サマータイム導入、報じられない安倍政権の 政治的意図。
小笠原泰「日本は大丈夫か」
【転載開始】
■サマータイム導入、報じられない安倍政権の
政治的意図
サマータイム導入の可否をめぐり
議論が盛り上がっている。
欧州では、9月12日にEUのユンケル
欧州委員長が、EU加盟国が一律に
採用しているサマータイム制度を
2019年に廃止する法案を欧州議会と
加盟国の理事会に正式提案した。
これを受けて、導入をゴリ押ししよう
と する自民党は翌13日、サマータイム
導入を前提とした議員連盟を、
導入を 前提としない研究会に格下げし、
法案提出の目標時期も今秋の臨時 国会
から先送りした。
ことの発端は、安倍晋三首相が8月7日、
東京オリンピック・パラリンピック競技
大会組織委員会委員長の森喜朗元首相 と
会談した際、サマータイム制度導入の
提案を受け、自民党に検討を指示した
ことだった。
以降、「健康に悪い」「残業が増える」
「EUでもサマータイム導入の見直しが
始まっているのに世界に逆行している」
と いった指摘が多数なされている。
本稿では、サマータイム導入の政治的
意図や、グローバル化する日本社会への
影響など多面的な観点から論点整理を
行ってみたい。
今回のサマータイム導入の論点を整理
すると、以下の6点になるのではないか。
・猛暑の夏に開催する東京五輪・パラリン
ピックへの対応 ・サマータイム導入の
政治的意図
・現行のサマータイム案 ・導入国からみた
日本におけるサマー タイム導入の必要性
・海外との関係で考えるサマータイム導入
・反対意見の論調
■猛暑の夏に開催する東京五輪・パラリンピック
への対応
今回のサマータイム導入議論は、2020年
の東京五輪が念頭にある。
酷暑の時期の開催なので、マラソンなど 屋外
競技をより涼しい時間帯に行おうと いう目的
である。
しかし、酷暑対策であるならば、坂村健
東洋大教授も指摘するように、単に競技 の
開催時間を早めれば良いだけである。
選手には前もって周知し、競技場への
アクセスとなる公共移動手段の始発を この
期間だけ早めれば済むことである。
つまり、東京五輪の酷暑対策として、
サマータイムという社会全体に大きな 影響
を与える制度を導入する意義は、 まったく
不明である。
■サマータイム導入の政治的意図
では、合理性のないサマータイム導入 が、
なぜ議論になっているのか。
それは、東京五輪を酷暑の夏季に開催 する
ことに対する海外での不評という 外圧を利用
してでも、サマータイムを 導入したいという
政治的意図があるから である。
これがサマータイム導入の一番大きな 理由で
あろう。
サマータイム導入はこれまで、1995年、
1999年、2005年、2011年の4回試みられ て
いたが、すべて法案提出は断念され、 失敗
に帰している。
この意味では、自民党にとっては、 サマー
タイム導入は悲願なのであろう。
実は日本でもサマータイムを導入して
いた時期がある。
敗戦後の占領統治時代の1948年~1951年
までの3年間、GHQ主導で導入していた。
夏時刻法という法律を制定し、標準時刻に
1時間を加えたタイムゾーンを採用し、 5月
の第1土曜日から9月の第2土曜日まで の期間
を夏時間としていた。
1952年の講和条約発効前に、この夏時刻 法
は廃止された。
諸説あるが、廃止の大きな理由は、当時の
日本では人口の大半は農業で生計を立て る
農家であり、太陽の動きに合わせて生活 を
してきた彼らは、夏時刻による1時間の 時間
変更に馴染めず不評であったという のが廃止
の最大の原因といわれている。
では、自民党が執着するサマータイムの
導入目的とはなんであろうか。
それは、省エネと経済効果であるようだ。
省エネに関しては、エアコンの利用が広がっ
た今、サマータイムを導入しても省エネ
どころ かエネルギー消費が増えるといわれ
ている ので説得力はない。
もう一つが、日没の時間が遅くなること に
よる経済効果である。
しかし、“飲み屋”での消費が大きい日本 では、
夜の時間の短縮は経済的にマイナス の効果を
もたらす。
明るい時間を長くすることで日中の消費 が
増えたとしても、当然、その分だけ夜 の時間
が短くなり夜の消費は減る。
時間当たりで日中消費のほうが夜の消費 より
もよほど大きくない限り、大幅な消費増 に
はならないであろう。
つまり、大きな経済効果は期待薄といえる。
しかし、経済成長がお題目の政治家に とって
重要なのは、「経済効果がある」と 主張すること
なのである。
政治家と官僚(特に経産省)が 「日本のGDPを
伸ばすには、その6割近くを 占める個人消費を
増やさなければならない、 それが我々の
ミッションである」と考えている のであろう。
不発に終わったプレミアムフライデーも、
この発想がベースにある。
経産省としてはあの手この手で個人消費 を
増やすのに必死であり、そこでサマー タイム
導入の議論に飛びついたといえよう。
経産省にとっては、「経済成長のために
矢継ぎ早に経済対策をしています」と国民
に見せることが重要なのであり、 その対策
が実際に経済効果をもたらすかは 彼らにとって
重要ではない。
実際、政策失敗の屍が累々であるが、
その責任を取ろうとは露ほども思っていない。
以上のように省エネと経済効果が不確かな
なかで、システムリスクと高い社会的コスト
を 伴うサマータイムを導入するのは説得性に
欠ける。
しかし、政治家は突き進むのである。
日本の政治家は、消費税の軽減税率といい、
合理性を欠き目先の人気取りのために将来
に禍根を残すことを平気で行うのである。
国民としては、そのような政治家に投票し
続けるのはもうやめるべきではないか。
■現行のサマータイム案
8月6日付産経新聞によると、現在、政府
と 与党で検討されているサマータイム案
では、 夏に時間を2時間繰り上げる夏時間を、
2019年と2020年に2年間限定で導入する
方向のようである。
そして繰り上げ期間として、
「最も暑い6~8月を軸に数カ月間だけ2時間
繰り上げる方向で検討に入った」とある。
もしこれが本当なら、政治家の発想を疑わ
ざるをえない。
まず、2時間繰り上げは、世界に類のない
異常な繰り上げである(例外として、連合国
占領下のドイツで1945年と1947年に2段階の
サマータイムを実施)。
医師でなくとも健康に悪いというのはわかる。
また、6~8月を軸に数カ月間というのも
合理 性がない。
欧米では、明るい時間帯を長くするために
サマータイムがあるので、約7カ月
(2018年 は3月25日から10月28日)、
北米では約8カ月 (3月11日から11月4日)
である。
実施国を見ている限り、数カ月ではサマー
タイム本来の意味がないと思われる。
さらに、2年間の限定導入というのも理解
でき ない。
もし、本当に2年間の限定導入というので
あれば、コンピュータのシステム改修の多大
なコストと手間とリスクをどう考えている
ので あろうか。
以上、サマータイムをめぐる議論の政治的
な文脈を総括したが、自民党が検討を進める
現行案は議論するに値しないといえる。
次回は、より本質的な意味での日本社会に
おけるサマータイムの必要性について考えて
みたい。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)
【転載終了】
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政権党の議員が何かやろうとしたら、
何某かの利権を疑ったほうがいいのか も
しれません。
というより、オリンピック自体が利権
ですからね。
今回の総裁選挙でもそうですが、一番の
無知層の自民党員は国民の利益を棄損して
いる政党をなぜ支持するのかということ
です。
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