「トヨタ」春闘リード役を放棄、国際競争力低下の危機感・・・
Business Journal
【転載開始】
■トヨタ、安倍政権の賃上げ要求に抵抗行動…
春闘リード役を放棄、国際競争力低下の危機感
長年にわたって春の労使交渉(春闘)で
相場形成のリード役を担ってきたトヨタ自動車の
労使交渉は、今年、異例づくめの展開となった。
デンソーなどのグループ会社がトヨタより先に
妥結したほか、トヨタは妥結でベースアップ
(ベア)額を示さなかった。
自動車業界は足並みも乱れている。
背景には安倍晋三首相による「官製春闘」に
対する不満がある。
デフレ脱却を目指す安倍首相が、今春闘で
賃上げ3%以上を求めた。
政府が民間企業に賃上げを求める「官製春闘」は
今回が5年目だが、具体的な数値を示して賃上げ
を求めるのは初めてで「共産党が支配する中国
でもやらない。異常だ」(自動車メーカー役員)。
そして、この政府のやりかたが、春闘相場の
リード役となっているトヨタにとって大きな負担となる。
例年の春闘では、トヨタが集中回答日の数日前
に先行して決着し、グループ会社や業界他社が
トヨタより低い水準で決着する。
そしてトヨタの相場は電機や鉄鋼など、他の業界も
参考にする。
このため、今春闘では政府の求める賃上げ3%に
トヨタがどう応えるのか注目されていた。
自動車業界は自動運転や電動化、シェアリング
などによって100年に1度といわれる変革期を
迎えており、自動車各社は巨額な研究開発投資
を迫られている。
加えて米ウーバー・テクノロジーズやグーグルなど、
自動業界にはIT大手などの異業種が相次いで参入
する見通しで、競争激化も避けられない。
世界トップクラスの自動車メーカーであるトヨタの
危機感は強い。
さらにトヨタの国内従業員の賃金は、すでに
国際的に見て高い水準にあり、政府が期待する
賃上げに応え続けることは国際的な競争力低下
につながりかねない。
ただ、政府の意向を無視して賃上げの流れに水を
差すと、あとあと面倒なことになる。
そこでとった奇策が、ベア額を表示しないこと
だった。
トヨタ労組は今春闘でベア3000円を要求した。
しかし、決着したベアは「前年の月1300円超」とし、
具体的なベア額を示さないことで労使で合意した。
トヨタは「過度に一般組合員のベアに焦点があたる
ことや、大手との比較や横並びで昇給額が決まる
交渉では目的が達せられない」と説明する。
トヨタの賃上げ率は3.3%と強調、政府が求める
3%を超えたと説明する。
しかし、3.3%には社員の自己研鑽への補助金
や期間従業員の家族手当も含まれており、政権
に配慮する姿勢が透けて見える。
それでもベア額を示さなかったことで、グループ会社
や業界他社が賃上げ額をトヨタをベースにしないよう
にするとともに、来年以降の春闘で、政府が賃上げ
の数値目標を示さないようにけん制したと見られる。
決着も異例だった。
トヨタが決着したのは集中回答日の前日だった。
この影響で、デンソー、豊田自動織機、アイシン精機
のグループ3社がトヨタ本体より先に決着する事態に
なった。
トヨタが春闘の相場形成をリードする役割から脱却
するため、あえて決着を集中回答日の直前にまで
ずらして、中小などのグループや業界他社が足並み
を揃えないようにしたと見られている。
■労使交渉のあり方に一石
トヨタの思惑どおり、自動車各社の春闘は横並び
が崩れた。
ベアはトヨタが1300円超とし、ホンダは前年より100円
高い1700円で妥結した。
日産自動車は満額回答の3000円で前年より1500円
高く、日産グループの三菱自動車は前年実績より
500円高い1500円だった。
スズキは900円アップの2400円だった一方で、
ダイハツ工業は1500円と前年と同じと横並びは崩れた。
トヨタの今期(2018年3月期)の業績は為替差益や、
米国のトランプ政権の減税効果もあって過去最高益
となる見通し。
ただ、安倍政権の要請に応えて賃上げをトヨタが
受け入れると、それが大きな流れになり、日本企業の
国際競争力を失うことになりかねない。
一方で、鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置を打ち
出すなど、保護主義を掲げるトランプ政権が今後、
日本車を標的にする可能性もあることから、トヨタと
しても頼りの安倍政権をムゲにすることもできない。
このため、トヨタ本体として政権の期待には応えつつ、
賃金水準の相場形成の主導役から降板する道を
探っている。
来年以降、労使交渉のあり方が変化するのか注目
される。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
【転載終了】
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貿易戦争になると、トヨタがたたかれるのは
目に見えていますから、危機感も他メーカー
より強いのでしょう。
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