、仕事がなくなること自体が恐ろしいという
よりも、失業しても大丈夫な社会の仕組みづくりを
構築できるかどうかが問題で、それが全く見えない
から不安なのだ。
格差社会を是正するためにトマ・ピケティ氏は
富裕層に対する累進課税、資産税の強化をと主張し、
ビル・ゲイツ氏はロボットの働きに対して税金をかける
べきだと言っている。
大失業時代の社会システムとして、多いのがベーシック
インカム(BI)の導入をという意見だ。
鈴木氏はその財源にAI、ロボットにも給料を支払い、
それを国民に分配するというユニークな解決策を
主張している。
「かつて正社員にしか任せられなかった仕事が、
今ではアルバイトでもできる時代です。正規雇用
と非正規雇用の同一労働同一賃金が問題になって
いますが、人間の10分の1のコストでAIやロボットが
働いているのだから、そこまで含めないと本当の
解決にはなりません」(鈴木氏)
最適な富の再分配こそAIの仕事かもしれないと
言うのは林氏。
「資本主義というシンプルなルールは人間でも扱え
ましたが、社会主義的なものになると、人はバイアス
の塊なので、自分たちではうまくコントロールできません。
AIの情報収集能力が向上し、人間というものの理解が
進めば、最適な富の傾斜配分の仕組みがつくれるかも
しれません。『ホモ・サピエンスという生体システムはこの
ぐらいの配分にしておくとやる気を出す』というような
クラスタリングは得意ですから。僕らが幸せを感じるのは
何かを診断してくれるものとしてAIは存在する可能性は
ありますし、もしかしたらそれこそが、AIの最大の仕事
なのかもしれません」
今世紀の人類は、AIやロボットと共存し、仕事を分担
しながら働くことになるだろう。
そして拡大する格差をどう是正するのか。
真剣に考え実行しないと、未来が不幸で惨めになることは
間違いない。
▼オフィスでなくなる部署、残る部署
なくなる:営業部、中間管理職 残る:営業マン
顧客を回り、現場の情報を集める営業マンの
仕事はなくなりにくい。
なくなる:経理部 残る:総務部
労務管理はAIが担うだろうが、気配りが必要な
総務の仕事は残る。
なくなる:経営企画部 残る:苦情対応係
苦情への対応、謝罪などは、ロボットの対応では
納得されない。
なくなる:マーケティング部 残る:開発研究部
マーケティングはAIの得意分野なので、導入も
早いと思われる。
なくなる:法務部 残る:CSR推進部
知的財産の所有権や判例など膨大なデータの
検索はAIが得意。
なくなる:秘書室 残る:お抱え運転手
自動運転車が進むなか、お抱え運転手を雇い
見栄を張る社長も登場?
※取材を基に編集部で作成
【転載終了】
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個人的にも契約社員を定年前の4年間経験
しましたが、正規社員と同じ(経験値が高いと
正規以上)仕事をしても60%の賃金です。
スーパーのような社員数人でほとんどが
パートさんという極端な状態になるでしょうし、
ここでもレジはロボレジに切り替わり、
パートさんの仕事がなくなりそうです。
医療界でも、外科医や内科医が激減している
という記事があり、外科手術はロボットが執刀
する時代が来るとも言われていますね。
全てが、ハリウッド映画の世界と同じように
なっていくことが怖いですね。
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