増加する高齢者の生活保護、将来は100人中6人の シナリオも・・・
Business Journal
小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」
【転載開始】
■増加する高齢者の生活保護、将来は100人中6人の
シナリオも
少子高齢化や人口減少が急速に進む
なか、社会保障費の増加や恒常化する
財政赤字で日本財政は厳しい。
税や保険料等で賄う社会保障給付費
(医療・介護・年金等)は現在概ね
120兆円だが、内閣府等の推計(2040年を
見据えた社会保障の将来見通し)によると、
2018年度に対GDP比で21.5%であった
社会保障給付費(年金・医療・介護等)は、
医療費・介護費を中心に2040年度には
約24%に増加する。
現在のGDP(約550兆円)の感覚でいうと、
この2.5%ポイントの増加は約14兆円
(消費税換算で6%弱)に相当する。
また、財務省「我が国の財政に関する
長期推計(改訂版)」(2018年4月6日)では、
2020年度に約9%の医療・介護費(対GDP比)
は、2060年度に約14%に上昇する。
すなわち、40年間で医療費等は約5%ポイント
上昇し、この増加は現在のGDPの感覚で
約28兆円(消費税換算で約11%)にも相当
する。
だが、財政は表面的な問題であり、
問題の本質は別にある。
そのうちもっとも大きな問題のひとつは、
貧困高齢者の急増である。
たとえば、2015年で65歳以上の高齢者は
約3380万人いたが、そのうち2.9%の約97万人
が生活保護の受給者であった。
すなわち、100人の高齢者のうち3人が生活
保護を受ける貧困高齢者だ。
1996年では、約1900万人の高齢者のうち、
1.5%の約29万人しか生活保護を受給して
いなかったので、貧困高齢者は毎年3.5万人
の勢いで増え、20年間で約70万人も増加した
ことを意味する。
高齢者の貧困化が進んでいる背景には、
低年金・無年金が関係していることは明らか
だが、50歳代の約5割が年金未納であり、
今後も増加する可能性が高い。
■高リスクケースでは65歳以上の被保護人員が
200万人を突破
では、今後、貧困高齢者はどう推移するのか。
正確な予測は難しいため、一定の前提を置き、
簡易推計を行ってみよう。
まずひとつは「高リスクケース」である。
65歳以上高齢者の「保護率」(65歳以上人口
のうち生活保護の受給者が占める割合)は、
1996年の1.5%から2015年で2.9%に上昇して
おり、その上昇トレンドが今後も継続すると
いうケースである。
もうひとつのケースは「低リスクケース」で、
65歳以上高齢者の「保護率」が2015年の値と
変わらずに一定で推移するというケースである。
(2017年推計、出生中位・死亡中位)を利用し、
65歳以上の被保護人員(生活保護を受給する
高齢者)を予測したものが、以下の図表である。
低リスクケースでは、65歳以上の被保護人員
は、2015年の約97万人から2050年に約110万人
に微増するだけだが、高リスクケースでは2048年
に2倍超の200万人を突破し、2065年には215万人
にも急増する。
2065年の65歳以上人口は約3380万人である
から、215万人は6.4%で、100人の高齢者のうち
6人が生活保護を受けている状況を意味する。
では、生活保護費の総額はどう推移するか。
2017年度における生活保護費の総額は
約3.8兆円で、約214万人が生活保護を受給
している。
1人当たり平均の生活保護受給額(名目)が
一定で変わらないという前提の下、既述の
「高リスクケース」と「低リスクケース」で
生活保護費の総額を簡易推計したものに
ついても図表に描いている。
低リスクケースでは2025年頃までは概ね
4兆円弱であるものの、それ以降では緩やか
に減少し、2065年には2.9兆円になる。
だが、高リスクケースでは、2029年に5兆円を
突破し、2067年には6.7兆円にまで増加する。
貧困高齢者の問題がこれから深刻さを増す
のは明らかだが、現行の社会保障で本当に
対応することができるのか。
社会保障財政の持続可能性を高めるためには
安定財源が必要であることはいうまでもないが、
すでにさまざまな「綻び」が顕在化しつつある
なか、生活保護のあり方を含め、
「社会保障の新たな哲学」についても検討を
深める必要があろう。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)
【転載終了】
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将来のことなど全く考えていない安倍政権。
社会保障がどうなってしまうのか?
いま、安倍政権を支持する若い世代は老後
を悔やんだ時には、既に安倍晋三はいません。
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