「圧勝間違いない安倍総理が目指す総裁4選と“皇帝”への道」

連載「政官財の罪と罰」


【転載開始】


■古賀茂明

 「圧勝間違いない安倍総理が目指す総裁4選と“皇帝”への道」


 7月24日、岸田文雄自民党政調会長が

秋の同党総裁選不出馬と安倍晋三総理

支持を表明した。

野田聖子総務相が、スキャンダルの泥沼

にはまっていることから、総裁選は、安倍総理

と石破茂元防衛相の一騎打ちとなることが

事実上決まった。


 自民党総裁選は、国会議員票(405票)及び

それと同数の地方票で争われるが、

安倍総理支持は、党内最大派閥の細田派

(事実上の安倍派)94人、第2派閥の麻生派59人、

第5派閥の二階派44人の主流3派だけで国会

議員票の5割近いのだが、これに加えて第4派閥

の岸田派48人が加われば、6割超だ。

約70人の無派閥議員のうち50人近くが安倍支持

と言われるので、それを加えると7割超となる。


 第3派閥の竹下派55人のうち参議院の21人が

石破氏支持という報道があるが、石破派は20人

だから、各派閥の中で脱落者が多少出るとしても、

安倍氏の圧倒的リードは揺るがない。


 石破陣営は、地方では、元々石破氏人気が高く、

また、モリカケ疑惑など一連の安倍夫妻がらみの

スキャンダルもあって、総裁交代を望む声が強い

と読むが、そう単純でもない。

自民党の選挙は、単なる人気投票ではなく、

利権の争奪戦という側面が強いからだ。

このため、早い段階で勝負の行方がわかると、

「勝ち馬に乗る」動きが一気に加速する可能性

もある。


 こうした情勢の中で、大手マスコミ各社は、

一斉に「安倍3選有力」という記事を流している。

まだ、誰も正式立候補していないのにこうした

情報を流すのが、安倍氏を利することはもちろん

よくわかったうえでの報道だ。


■2019年に全てをかけて4選を目指すのは規定路線?


 反自民と自民党内の反安倍勢力にとっては、

早々に「安倍早期退陣」の希望を断たれた

格好で、今秋以降は3年後の2021年の次々期

総裁選に向けた動きに焦点が移っていくことに

なる。


 そこで、思い出していただきたいのが、

年頭の本コラム「安倍総理3選で憲法9条改正へ

突き進む2018年」(同年1月.1日配信) だ。


 今後の展開は、ほぼそこで予測した通りに

進んでいくのではないかと思う。


 時系列で見て行くと、まず、総裁選では、

安倍総理は、憲法改正を争点化するとすでに

表明している。

ここでは、おそらく9条改正に絞って議論を展開

するのではないかとみられる。

9条2項の戦力不保持条項を削除するという

石破氏に対して、安倍案は、9条2項も含めて

現行条文をそのまま残し、新設する9条の2で

自衛隊を規定するだけだとする。

両案を並べれば、まるで安倍氏が「平和主義」

の守護神であるかのようにさえ見える。

これは、自民党内のハト派党員向けのみならず、

来年の憲法改正の国民投票を睨んだパフォー

マンスと見ることができる。


 総裁選で安倍案を掲げて勝利することにより、

秋の臨時国会では、早々に野党側に自民の

改憲案を提示する環境が整う。

臨時国会では、豪雨災害対策として最大級の

補正予算を通して、被災地への配慮を示した

うえで、本格的な改憲議論を始め、臨時国会

終盤までには審議時間をかなりこなしたという

実績を積み上げるだろう。

もちろん、被災地での自衛隊の活躍も最大限

アピールされるはずだ。


 10、11月には那覇市長選と沖縄県知事選

がある。

翁長知事の出馬はかなり厳しい状況で、

しかも、オール沖縄から経済界の重鎮が離脱

するなど反安倍陣営の結束力に陰りが見える

中、ここでも最大級のバラマキを行えば、今年

最大の難関であるこの選挙を勝ち抜くのは

それほど難しくないかもしれない。


 その後は、とにかくスキャンダルを出さない

ように慎重に事を進め、来年1月召集の通常

国会冒頭では、19年10月の消費税増税対策

と称して、「史上最大の予算」を組み、あらゆる

バラマキ予算を総動員する。


 そのバラマキで、春の統一地方選をうまく

乗り切れば、次のテーマは憲法改正の発議だ。

その前に天皇の交代という一大行事があるが、

むしろ、それは国会の議論で野党が審議拒否

などしにくいムードを作るのに役立つ。

そして、新天皇即位ブームのお祭りが終われば

すぐに発議の採決を強行するだろう。

与党は衆参両院で3分の2を占めるうえ、維新が

大阪へのカジノ誘致承認とのバーターで改憲に

賛成してくれるので、多少無理をすれば、ここも

十分にクリアできる。


 来年の夏の経済状況は、年頭コラムで指摘

したとおり、10月の消費税増税前に住宅や

自動車・高額商品の駆け込み消費で空前の

消費・住宅投資ブームとなっている可能性が

高い。

五輪特需の建設ブームもその頃がピークアウト

の寸前だ。


 安倍政権は右翼の岩盤層に支えられているが、

それだけでは国民投票には勝てない。

これに加えて中間層の支持を獲得しなければ

ならないが、そのための最大の武器が、

「アベノミクスで景気が良くなった」というイメージ

戦略になる。

その観点では、駆け込み景気が盛り上がる

19年夏に全ての勝負をかけるのが最も合理的だ。


 「景気がいいね」「また時給が上がったよ」

「安倍さんのおかげだね」「そうかもね」「憲法は

古いんだってね」「携帯もネットもなかった時に

作ったらしいよ」「自衛隊が違憲だってことに

なってるらしいよ」「それは変だね」「安倍さんが

変えなくちゃいけないと言ってるんだって」

「確かにそうかもね」という感じで、経済が良く

なったと感じている層では、案外抵抗感がなく、

改憲が受け入れられてしまう可能性もある。


 ここで勝負をかけるのであれば、参議院選と

国民投票の同時実施は当然の選択だ。

いっぺんにやれば、資金力に勝る自民党が

有利だからだ。


 さらに考えれば、この状況で衆議院選挙を

やらない手はないということになる。

逆に、ここでやらなければ、秋の消費税増税後

に経済が落ち込むと、当分は解散はできなくなる。

20年のオリンピック直前の盛り上がりはあっても、

その時期に選挙をやるのは無理だ。

五輪が終わると、一気に経済が冷え込むという

予測もあり、そうなると、21年10月の任期切れ

までに解散できるタイミングはないかもしれない。

どう考えても19年夏に行うのが最善の選択では

ないだろうか。


 ということで、19年夏には、衆参同日選と国民

投票のトリプル投票となるかもしれない。

そうなると野党側は大変だ。

何しろ、参議院だけでも候補者が足りないのに、

衆議院選も同時となれば、おそらく十分な候補

擁立ができないだろう。

無理して立てても泡沫ばかりということになり

かねない。


 また、参議院の選挙協力もまだ進んでいない

のに、衆議院も同時に選挙協力というのは、

衆参の貸し借りが錯綜し、仮に協力区ができても

一枚岩で戦えるところは極めて限定された数に

とどまると思われる。


 さらに、三つの選挙をいっぺんにやるには膨大

な資金力が必要となり、この面でも自民党は非常

に有利になる。


 こうしたシナリオは、経済のことを考えれば、

ごく自然に出て来るものだ。

これ以外のシナリオは逆に考えにくい。

今頃になって、衆参同日選の可能性が浮上して

来たなどと書き始めた政治部記者もいるが、

それでも未だ少数なのは、政治部の記者たちが

経済音痴だからなのかもしれない。


■歴史的偉業を達成した総裁をクビにできないキャンペーン?


 改憲が成立し、与党が衆参で大勝する可能性も

かなりある。

仮に3分の2は取れなくても議席減少がそれほど

大きくなければ、自民党支持層での安倍総理へ

の評価は高まるだろう。

少なくとも今年の総裁選で惨敗するかもしれない

石破氏や、安倍氏と戦うのを逃げて禅譲に望み

をかける岸田氏など敵ではない。

強いて挙げれば小泉進次郎氏が最大のライバル

という状況になるだろう。


 今年の総裁選後の人事や来年の選挙の公認権、

そして、来夏の衆参選挙後の人事などで、

まだまだ安倍総理の権力は残る。


 しかし、現在の自民党の党則では、総裁は3選が

上限となっている。

となれば、今年の総裁選後は、どんなに頑張っても

レームダック化が進むのは避けられない。


 当然、安倍総理側は、その防止策を考えている

はずだ。

通常の人事などの手段以外に考えられる方策と

しては二つある。

一つ目は、前述した来夏の衆議院選実施である。

その噂を今から流せば、公認権の行使という権力

を最大限に活用できる。ただし、それは、来年夏

までしか使えない。


 そこで、考えられる二つ目の方策が、「安倍4選」

の可能性を意識させることだ。

安倍総理は、3選禁止だった党則を変えて今回の

総裁選への立候補を可能にしたという実績がある。

同じことができないはずはない。

総裁選後の党人事で、4選を可能とする党則改正

を幹事長候補と密約するということもあるかもしれ

ない。

あるいは、幹事長候補がそれを自ら安倍総理に

持ちかけるという展開も十分に考えられる。

前回の改正の際には二階俊博幹事長がその議論

の先頭に立った。

今回も、同じ役割を担うことは十分にあり得る。

二階派は、自前の総裁候補がいないので、

安倍氏と他派閥の総裁候補を自由に天秤にかけ

られる。

安倍新体制の中での優遇措置を得るために

4選戦略の先兵になっても全く不思議ではない。


 今すぐ動くというわけではないが、早い段階から

4選の憶測をプレスに流し、雰囲気を醸し出す。

そのうえで、来年の改憲達成の暁には、

「これだけの歴史的偉業を成し遂げた総裁を

決まりだからと言ってクビにするのはいかが

なものか」という議論を展開。

消費税増税前に一気に4選可能な党則改正に

持って行くか、あるいは、議論を続けて、

20年の五輪パラリンピック開催の余韻を使って、

改正するか。

最悪改正が実現しなくても、その可能性がある

と思わせている間は、レームダック化に歯止め

がかかる。


 もちろん、その間、安倍氏自身は、総裁選ルール

は党で議論すべきことだという立場を堅持し、

予定通り退任して岸田氏に禅譲というオプション

もちらつかせることで、岸田派の支持を確保し

続けるということもやるだろう。


■野望は膨らみ総理から安倍皇帝へ?


 これまでの議論に対して、そこまでうまく行く

はずがないと思う人も多いだろうが、

これまでの安倍氏の強運を考えると、あながち

荒唐無稽な話ではないと考えた方が良い気が

してくる。


 安倍総理の野望は、拙著『国家の暴走』

(2014年、角川新書)で指摘したとおり、

日本を平和国家から、米ロ中のような「列強国家」

に変えることだ。

そして、その列強のリーダーとして、軍事力を背景

に世界秩序に影響力を行使する。

それが夢なのではないか。


 その夢を果たすためには、憲法9条改正だけでは

全く足りない。

極東では中国の習近平、ロシアのプーチン、

北朝鮮の金正恩らが、国内での独裁体制を基盤に

して、国際社会に大きな影響力を行使している。

仲良しのトルコのエルドアン大統領も憲法改正して

権限を強化した。

一方の安倍総理は、国内では1強体制を築いたが、

北朝鮮問題一つとっても国際的舞台では蚊帳の

外だ。

とても、列強国のリーダーになったとは言えない。


 そうなるためには、緊急事態条項や基本的人権

の制限などのより踏み込んだ憲法改変が必要だ。

それを基にして、国民生活を犠牲にできる体制を

作り、軍事力を飛躍的に強化するには、さらに

10年単位の時間が必要になるだろう。

21年までの総裁任期を4選後の24年まで延ばして

も十分ではない。


 総裁4選規定の廃止の際には、

「初の改憲を実現し、オリンピックを成功させた総理」

としての実績をアピールして、一気に、多選禁止規定

そのものの廃止も議論される可能性がある。

終身総裁も視野に入れた規定になるかもしれない。


 もちろん、国内では持てる権力は無制限に行使し、

自民党はもとより、野党もマスコミも経団連も支配

して1強体制を強化する。

その先に見えるのは、終身制の独裁者、「皇帝」への

道だ。


 そんな恐ろしいことにならないうちに、

この野望を止めることができるのは誰なのか。


 そう自問しても、すぐには答えが見つからない。

 日本の民主主義は、本当に瀬戸際に立たされている。

(文/古賀茂明)


【転載終了】

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 今世界が「独裁体制」に進んでいますが、

何故、独裁化がトレンドなのでしょうか?


 ロシア、中国、トルコ、カンボジアなど

長期政権が独裁体制に変化しつつあります。


 そこに、日本も仲間入りするのでしょうか?


 益々、米国がコントロールしやすくなりますね。


 習近平やプーチンと同じですが、一つだけ

習近平やプーチンとの違いがあります。

それは、外交的影響力ですね。


LC=相棒's のじじ~放談!

時事関係や自動車関係などの記事を書いています。

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