「インボイスは消費増税の布石です」・・・
注目の人 直撃インタビュー
【転載開始】
■“レジェンド税理士”湖東京至氏がズバリ指摘
「インボイスは消費増税の布石です」
公開日:2023/11/06
湖東京至氏(C)日刊ゲンダイ
■湖東京至(税理士)
小規模事業者やフリーランスを苦しめる
インボイス制度の導入に54万筆の反対署名
が集まったものの岸田政権は全く「聞く耳」
を持たず、シレッと制度をスタートさせた。
それから1カ月が経過したが、現場からは
どんな声が上がっているのか、また今後、
何が起きるのか──。
税理士の立場で反対の声を上げ続けてきた
湖東京至さんに実態を語ってもらった。
◇ ◇ ◇
──年間売り上げが1000万円以下で消費税
の納付義務がなかった免税事業者は、インボ
イス制度開始で課税事業者への転換を迫られ
ています。課税事業者になってインボイス
(適格請求書)を発行しないと、取引先が
消費税の仕入れ税額控除をできなくなり、
仕事を打ち切られる恐れがあるからです。
いま、どんな声が上がっているのでしょうか。
税理士の仕事をしていて感じるのは、いま
なおインボイス制度を知らなかったり、課税
事業者への登録を迷っている人が多いという
ことです。
免税事業者の人から「うちは関係あるの?」
「どうしたらいいか分からない」といった
相談が来ています。
仕組みが複雑ですから理解できないのは当然
です。
丁寧に説明すると「そりゃヒドイ」と登録を
拒否する人もいます。
課税事業者は赤字でも消費税を納付しなけれ
ばならない。
年間売り上げが300万~400万円の事業者に
消費税を納めろというのは、やはり残酷です
よ。
■「2割特例」終了で大混乱
──課税事業者への登録は小規模事業者に
とっては苦しいですね。
課税事業者に転換した人にまず立ちはだか
るのは「申告」という実務です。
最初の3年間は「2割特例」が使えます。
年間売り上げの2%を納税すればOKというも
のです。
しかし、特例が終了した後は自分で納税額を
計算し、申告しなければなりません。
業種ごとに一定の仕入れ控除率が決まってい
る「簡易課税」が使えますが、これも簡単で
はありません。
税務署で相談しても、職員は「ネットで調べ
てくれ」とうるさがる傾向にある。
正確に申告できる人がどれだけいるのか。
混乱が広がると思います。
──申告だけでなく、納税のハードルも高い。
キチンと申告できても、納税できない事業者
が大勢出てくるはずです。
インボイス制度が始まる前から滞納騒動は起き
ていましたから。
税務署は特例が適用される3年間は大目に見る
でしょうが、終了後は厳しく取り立ててくると
思います。
赤字で滞納して、倒産する事業者が続出するで
しょう。
■価格転嫁でインフレ圧力
────般消費者も無関係ではいられません。
中には、下請けや取引先が免税事業者のまま
でいることを許す親会社もいます。
実際、「下請けがかわいそうだ」「うちは何と
か別の方法でやるよ」という出版社や建設会社
があるそうです。
寛容な姿勢ではありますが、そうした親会社が
どうするかというと、逆に得意先や消費者に
値上げを要求するしかなくなります。
一般消費者は無関係と思われるかもしれません
が、ジワジワと物価に影響が出てくるでしょう。
──売り手に買い手、消費者と、誰も得をし
ない制度です。一方、国が得る税収は巨額にな
ります。
政府は、制度導入による税収増額について
年間2480億円と試算しましたが、明らかに小さ
すぎます。
政府は免税から課税に転換する事業者を160万人
と見積もっていますが、実際はそんなものでは
ありません。
──フリーランスまで含めれば、その程度で
は済まないと。
日本最大級のクラウドソーシングサイト
「ランサーズ」の調査によると、フリーランス
で働いている人は全国で1500万人超です。
フリーランスと一口に言えど、実態は多岐に
わたる。
空いた時間に副業をしている会社員や俳優、
漫画家、自宅前に飲料の自動販売機を置いてい
る人も自営業者として扱われます。
こうした人たちが全て課税事業者になった場合
の国の税収増額は、私の試算では少なくとも
1兆円です。
──政府の試算とは全然違います。
確定申告していない人が大勢いることを、
財務省は把握しきれていないのでしょう。
それにしても160万人というのは少なすぎです。
税収増額を小さく見せるために、あえて少なく
見積もっているように見えます。
■潤う政府と大企業が結託
反対の声が続出(C)日刊ゲンダイ
──政府はインボイスの先に、消費増税を見据
えているのでしょうか。
今後、消費税率を欧州並みの20%に引き上げ
るための布石だとみています。
税率を上げても、インボイス制度がないと国際
社会から批判される恐れがある。
だから、いまのうちに制度を導入しておこう、
というのが政府の思惑でしょう。
──日本の消費税が、国際社会とどう関わるの
でしょう。
消費税は、輸出企業への事実上の補助金と
なっており、国際的な貿易摩擦を呼びかねないの
です。
日本では輸出売り上げに課税しない「ゼロ税率」
が適用されています。
「日本の消費税を外国の消費者から徴収できな
い」という理由からですが、このゼロ税率に
よって輸出企業は巨額の「輸出還付金」を国から
受け取っているのです。
還付を受けた企業の製品は廉価になり、不当な形
で価格競争力を持つことにつながる。
国際社会の批判を招かないようにするため、
仕入れ税額控除がいかにも正確に計算できるよう
に見えるインボイス制度を導入したというわけで
す。
──輸出企業はどれくらいの輸出還付金を受け
取っているのですか。
私の試算では、トヨタ自動車は2022年度に
約5000億円、日産自動車は1800億円、ホンダも
1800億円を受け取っている。
なぜ、このような状況になるかといえば、
ゼロ税率によって輸出売り上げに対する税額が
ゼロ円なのに、仕入れなどにかかった税額が
数千億円に上り、仕入れ税額控除をすることに
よって還付金が発生するのです。
仮の算式で示すと、
〈輸出売上高10兆円×0%〉+〈国内売上高4兆円
×10%〉-〈仕入れ額9兆円×10%〉=△5000億円。
マイナス分の5000億円が還付金として輸出企業に
入るのです。
──あまりに不公平感が強すぎです。
国税庁の発表によると、22年3月期の輸出還付金
の合計額は約6.7兆円。
これは22年度の消費税収約23兆円の4分の1ほど
に当たります。
皆さんが110円の飲み物を買って負担した消費税
分10円のうち、2.5円が輸出大企業に還付されて
いるイメージです。
消費税の税率が上がれば輸出還付金も増えます。
欧州並みに消費税を上げるためのインボイス制度
と、輸出還付金は表裏一体。
ある意味、政府と大企業は結託しているといえる
でしょう。
■日本のインボイス制度はニセモノ
──だから経済界から「消費増税」の声が上が
っているのですね。何とか、この流れを止められ
ないものでしょうか。
可能性はあるでしょう。そもそも日本のインボ
イス制度はニセモノです。
ポイントはいくつかあるのですが、最大の問題は
先ほどお話しした簡易課税です。
業種ごとに一定の仕入れ控除率が決められている
簡易課税は、適格請求書によって正確な仕入れ
税額控除ができるインボイス制度の趣旨と矛盾し
ている。
そのため欧州では簡易課税は次々に廃止されてい
ます。
日本の簡易課税も国際社会から批判を浴び、廃止
される恐れがあります。
──恥ずかしい話ではありますが、消費税は
潰れた方がいいかもしれません。
最も強烈な圧力をかけてきそうなのは米国です。
市場原理を重視する米国には輸出還付金の制度が
ありません。
日本が消費税率を上げれば輸出企業への還付金が
膨れ上がり、日本の製品は廉価になる。
まともな競争にならないわけですから米国は消費
増税が憎くて仕方ないのです。
実際、第2次安倍政権時に米国から圧力がかかり、
消費増税が頓挫したことがあります。
国内でも反対を強く訴え、インボイス制度と消費
増税の流れを止めなければなりません。
(聞き手=小幡元太/日刊ゲンダイ)
【転載終了】
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以前、還付金のことを書いたことがある
んですが、早速、輸出企業は海外で納税し
ているから還付金で儲けてなどいないと
コメントしてきた方がいました。
このような方は、保守系の関係者に多いの
で、議論するだけ無駄なので「なるほど」
と躱しておきました。
最近では、経済団体が消費増税を提言し
ていますね。
2.5円+αを目論んでいるのでしょうね。
他力本願が過ぎます。
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