目を向けるべきは国内。わかっていても為す術がない黒田日銀総裁
MONEY VOICE
日本株の暴落リスクは外部要因に非ず。
超緩和の長期化がもたらす2つの副作用=山崎和邦
目を向けるべきは国内。
わかっていても為す術がない黒田日銀総裁
【転載開始】
■達成時期が見えない「2%目標」
4月の金融政策決定会合で日銀は「2%目標」
の達成時期を削除した。
つまり「持久戦」に持ち込み、「2%目標」だけは
旗幟鮮明(きしせんめい)に標榜し続けることに
した。
これはもはや現状追認したに過ぎないが、
現状を無視して無理な楽観論を唱え続ける
よりはよほどマシである。
また、強引な追加緩和を試みたりするよりは、
はるかに真っ当である。
今月末に出される「展望レポート」では、
物価が上昇しない様々な理由に関する分析を
提示しつつ、物価見通しを大きく引き下げるで
あろうと予想される。
■超緩和の長期化がもたらす「2つの副作用」
物価見通しよりも、今は超緩和の長期化に
伴う「副作用」を考えることが先決であろう。
2%目標が「2年程度」で達成されるならば、
金融機関には多少の我慢をしてもらえば済む話
だった。
2013年の4月に着任した黒田さんは、
そう考えたに違いない。筆者らもそう考えた。
ところが、2つの問題がある。
■副作用その1:銀行の弱体化
1つは超緩和の長期化がもたらす金融機関への
副作用である。
扱う商品の価格が下がれば、当該企業の利益は
減る。
またはマイナスになる。
例えば原油価格が安くなり、非鉄金属が安くなり、
食用価格が安くなれば商社はみな減益になる。
これと同じだ。
今の状態では地方銀行は半数以上が赤字で
あろう。
メガバンクも苦しいであろう。
みずほ銀行に至っては「平時」において16,000人
を削減するという。
銀行が弱体化すれば、あるいは地方銀行が赤字
になれば、銀行の金融仲介機能が弱まり、
資本主義体制の血流が弱まる。
平成に入っての13年間は土地暴落、株暴落に
よって担保が目減りし債権が不良債権化した。
そこへもってきて88年に決まったBIS規制によって
貸し出しが自己資産の12.5倍以内だと決まった。
よって銀行は猛烈な貸し渋りに入った。
または「貸しはがし」に入った。
これが日本の資本主義体制を大きく弱体化させた。
今回、それとは原因はまったく異なるが、
銀行の体力の弱体化を招いたことは間違いない。
しかも、物価目標が達成される前に次の景気後退
を迎える可能性は高い。
そうなれば金利を下げて景気を刺激するという
金融政策を打つ手がない。
<マイナス金利導入以降、DIの水準は前回の
景気後退期より低い水準が続く>
<銀行業DIと三井住友FGの推移。マイナス金利
政策の修正が銀行株のポイントに>
FRBは一歩先に進んでいて、現在好調な米国
景気が不調に入った時には金利引き下げに
よって刺激してやるだけの「のりしろ」をつくりつつ
ある。
日本にはその「のりしろ」がまったくない。
ゼロ%かマイナス金利なのだから、
これ以上緩和する余地がない。
出口戦略が整う前に景気が後退期に入り収縮期に
入った場合に、打つ手がない。
これが大きなリスクとなる。
その場合に株式市場に与える影響は大きいであろう。
NY市場や上海市場や円ドル相場の行方を
外部要因としては注視していなければならない。
しかし、本当のリスクは日本国内に現存する銀行
の弱体化である。
我々が体験した平成に入ってからの13年間を、
「失われた13年」と筆者は述べてきた。
「失われた20年」は朝日新聞の造語である。
本当は90年1月の大暴落から2003年4月までの、
りそな銀行への公的注入で不良債権処理を終了
したこの13年間を指す。
■副作用その2:設備投資計画の大幅な増加
日本株の修羅場は、実はNY株や上海株や為替
相場よりも、日本国内の超緩和の副作用がもたら
すことになるもかもしれない。
これについて言われていることは、一般的に以下
である。
1.銀行収益が減少し、銀行の体力弱体化による
金融仲介機能の低迷
2.年金・生保などの運用難
3.市場流動性の低下
ところが、もう1つある。
6月調査の日銀短観では、設備投資計画の大幅な
増加が久しぶりに示された。
大企業ベースで前年度比+13.6%という数値は実に
バブル期ピークを超える。
後で振り返ってみれば、あの超低金利によって
バブル期最盛時を超えた設備投資計画の大幅な
増加があったのだ。
あれは超低金利の副作用だったのではないかと
いうことになる恐れが大いにある。
今から副作用を計測するのは、相当な複雑さを伴う。
銀行の体力弱体化は誰にも見えていることであるが、
企業がバブル期ピークを超えるほどの設備投資行動
を起こすというリスクはやはり副作用の1つであろう。
■わかっていても為す術がない黒田日銀総裁
昨年11月に黒田総裁が「リバーサルレート」
(低すぎて金融緩和効果を減じてしまう金利水準)に
ついて言及した。
黒田総裁が自ら超緩和の副作用を直視したことになる。
大蔵官僚出身で外為の責任者も務めた黒田総裁
である。
すべては読めていると思う。
読めていてどうしようもないところに彼の悲劇がある。
2013年に登場し、異次元緩和によって株価を上げて
円安を導き、1円の介入もなしで着任当時の90円を
125.8円までもっていき「黒田バズーカ」と言われた。
あの時、黒田さんは「英雄」だった。
しかし筆者は当時、「英雄の末路憐れむべし」と
書いた。
ハンニバル、シーザー、ナポレオン、平維盛、織田信長
ほか、英雄の末路は悲劇で終わる。
すべてをわかっていながら、どうしようもない彼の立場
には大いに同情はする。
日本株の修羅場は、実はNY株や上海株や為替相場
よりも、日本国内の超緩和の副作用がもたらすことに
なるもかもしれない。
【転載終了】
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ここにきて、日銀の失敗が記事として目立って
来ています。
当初から「アベノミクス」に反対していた方々
の予測したとおりの展開になってきており、
「アベノミクス」の失敗を海外から指摘された
時点で修正していればまだ展開は違っていた
かもしれませんね?
安倍首相への「忖度」が手遅れの状況を
つくり出しているような気がします。
2019年からの景気後退に不安を感じ
ます。
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