早くも賃上げ倒産増加の兆候。

MONEY VOICE


【転載開始】


■早くも賃上げ倒産増加の兆候。

 薄給しか出せぬ中小企業が直面する

 「従業員退職型倒産」の危機

 2023年2月14日


 帝国データバンクの調査によると、昨年の

人手不足倒産が140件と、前年の111件から

再び増加に転じました。

このうち、従業員退職による倒産が57件と、

全体の4割を占めています。

人手不足感が強い中で物価高が進み、企業も

賃上げを余儀なくされていますが、

「ない袖は振れない」企業も多く、

今後賃上げ格差が役員・従業員の退職や移動

をもたらし、賃上げ倒産が増える可能性が

高いと言います。


■人手不足倒産が増加に


 コロナ禍で企業には「ゼロゼロ融資」や

超低金利など、空前の金融緩和が行われ、

企業倒産は減少を続けていました。


 しかし、昨年にはその大規模緩和の中でも

「物価高倒産」「人手不足倒産」が増えてき

ました。


 帝国データの調査では前述のように人手

不足の中で、従業員や役員の退職で経営維持

が困難になるケースが増えています。


 従業員退職型倒産が人手不足倒産の中で4割

を占めていますが、業種物にみると、建設業

では5割と、半分が従業員の退職で回らなく

なったと言います。


 これに次いで従業員退職の影響が大きいのは

小売業の40%、サービス業の39.5%、製造業

の38.5%と続いています。

労働集約型業界ほど、従業員退職の影響が大き

く出ています。


■賃上げ倒産増加の前兆


 この現象は、今後の賃上げ倒産増加を予兆

しています。


 物価高が進み、労働者の賃上げ要請が強まり、

少しでも高い賃金の企業に移動したいという

思いも強いなかで、経団連など財界もついに

賃上げに動き始めました。


 大企業の中には定昇込みで6%以上の賃上げ

を予定するところがあり、なかには10%アップ

もあります。

住友フィナンシャルは初任給を5万円上げると

言います。


 横並び意識の強い日本の産業界では、住友が

上げれば三菱もとなり、第一生命が上げれば

明治生命も、ということになります。


 大企業の間では右へ倣えの動きが広がりそう

ですが、一方で中小零細企業では賃上げどころ

ではないところも少なくありません。

「ない袖は振れない」からです。


 このため、今年は大幅賃上げをする企業と、

賃上げできない企業とで格差が広がりそうです。


 この賃上げ格差が明らかになると、賃上げ

できない企業の役員、従業員はより賃金条件の

良いところへ移りたくなり、賃上げが契機と

なって「従業員退職型倒産」が増える懸念が

あります。


■リスキリングが移動を助長


 賃上げ格差が労働移動のインセンティブに

なりやすくなっていますが、その流れを助長

するのが「リスキリング」の動きです。


 企業や自治体の支援もあって、

IT・デジタル分野を中心に従業員の間に

再教育を受ける動きが広がっています。

NHKの「クローズアップ現代」でも取り上げ

ていました。

派遣の受付係をやっていた人が、リスキリン

グにより、プログラミングの「正社員」職を

得たケースも紹介されていました。


 中小企業の中にも、熟練労働力不足で、

社内の労働力を「リスキリング」によって

スキルアップしたいとするところが増え、

時間を割いて再教育を進めるところが増えて

います。


 個人ベースでも週末や夕方の時間を割いて

リスキリングを実践する人が増え、彼らは新た

に得たスキルを活かして転職を目指すケースも

少なくありません。


 企業が率先してリスキリングを実践した

結果、却って従業員がそのスキルをもって他社

に移動するケースもありますが、技術系の熟練

労働力、IT・デジタル技術者不足が深刻なだけ

に、今後一段とこの動きが広がり、結果として

従業員を失う企業は倒産の危機に直面すること

になります。


■日米で逆行


 米国では「ジョブ・ホッピング(転職)」は

常態化し、1年から3年で職を移るケースが多い

と言います。


 企業の人事担当からすれば、それだけ新たな

リクルート活動にコストがかかるので、近年で

は従業員のつなぎ止め、長期定着化を進める

ところが増えています。

そのために社内カフェを充実させたり、社内に

スポーツジムを作ったりして福利厚生に努め、

従業員の気を引こうとしています。


 その一方で、日本では小泉内閣のあたりから

米国のように労働市場を流動化し、固定費と

しての人件費を変動費化するよう、制度改正も

進めました。

中途採用の高まり、非正規雇用の活用などです。


 硬直的な人事制度が負担になる企業にとって、

年功序列型賃金や終身雇用制度は負担の元で、

必要な時に必要なだけの労働力を使えれば、

人件費コストが軽くなるとの期待がありました。


 会社のお金で海外留学させると、そのまま

海外で転職したり、日本に帰国後、より処遇の

良い外資系企業に転職するものも増えました。

このため、社内教育への資源配分を減らす企業

が増えました。

そして従業員の間に「わが社」「うちの会社」

という意識が薄れ、自分の所属する企業への

忠誠心が希薄化しました。

これが生産性を抑圧する面も否定できなくなり

ました。


 そして非正規雇用が全体の約4割を占めるに

至り、正社員と非正規雇用との賃金格差が

3対1(国税庁「民間給与実態調査」)に広が

るに至って社会問題化しました。

年収190万円では結婚して子どもを持つことは

できません。

少子高齢化の1つの要因とされるに至りました。


 そこで日本でも「同一労働同一賃金」、

「非正規の正規雇用化推進」、

「非正規雇用の社会保険加入」などで穴埋め

する動きとなりました。


■日本型経営の見直し


 米国では企業は資本家だけのものではない、

との認識が高まり、資本と労働、経営者の

「三位一体」との意識が高まっています。

これはもともと日本の経営体系のはずでした。

米国でまさに日本型経営の良さが再評価され

ています。


 そして日本では益々雇用の流動化が進み、

賃金条件で劣勢の中小企業が

「人手不足型倒産」の危機に陥ろうとしてい

ます。


 賃上げ競争となれば、中小零細企業に

勝ち目はありません。

高い賃金を出して労働者を確保するよりは、

自社のビジネスに活かせるリスキリングを

「社内教育」として行い、その成果を労働者

にも配分する。

賃金の上昇とともに新ビジネスに責任を持た

せることで自社への忠誠心も高まります。

これが従業員の定着化につながれば、

賃金倒産は回避できます。


 かつて日本で定着していた労働者を大事に

し、雇用保障にもつながる日本型経営の強み

を改めて活かす経営、雇用対策を日本でも

再評価し、三位一体型の経営に戻ることです。

それが、長期的には労働コストの安定、

生産性の上昇にもつながり、自社の強化のみ

ならず日本経済の再生につながる道だと思い

ます。


 賃上げ倒産はまさに

「ウェイクアップ・コール」ととらえるべき

ではないかと思います。


【転載終了】

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 多分、中小企業はギリギリのところで

経営しているのでしょうね。


 大手がこんな時にコストダウンの要求

では、中小はやっていけませんよね。


 中小は、海外取引にシフトすべき時に

きているのかも?


LC=相棒's のじじ~放談!

時事関係や自動車関係などの記事を書いています。

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