メキシコの苦境は、日本にとっても他人事ではない!?
HARBOR BUSINESS online
【転載開始】
NAFTA再交渉で米国とほぼ「合意」した
メキシコの労働者や農民の苦境は、
対米貿易自由化に突き進む日本の未来の姿!?
※抜粋
■「メキシコ経済が成長しても、労働者の賃金は
上がっていない」
もう一軒、労働者のお宅を訪ねた。
7~8人の労働者やその妻たちが集まって
くれていて、労働現場や暮らしについて
の話を聞くことが できた。
家の間取りは最初にお邪魔した家とほぼ
同じだった。
家族は6人。その家の妻がこう言った。
「この家を見てください。これが人間
としての尊厳ある暮らしと言えますか?
工場は立派できれいだけれど、そこで
働く労働者の住まいはこれなん です」。
労働組合を作って解雇された夫がつけ
加えた。
「外国企業を招くにあたって、政府は
『労働者はおとなしくて労働運動は存在
しないし、ましてストなどしない』と、
(企業 にとって労働者対策がやりやすい
ことを) 保証した。だから国や企業の監視
が厳し く、労働者の権利侵害に反対しよう
とする動きを見つけると、すぐにその労働者
は企業から排除される。製品の輸出 伸びて
メキシコ経済が成長しても、賃金 は上がら
ず安いままだ」
それでもここで働き暮らしているのは
「ここでは仕事があるからだ」と言う。
集まってくれた労働者たちは、 全員メキシコ
南部の農村出身だった。親たちは郷里でトウモ
ロコシをつくって いるという。
「歳をとったら郷里に帰るのか」と聞くと、
全員「帰らない」と答えた。
「NAFTA以後はトウモロコシ価格が 低落し、
農業では生活できなくなって いる。帰っても
仕事がない」
食えなくなった村を離れ、あるものは アメリカ
に密入国して不法労働者となる。
あるものは国内の外国企業で、 低賃金で働く。
「これが“先進国”メキシコの現実です」と彼らは
言った。
■生活苦から、続々と国境を越えて米国を
目指すメキシコ人たち
メキシコの主食トウモロコシを中心とする農業
地帯、メキシコ中部高原地帯 を歩いた。
乾燥した傾斜地が続くグアナファト州
アルパセホ・エルアルド村。
主産業は農業。トウモロコシとレンズ マメを二毛作
で作っている。
まず度肝を抜かれたのは、町のメイン道路の
真ん中に置かれた 大きなセメント像。
険しい岩の道の頂上に男が立ち、 両手を高く
上げ、右手に札束を握りしめてなにやら叫んで
いるように見える。
下の方では赤ん坊を抱えた女が必死で 岩に取り
つき、横で男が支えている。
男はアメリカへの不法越境の案内人 だという。
「出稼ぎのモニュメントだ」とここに案内 して
くれた人が言った。
「誰がどういうつもりで建てたのか」と 聞いたが、
「知らない」と言う。
アメリカに渡って、ひと儲けした男。
それを追って、妻が子供を連れて案内人 に導か
れて国境を越える。
この岩の道は、アメリカへの越境を妨げる
リオ・グランデの渓谷かもしれない。
この地域を訪ねたのは、農村女性たち による
小さな仕事づくりのネットワークが あると聞い
たからだ。
パン屋、薬草づくり、トウモロコシの粉で作る
薄焼きのメキシコパンである トルティーヤ製造
などを、いくつもの女性グループや個人が手掛け
ている。
一体なぜ、女性たちはそんなに懸命に 仕事
づくりに取り組むのか。
リーダーの1人、ロレナさんという40歳の 女性が、
「NAFTA加盟後、アメリカに出稼ぎに行く 男たち
が急速に増えたことが背景にある」 と答えてくれた。
■NAFTAの影響でメキシコは食料主権を失い、
超赤字国となった
自由貿易協定でアメリカから安い トウモロコシ
が流入し、メキシコの農民 が作るトウモロコシ
価格が低落した。
2011年、筆者はTPP(環太平洋経済連携 協定)
に反対する農民・市民グループ
「TPPに反対する人々の運動」の主催する イベント
で、メキシコの労働運動活動家を 招へいしたことが
ある。
メキシコ通信労組に所属するマリー・カルメン さん
は次のような話をした。
「1994年にNAFTA合意署名がされた後、 農業、
製造業、繊維、通信サ-ビス、輸出 などさまざまな
異なる分野の労働者が その影響を被った」
「その結果、メキシコでは移民労働からの 送金が
何千もの家族を支える収入源となって いる」
「食料主権も失った。最初の7年間でメキシコ は
食料輸入国となった。年を経る中で、 以前5億8100万
ドルの食料黒字国から 21億8100万ドルの超赤字国と
なってしまった。 1987~1993年の輸入は5200万トン
だったのが、 NAFTA加入後1994~1999年では9000万
トン の輸入となった。打撃を受けたのは45%も 農産
物価格が下がった1800万人の農家だ」
ロレナさんの話に戻る。
この村にもNAFTAの影響が襲った。
農案物の価格が大きく下がり、地元の 農産物を買い
取って加工していた地元 工場も潰れてしまった。
彼女の夫と息子も、アメリカに出稼ぎに 出た。
残された女たちは精神的に不安定に なり、
家に閉じこもりがちになっている という。
この村の世帯数は約300戸。
その9割の家庭で、家族の誰かがアメリカ に
出稼ぎに行っている。
その結果、村の人口の7割が女性という 極端に
不均衡な構成になってしまった。
しかも出稼ぎに行った男たちのうち、 合法的に
国境を越えたものは3割しか いない。
残る7割は危険を冒しての非合法移民 だという。
女性グループのネットワークのセンター になって
いる小さな建物の一角には コンピューターを
教えるスペースがあった。
国境を越えて出稼ぎに行った夫や息子 とメールで
連絡を取り合えるように、 トレーニングをする
ためだ。
彼女もフェイスブックのアカウントを持って いる。
■メキシコの苦境は、日本にとっても
他人事ではない!?
ロレナさんは「ぜひ見でほしい」と村の はずれ
に案内してくれた。
それは、朽ちかけた工場の跡だった。
「ここを見ればNAFTAで何が起こったか がすぐ
わかります」
その工場は、この地域の特産だった レンズ豆の
パッケージ工場だった。
かつて、男女合わせて30人以上の村人 がここで
働いていた。
NAFTA締結の後、農産物価格の下落で レンズ豆の
価格も低落、間もなく工場は つぶれた。
機械類は持ち出され、作業場は空っぽ になり、
事務室だったところには黄色く 変色した帳簿や
伝票類が散乱していた。
「ここへ来ると悲しくなります」
ロレナさん自身も昼はこの工場で働き、
夜はやはり村内にあったパン工場で働い ていた。
そのパン工場も都市部から進出してきた 大工場の
あおりを受けて倒産した。
メキシコの主食はトウモロコシの粉で つくる
トルティーヤという薄焼のパンで、手作りの
トルティーヤを売る小さな店が 村には何軒も
あったが、それもみんな 潰れてしまった。
すべて、地元の女たちが細々と、しかしのんびり、
楽しくやっていた小商い だった。
材料のトウモロコシもまた、地元の農家が 作る
ものだった。
NAFTA再交渉の結果、メキシコ国内の 雇用も農業
を基盤とする地域経済もは いっそう苦境に陥ること
は容易に想像が つく。
一方、これから米国との二国間本格協議 が始まる日本。
11月の中間選挙を控えたトランプ大統領は、
自動車や農産物で容赦なく日本の譲歩を 迫ることは
明らかだ。
自動車では輸出規制が迫られる。
農産物では牛肉、豚肉の関税大幅引き 下げとコメ輸入
特別枠の拡大が焦点となる。
いずれも、国内の雇用と農村を直撃する。
メキシコの労働者や農民の状態は、
日本にとっても他人事ではない。
<取材・文・撮影/大野和興>
【転載終了】
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日本政府は、FTAの不都合をTAGと
言い換えてごまかしています。
世界でFTAをTAGなどと言い換える 国
はありません。
TAGはFTAの中の項目の一つに すぎない
からです。
そんなことを信じていたら、世界から 笑われ
ます。
いずれにしろ、メキシコはじめ、韓国など 米国
とFTAを締結した国は苦しんでいる のが
現実です。
いつもは単独で貼り付けますが、
今回はいい関連性があるので、
ここに貼り付けます。
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