中国包囲網はもう不可能・・・
田中栄の国際ニュース解説
【転載終了】
■中国包囲網はもう不可能
7月30日、米国のポンペオ国務長官が、
インド太平洋地域のインフラ整備やハイテク
産業振興などの事業に対して、米国が総額
1・1億ドルを投資する計画を発表した。
この延長で翌日、米国と日本、豪州の政府が、
インド太平洋地域のインフラ整備などの事業に
投資していくことで合意した。
米国が出す資金が「呼び水」となり、日本、豪州、
インド、東南アジアなど同盟諸国の政府や民間
からの資金がインド太平洋地域の事業に投資
されることを、米政府は期待している。
「インド太平洋」というキーワード(地域名)は、
以前の「アジア太平洋」に代わるものであり、
トランプ政権が昨年10月の訪日(アジア歴訪)
以来、「中国包囲網」の別名として使っている。
この地域では2013年以来、中国が「一帯一路」
の覇権戦略として、インフラ整備や産業振興の
ための投資を手がけている。ポンペオの宣言は、
米国が日本などの同盟諸国を率いて、
アジア太平洋地域で中国の一帯一路に対抗する
インフラ整備事業をやることにより、中国包囲網を
強化する戦略であると報じられている。
中国の一帯一路は70カ国に対し、合計1・3兆
ドルを投資する構想だ。
米国が出す1・1億ドルは、その千分の1にすぎ
ない。
同盟諸国、なかでも資金力が大きい日本の
官民が、ポンペオが発表した資金を呼び水と
して、米国の中国包囲網戦略に乗って、巨額資金
を出すことを求められている。
「インド太平洋」の戦略概念はもともと日本の
安倍首相が、前回首相だった07年に発案・
提唱した。米政府が「インド太平洋」を口にする
とき、それは言外に「日本は、米国に依存して
ばかりいないで、自ら率先して中国包囲網を
強化せよ」という日本への圧力が含まれている。
現実を見ると、日本や豪州の政府と民間が、
中国の一帯一路に対抗するかたちでインド
太平洋地域のインフラ整備に巨額の投資を
行う見通しはない。
インド太平洋地域のインフラ整備は、巨額で、
しかも政治経済のリスクがかなり高い。
日銀のQEによるゼロ金利が長引き、
薄利の経営体制が続く日本の金融機関が
投資したい分野ではない。
国際政治的に見て、インド太平洋地域は今後、
中国の影響力が拡大し、米国の影響力が低下
する傾向だ。
日本や豪州などの企業が、中国に対抗し、
米国の戦略に乗って巨額投資をするのは
「負け組」に賭けてしまうことであり、非常に
リスクが高い。
ポンペオが今回提唱した、インフラ投資を
使った米国主導の中国包囲網戦略は、
同盟諸国の政府と民間に対し「投資して中国
に対抗しよう」とけしかけるばかりで、事業が
失敗した場合の損失補填などの安全策が
あいまいだ。
対照的に、中国は、一帯一路のインフラ投資
事業をトップダウンの国策として展開し、
中国政府の一部である国有企業が事業を
手がけている。
事業として損失が出ても、中国の国際政治力
(覇権)を拡大するならかまわない。
損失を出せない米日豪の側と事情が全く異なる。
日豪などの企業が、インド太平洋地域の
インフラ整備を手がけるなら、中国敵視・安全策
なしの米国と一緒にやるより、中国にすり寄って
国有企業と一緒にやった方が事業的に危なくない。
インフラ整備は建設会社が受注するが、中国の
大手建設会社(国有企業群)は、13年からの
中国政府の一帯一路計画で、インド太平洋地域
やユーラシア内陸部の建設事業を多数受注し、
企業規模が急拡大している。
ENR(Engineering News-Record)によると、昨年、
自国外での受注額が大かった世界の建設会社
トップ5のすべてが、中国の国有建設会社だ
(似たような別のランキングでは、米国のベクテル
などの方が上位だが)。
中国の大手建設会社は、一帯一路・インド太平洋
地域でのインフラ整備工事に必要なノウハウや
設備を、かなり蓄積している。
政治的な敵味方を無視し、純粋事業的に考えると、
日豪米企業がこの地域でインフラ整備工事を受注
するなら、中国企業を敵視・無視して進めるのでなく、
中国企業も誘って一緒にやった方が良い。
ポンペオ提案のインフラ投資による中国包囲網戦略
は、ビジネスモデルとして非現実的だ。
日豪米企業は、米政府との政治関係を重視して
おつきあい程度に乗ることはあっても、それ以上の
本格的な事業参入をしないだろう。
【転載終了】
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なぜ、世界は協調しないで対立を選ぶのか?
まあ、大国エゴのぶつかり合いなのでしょうが。
対立で利益を得る輩が多いのでしょうね。
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