「労働分配率」に関心が集まっている・・・
MONEY VOICE
【転載開始】
この先も給料は増えない…。
絶望する日本人をさらに泣かせる
「労働分配率の低下」=斎藤満
利益を上げる企業、それを受け取れない国民。
この溝が日本を壊す
■「労働分配率」に関心が集まっている
安倍政権の5年余りの間に労働分配率が大きく
低下していますが、ここへきてこの問題への関心
が高まりつつあります。
企業業績が良くても、個人消費などを中心に国内
市場が弱く、物価が上がらない1つの要素になって
いる、との認識も広がりつつあるのです。
日銀の物価に関する特別リポートでも、
賃金や年金が増えないための将来不安に関心が
寄せられています。
■好調な企業業績と、それを実感できない消費者
各種アンケートの結果を見ると、個人や家計に
景気回復の実感が乏しく、日銀の生活実感を問う
アンケートでも「暮らし向きが苦しくなる」との回答
が多くなっています。
また内閣府の景気ウォッチャー調査でも、
家計関連の弱さが目立っています。
実際、GDP(国内総生産)は増えても、個人消費は
低迷が続いています。
その反面、日銀短観など、企業調査では景況の
改善が最近では頭打ちとなりつつも、プラスの水準
はバブル期以来の高さ。
企業の景況好調と、家計の回復の実感のなさが
対照的で、両者の間に大きなギャップが見られます。
■業績が上がっても給料が増えない…
そして、その大きな要因となっているのが
「労働分配率の低下」です。
財務省が3日に発表した4-6月期の「法人企業統計」
を見ても、企業の当期の経常利益が前年比17.9%増
となったのに対し、企業の人件費支払額は前年比3.8%
増にとどまっています。
両者の伸びに大きなギャップが見られます。
これは今期に限ったものではありません。
安倍政権となった初期の2013年4-6月期、
つまり今から5年前の同期と比べてみると、
企業の経常利益は5年前の15兆6千億円から今年は
26兆4千億円に69%も増えたのに対し、
人件費は5年前の41.2兆円から44.7兆円に8.5%増えた
にすぎません。
この結果、経常利益額に対する人件費の割合は、
5年前の2.6倍から足元では1.7倍に大きく低下してい
ます。
また企業の売り上げから売上原価を引いた簡便な
「付加価値」を計算し、これに対する人件費の割合を
労働分配率として計算すると、5年前の57.7%から足元
では54.1%に低下しています。
■所得の増加期待が後退
昭和40年代から50年代前半くらいまでは、
労働者の間に将来所得の確実な増加期待がありま
した。
少なくとも名目所得は年々増えていたので、
借金をして車や家を買っても、何年かすれば給料が
増えて借金は楽になるとの安心感がありました。
ところが、その後為替が円高になり、国際競争力の
維持から企業は人件費の抑制に注力するようになり、
ベアが後退しました。
さらに、その後は人件費の「変動費化」が進み、
正社員からパートなど非正規労働者にシフトし、
学卒から中途採用へのシフトも進み、旧来からの
「年功賃金制」が崩れました。
これも、将来の所得増加期待を奪い、同時に従来
心配なかったジョブ・セキュリティも脅かされることに
なりました。
首にならずとも、窓際や子会社への配属で、実質
賃下げもなされるようになりました。
■利子所得も消滅
賃金以外の収入でも、かつては年間30兆円以上
あった「利子所得」が90年代以降急速に縮小し、
近年ではマイナス金利、長期金利のゼロ金利設定
などで、金利収入がほぼ消滅しました。
1800兆円余りの個人金融資産の半分余りは預貯金
ですが、その金利が定期でも0.01%、普通預貯金では
0.001%に、そこから20%の税金がひかれるので、
一般家庭では利子所得ではコーヒー1杯を飲むことも
できなくなりました。
■年金所得の実質減少
退職した後も、年金収入が「マクロ・スライド」などに
より、実質減少しやすくなります。
全体の3分の1以上の世帯が年金受給世帯となりまし
たが、インフレになっても、物価スライドでカバーされず、
年金は物価上昇で実質減少する仕組みとなりました。
その年金制度が行き詰まりとなるために、受給年齢
の引き上げや、年金支払額の削減などが検討されて
います。
これから年金受給者となる人にとっては不安が高まり、
年金で暮らす世帯にとっては、将来の所得が確実に減る
ことがわかっているだけに、「長生きリスク」に備えた
「倹約」が必要になり、消費が抑制されます。
しかも、社会保険料負担が年々増加し、医療費の負担
割合も高まる方向となっています。
世帯主の年齢が50代の世帯で無貯蓄世帯が3割ある
といいます。
貯蓄がなく、年金がじり貧で、社会保険料負担、
医療費負担が高まる一方では、消費の拡大に期待する
ほうが無理というものです。
■所得の再分配機能が必要
米国ではトランプ大統領の大規模減税で、企業が
利益の一部を労働者に還元する動きが見られました。
しかし日本では、企業が好業績の下でも、積極的に
労働分配率を高めることはまず考えられません。
日本企業は業績悪化時に賃下げできない恐怖がある
だけに、不況時の労働分配率上昇を念頭に置いて、
平時から人件費の抑制に注力しています。
つまり、企業に任せていれば、不況期以外に労働
分配率を高めるインセンティブは働かず、景気好調
が続けば、それだけ労働者の取り分は小さくなり、
消費が増えず、企業の価格戦略を自ら制約すること
になります。
不況期になって労働分配率が高まっても、
これは企業収益悪化によって後ろ向きに高まるだけで、
人件費が高まるわけではありません。
■個人の負担を減らすしか道はない
そこで、労働分配率の是正、高齢者の将来不安を
軽減するうえでは、政治的な介入、所得の再分配
機能に期待するしかありません。
安倍政権はこれまで企業減税、個人増税を実施
してきましたが、これによる企業の利益は個人に
還元されず、企業の内部留保を高める(6月末で
447兆円)だけでした。
従って、政治的に所得の再分配をするなら、
企業から増税し、個人の税負担・社会保険負担を
軽減するしかありません。
また年金制度維持には、4割近い非正規労働者も
厚生年金の対象にすれば、企業の負担は高まるに
しても、個人の年金掛け金も増え、年金財政は楽に
なります。
医療保険でも、紹介料コストをかけてまで大病院に
かかる患者を制限するより、健康長寿につながる
指導(食材、運動など)、キャンペーンを通じて医療
コスト全体を減らすようにしたいものです。
これまで安倍政権は企業本位の政策に偏り、個人、
家計への配慮がなさ過ぎました。
選挙で投票するのは個人だということを忘れずに。
【転載終了】
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会社は企業防衛はするが、個人を守っては
くれませんからね~。
自分を守るのは自分しかないでしょう。
>世帯主の年齢が50代の世帯で無貯蓄世帯
が3割あるといいます。貯蓄がなく、年金が
じり貧で、社会保険料負担、医療費負担が
高まる一方・・・
貯蓄ができないのはいろいろ事情があると
思いますが、これでは70歳まで働かないと
老後の生活が成り立たないのでは。
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