ポンペオの中国包囲網につきあいつつ中国に擦り寄る日本・・・
田中栄の国際ニュース解説
【転載開始】
■ポンペオの中国包囲網につきあいつつ中国に擦り寄る日本
日豪は民間だけでなく政府も、ポンペオの
中国包囲網戦略に、おつきあい程度
(米日豪で投資増加を合意したこと)以上に
乗ってきていない。
日本政府は表向きポンペオ提案に全面賛成
したが、その裏で中国にすり寄っている。
ポンペオ提案の3日後の8月2日、河野外相が
シンガポールでのASEAN拡大外相会談の
かたわらで中国の王毅外相と会談し、
アジア地域(=一帯一路、インド太平洋)の
インフラ整備事業などで日中の官民の協力体制
を強化することで合意した。
また、安倍首相が10月に中国を訪問し、
習近平主席が来年6月までに日本を訪問する
方向で、日中友好を進めることにした。
日本政府は、米国提案の中国包囲網策を支持
するようなそぶりをしつつ、実のところ中国を包囲
するどころか正反対に、中国に対し、仲良くしたい
と尻尾を振って擦り寄っている。
日本政府は、ポンペオ提案に沿ってインド太平洋
地域のインフラ整備に投資することを7月31日に
表明した時も、菅官房長官が「これは中国包囲網
でない。
それだけは強調しておきたい」と表明している。
日本政府は、中国包囲網策をやる気が全くない。
安倍政権は昨年春以来、中国を敵視するのを
やめている。
安倍首相は昨年6月、日本主導のTPP11(CPTPP)
と、中国主導の一帯一路を、隣接する敵対的な
経済圏にするのでなく、隣接して相互乗り入れする
経済圏にしたいと宣言した。
それより少し前、安倍政権は、日本のマスコミに
中国敵視の報道をやめるように指導している。
それ以来、日本政府は中国と仲良くしたい姿勢を
続けている。
今の安倍政権の構想は、9月に安倍と金正恩が
ウラジオストクでプーチン主催の東方経済フォーラム
のかたわらで日朝首脳会談を行い、
10月に安倍が北京を訪問し、日中首脳会談もしくは
日中韓の3か国首脳会談を実現し、来年6月の大阪
でのG20サミットに際して習近平に訪日してもらい、
日中関係、日本と東アジア諸国(南北中露)の関係を
改善しようとする流れだ。
中国包囲網は、安倍政権の脳裏からとっくに消え
ている。
日本人の処世術は「長いものにまかれろ」だ。
米国が強いなら対米従属、中国が強くなれば中国に
尻尾を振る。
20年前から中国と戦略関係を結べたのに、当時なら
日本がはるかに優勢だったのに、当時の日本は中国
敵視一色で、中国の台頭を予測する者どもを売国奴
扱い。
米国が弱くなり、中国の台頭が確定的になってから
無条件降伏的に尻尾を降り、和解に動き出す。
劣勢の日本は、中国にしてやられ放題。
先見の明など皆無。失策だったとすら認識されていない。
73年前の8月15日以来、何も学んでいない。
近年は国を挙げてどんどん退化し、国民の思考能力も
低下して、2流国に落ちつつある。
今では客観的に見て、日本人より中国人や韓国人の
方が優秀だ。すばらしき日本。
とはいえ、長いものに巻かれるのが好きなのは日本人
だけでない。
豪州の経済は、穀物や鉄鉱石の対中輸出で支えられて
いる。
豪州は、中国と対立できない。豪州も日本同様、
トランプ政権の中国包囲網策に、おつきあい程度にしか
乗れない。
インドも昨夏、ヒマラヤの山間部で中国との国境紛争を
やった後、一定の和解をしてから、中国との敵対関係を
しだいに解いている。
6月のシャングリラ対話で、モディ首相は「インド太平洋
の米印日豪の4極体制は中国包囲網でなく、中国と協力
するものだ」と演説して中国を喜ばせ、軍産を苛立たせた。
その後、モディは中国を訪問し、中印の和解が進んだ。
インドは、中国と対立するより、中国の一帯一路に協力
した方が得策と考えている。
インドは「インド太平洋」の戦略に、名前を貸しているだけ
の感じだ。
米国主導の中国包囲網は、年々機能しなくなっている。
中国自身、トランプ政権のインド太平洋戦略を、
中国包囲網策だと見なさなくなっている。
ポンペオが今回インド太平洋の投資戦略を発表した後、
中国共産党の機関紙である人民日報(英語版、環球時報)
は「米国主導のインド太平洋の戦略は、政治(地政学)的
にみると中国包囲網だが、経済(経済地理学)的に見ると、
米国側(米日豪)が中国の一帯一路戦略を補完・協力して
くれることを意味する。
だから、米国のインド太平洋戦略を、中国は歓迎する」と
いう趣旨の論文を載せている。
米国は「インド太平洋は自由で開放的だが、一帯一路は
独裁的で閉鎖的」と言うが、中国は「一帯一路も自由で
開放的なので、米中が目指しているのは同じものであり、
相互に補完的だ」と言っている。
日豪印の政府や企業が、中国の一帯一路に敵対する
のでなく協力したがっていることを、中国は見抜いている。
環球時報は8月6日、日本についても、足元を見透かす
論文を掲載している。
「日本は対米従属を続けたいが、トランプは日本の対米
輸出品に対する関税を引き上げようとしており、日本は
貿易面で米国を信用できなくなっている。
日本は、政治的に対米従属を続けながら、貿易面では
米国との関係に見切りをつけ、中国との関係を強化
せざるを得ない。
日本が中国包囲網に乗っても、トランプがそれを評価
して日本製品に高関税をかけないでくれるわけではない。
日本は、中国包囲網策に乗ると、米国と中国の両方の
市場を失う。
日本は、中国包囲網策に乗らないだろう」という趣旨だ。
中国は以前「米国は投資面の中国包囲網をやると
言っているが、カネを出したがらないトランプ政権の
姿勢からすると、米国は言っているだけでやらない
だろう」と分析していた。
この分析に対抗する形で、今回ポンペオが発表した
1・1億ドルのインド太平洋インフラ投資策が出てきた。
しかし、中国の1・3兆ドルのインフラ投資計画に比べ、
あまりにしょぼい。
日豪は「何だ。米国はそれしか出さないのか。
やっぱりトランプは覇権放棄屋だ」と、むしろ落胆させ
られた。
その全体を見ながら、中国は「いやいや、トランプは
素晴らしいです。これは、一帯一路に対する協力策
ですよ。日豪も、中国と協力するしかないです」と、
含み笑いしつつ論評している。
中国包囲網はもはや、軍産マスコミのプロパガンダの
中にしか残っていない。
トランプは、米国の覇権を放棄し、世界の覇権構造
を多極化にいざなうことを、就任以来やっている。
米国をTPPから離脱させ、残された日本や豪州が、
TPPを中国包囲の組織から、対中協調の組織に変質
せざるを得ないように仕向けた。
その延長として、インド太平洋の戦略が、中国包囲網
として機能しなくなっていることも、これまでのトランプ
の戦略の当然の結果だ。
トランプのインド太平洋の戦略は、安倍が昔作った
キーワードを焼き直すかたちで昨年9月に突然出て
きた時から、中国包囲網として失敗することを目的と
した策だったかもしれない。
今回のポンペオの提案も、日本が主導するTPP11が
来年発効する見通しが立った直後に出てきている。
【転載終了】
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やっと、「遠くの親戚より近くの他人」に目を
向け始めたのでしょうかね?
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