日本経済、永守会長ですら見誤るほどの未知なる変化!
Business Journal
【転載開始】
■日本電産、成長神話に陰りか・・・
日本経済、永守会長ですら見誤る
ほどの未知なる変化 2019.02.12
世界経済の尋常ではない変化が、
日本電産の業績を直撃した。
特に、中国経済の減速の影響は
大きい。
中国では個人消費が落ち込んで
いる。
背景には、中国政府の政策の効果
が表れづらくなっていることや、
米中の貿易戦争の影響がある。
そのため、日本電産は2019年3月期
の業績予想の下方修正を余儀なく
された。
一方、国内の株式市場では、
業績予想の下方修正を好感する
関係者が少なくない。
その理由は、リーマンショック後
などに日本電産が下方修正を発表
したのち、同社の業績が反転した
からだ。
日本電産は保守的な見通しを出す
ことでも知られている。
「日本電産が業績悪化に言及した
ということは、市況反転の兆しか」
と、先行きへの楽観姿勢を強める
投資家もいる。
1月18日、21日の同社株価の反発
の背景にはそうした憶測があった。
この見方に根拠があるか、
冷静に考えなければならない。
なぜなら、過去と現在の状況は
大きく異なる。
過去こうなったから、今回もそれが
当てはまるとは、一概にいえない。
先行きは、各国の政治動向などを
基に考えることも必要だ。
2019年前半頃までは、衆参同日選
の可能性や消費税率引き上げを
控えた政策期待から、国内の株価
が上昇基調で推移する可能性はある。
しかし、年後半、米国経済の減速の
鮮明化など、海外経済のリスクが
顕在化する可能性がある。
「尋常ではない変化」との表現を
用いた永守重信会長の真意は、
慎重かつ客観的に考えるべきだ。
■景気変化の影響を受けやすい
日本電産
日本電産は、パソコンのハード
ディスクドライブ(HDD)用の精密
小型モーター分野を中心に成長を
遂げてきた。
HDD用モーター分野で同社のシェア
は世界トップである。
日本電産はモーターの小型化に取り
組み、薄型ノートパソコンの普及と
ともに需要を取り込んできた。
2007年度末の時点で、事業区分別売上
構成の50%超が精密小型モーター事業
だった。
リーマンショック後、
世界のエレクトロニクス市場では、
スマートフォンをはじめタブレット型
デバイスが普及した。
また、新興国での家電需要も高まった。
それに加え、世界最大の自動車市場で
ある中国では、大気汚染 対策のために
電気自動車(EV)などの普及が重視
されている。
中国では工場の自動化
(FA、ファクトリー・オートメーション)
のためにロボット需要も高まってきた。
ロボットの駆動にも多くのモーター が
必要とされる。
この変化を受けて、日本電産は車載
および家電・商業・ 産業用のモーター事業
を重点事業に定め、小型モーターの開発で
蓄積してきたテクノロジーやノウハウの応用
を進めてきた。
2017年度決算では、売り上げの35%を家電・
商業・産業用モーター事業が占め、
精密小型モーター事業の割合は 30%に低下
した。
また、車載関連事業が売り上げに占める割合
は20%程度にまで上昇している。
今後の成長戦略として日本電産が重視する
のが、自動車のEV化 への対応だ。
同社は2020年度の連結売上高を2兆円に押し
上げようとしている。
計画では、7000億円~1兆円程度の売り上げ
を車載分野で確保することが目指されている。
具体的には、EVやPHVに使われる駆動システム
(トラクションモーター)、 パワーステアリング
やブレーキ用 モーターなどの供給能力の向上が
重視されている。
■尋常ではない景気変化の本質
このように、日本電産は世界経済の環境の
変化に、 自社の収益構造を適応させてきた。
それがうまく進んだため、同社の売り上げは
拡大してきたのである。
特に重要なのが、米国と中国を中心にIT先端
分野での技術・商品 ・サービスの開発が進ん
だことだ。
IT先端分野は、今後の世界経済を支える成長
の源泉としても注目 を集めている。
一転して、永守氏は
「尋常ではない変化が起きた」という表現で、
急速に事業環境が悪化しているとの認識を
示した。
この表現には、かなりの危機感がある。
背景には、これまでの世界経済の成長と
安定を支えてきたIT先端分野での
イノベーションが停滞し始めているとの
認識があるの だろう。
永守氏は工場の統廃合などへの 注力にも
言及した。
その背景には、今は守りを固めなければ
ならないという認識があるはずだ。
特に、中国経済からの影響は大きい。
2017年末ごろまで中国経済は米国経済
と共に世界経済を支えてきた。
しかし、足許では減速が鮮明だ
(GDP成長率が低下している)。
2018年、中国では経済を支えてきた固定資産
への投資が減少した。
その上、米中貿易戦争への懸念や景気悪化の
影響から個人消費が落ち込み、景況感が
弱含んでいる。
中国企業は先行きへの警戒心を強め、設備投資
を抑制している。
この結果、昨年11月、中国における日本電産の
生産台数は、 前年同月比30%も減少した。
足許の世界経済を支えている 米国経済は、
緩やかな回復基調を維持している。
2019年の前半は緩やかな景気回復が続く
可能性はある。
ただ、過去の景気循環や、スマートフォン
の売れ行き不振を考えると、年後半以降は
米国経済の減速が鮮明化する可能性がある。
その展開が現実のものとなれば、
これまで以上に世界のIoT投資や自動車販売
にはブレーキがかかるはずだ。
■過去の経験が当てはまるとは
限らない
2018年後半、日本電産の株価は貿易戦争
などへの懸念におされて 下落した。
1月17日、永守氏が業績予想を下方修正した
のち、同社の株価は反発した。
理由は、悪材料の出尽くし期待から同社株の
反発を期待した投資家の買い注文があった
からだ。
過去、業績見通しが下方修正された後に
日本電産の株価は反発してきた。
永守氏の経営手腕、保守的な業績見通し
などを理由に、今回も同社の業績が底を
打つタイミングは近いと期待する市場参加者
は少なくない。
この考えは早計だ。
まず、経済の環境が違う。
これまで日本電産が業績予想を下方修正した
環境は、世界全体の景気が 底を打ってから
あまり時間が経過していなかった。
それに比べ、足許の世界経済は、循環上の
ピークに近づいている可能性がある。
政治リスクも高まっている。
政治の動向は議会の意思決定や投票の結果を
見なければわからない。
特に、米国は中国によるIT知的財産の侵害が
国家の安全保障の問題であると考えている。
この見解は、共和党にも民主党にもみられる。
米国の対中強硬姿勢はさらに強まる可能性が
ある。
そのなかで、政治実務経験のないトランプ
大統領が事態を収拾できるとも考えづらい。
長い目で見ると、米中の対立は激化する恐れ
がある。
このなかで日本電産の業績に関する悪材料
が出尽くし、株価が上昇基調で推移すると
考えるためには、かなりの成長期待が必要だ。
その期待を正当化できるか否かを、わたしたち
は 冷静に考える必要がある。
中国政府が景気対策を強化してきたにも
かかわらず成長率が低下していること、
米中貿易戦争の 先行きなどを考えると、
世界的にみて企業の設備投資や新商品開発
が従来以上のモメンタム(勢い)で拡大
するとは言いづらい。
日本電産の創業以来、トップを 務めてきた
経営者が「尋常では ない」と表現するほど
の世界経済の変化の影響は、冷静に考えた
ほうが良いだろう。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)
【転載終了】
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これ以上、米中貿易戦争が長引くと
中国観光客のインパウンド需要に影響
が出そうですね。
経済音痴の安倍政権では不安ですね。
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