トランプ氏が開けたパンドラの箱「核拡散ドミノ」・・・
AERAdot.
【転載開始】
■トランプ氏が開けたパンドラの箱「核拡散ドミノ」を
誘引する安倍政権
米国のトランプ大統領は5月9日、イラン核
合意から離脱し、イランに対して最大級の
経済制裁を行うと発表した。
合意はオバマ政権下の米国と英仏独中ロの
6カ国が、イランと3年前に結んだ国際社会の
約束事だったが、それをほごにしたことで、
再び中東情勢が不安定化するリスクが生じた。
日本も「対岸の火事」ではないと猿田佐世
弁護士は警告する。
* * *
トランプ米大統領が、「イラン核合意」から
離脱すると発表しました。
イランは現時点では合意にとどまると表明
したものの、無制限のウラン濃縮活動を
再開できるようにするとしています。
中東地域で「核拡散のドミノ」を呼び起こし
かねない事態です。
中東での核開発問題は、日本からは遠い
出来事のようにも感じられます。
しかし、この中東の「核拡散のドミノ」を日本
が一部後押ししてしまっている、と聞いたら、
日本の多くの方々は驚かれるでしょうか。
原発の開発を行う多くの国は、アメリカ
からの資材・技術の移転を行うために、
アメリカと原子力協定を結んで、その協定
に定められている条件に従って原発の
開発を行います。
アメリカは、各国と協定を結ぶ際、核不拡散
の観点からの制限をかけながら協定を結び
ます。
現在20以上の国と原子力協定を結んで
いるアメリカですが、2009年にアラブ首長国
連邦(UAE)との間で結んだ協定が
「ゴールデン・スタンダード」とされ、他国との
協定のモデルとされています。
この米UAE協定においては、核兵器の原料
となる濃縮ウランやプルトニウムを生み出す
「ウラン濃縮」と「使用済み核燃料の再処理」
の両方が禁止されているからです。
その両方が行われなければ、ある国が原発
を開発したとしても、核兵器が拡散する危険
は相当程度低いものになります。
しかし、「核拡散のドミノ」の中で、この
「ゴールデン・スタンダード」が揺らいでい
ます。
特に世界の火薬庫となっている中東でさら
に危険な核競争が始まりかねない状況と
なっています。
イラクの核開発の可能性が騒がれる中で、
中東でイラクとの覇権争いをしているサウジ
アラビアが、イランの状況をにらみながら自ら
もその可能性を模索していると言われてい
ます。
現在、サウジアラビアは、アメリカとの原子
力協定の交渉を本格化させていますが、
その交渉の中で、ウラン濃縮や再処理を
禁止したいアメリカに対して、否定的な態度
をとり続けてきました。
米議会などからは核拡散につながるような
原子力協定には強い懸念が示されてきま
したが、この3月、サウジのムハンマド皇太子
は、「イランが核兵器を開発すれば、サウジ
はすぐに追随する」との発言をしました。
これを受け、ある米議員からは、直ちに
「皇太子は、サウジが原子力を求めるのは、
電力ではなく、地政学上の力のため(注:
安全保障のため、との意味)だとの疑念を
認めた」との声明が出されています。
今回の米国のイラン核合意離脱に対しては
世界の多くの国が批判的ですが、イスラエル
とともにサウジも離脱を支持しています。
そのサウジが、名指しするのが日本です。
日本は、日米原子力協定で、再処理とウラン
濃縮の権限をアメリカから認められています。
これは非核国では唯一です。
米政府当局は、サウジから「日本に認めて
どうしてサウジには認めないのか」と日本を
名指しで指摘され、頭を抱えています。
もっとも、日本が再処理やウラン濃縮を認め
られていることを他国に指摘されるのは、
サウジが初めてではありません。
お隣の国、韓国も、日本が認められているの
になぜ韓国はダメなのか、とアメリカへ強力な
交渉を続け、2015年、制限的にではあるものの
再処理の権限をアメリカに認めさせています。
現在、日本は、再処理により取り出したプルト
ニウムを47トン(核弾頭6000発分)も保有して
いますが、これについても多くの国から批判され
てきました。
アメリカの政府関係者等からも常に懸念が示さ
れ続けており、本年2月には、米議会で、日米
原子力協定については改定交渉すべきでは
ないかという質問までも飛び出しています。
核拡散に比較的厳しい態度で臨んでいた
オバマ政権に比べて、トランプ大統領は、アメリカ
国内で衰退の一途をたどっている原子力産業の
てこ入れに、と、サウジが核不拡散のための厳し
い条件を飲まなくても米サウジ原子力協定を結ぶ
のではないかとも言われています。
しかし、アメリカがサウジにウラン濃縮や
再処理の権限を認める場合には、その決定が
世界の核不拡散に与える影響は極めて大きな
ものとなります。
例えば、「ゴールデン・スタンダード」とされて
いる米UAE協定は、UAEが中東における最恵国
待遇を受けるという条件で結ばれているため、
サウジに再処理やウラン濃縮の権利が認めら
れた場合には、UAEは「我こそも」と言うことが
できるようになります。
UAEがそれを言い出した時点で、目指すべき
基準であった「ゴールデン・スタンダード」は
崩壊に至ります。
そうなれば、世界の核不拡散体制は一気に
弱体化していきます。
そんな可能性をはらむ極めて危うい状況の
中で、日本は「日本が認められているので
あれば我も」と指摘を受ける使用済み燃料の
再処理に固執し続けて、プルトニウムを蓄積
し続けてきました。
日本に再処理を許してきた日米原子力協定
は締結から30年の期間を経過し、今年7月に
満期を迎えます。
日米双方から改定の申し出がなかったために、
現時点では協定の自動延長が決まっています
が、これからはいつでも改定ができるようになり
ます。
日本に経済的利益ももたらさず、世界の不拡散
体制を脅かすこの再処理や核燃サイクルを、
日本は一度立ち止まって見直すべきです。
(国際弁護士・猿田佐世)
猿田佐世(さるた・さよ)/シンクタンク
「新外交イニシアティブ(ND)」事務局長・弁護士
(日本・ニューヨーク州)。
【転載終了】
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米国は、「世界の警察官」といっていますが、
世界に不安定をもたらす国がどうなのという
気がします。
不安定化する地域には、ほとんど米国が
介入しているといっても過言ではないですね。
そういっても分からないと思いますが、表面に
出ない形で介入しています。
例えば、アル・カイーダやシリアのISは背後に
米国の影があるといわれていますね。
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