日本企業は、米中貿易戦争の影響を楽観視しすぎている・・・
Business Journal
【転載開始】
■日本企業は、米中貿易戦争の影響を
楽観視しすぎている・・・
村田製作所の株価下落は危険なサイン
2019.06.27
文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
5月に入り村田製作所の株価が
大きく下がっている。
株価下落の背景には、米国と中国
の摩擦が一段と激化していること
がある。
同社の売上の90%超が海外向けだ。
特に、売上に占める中華圏の割合は
50%程度と高い。
同社の株価は海外経済の動向に敏感だ。
すでに国内株式市場の売買の70%を
外国人投資家が占めている。
技術以外の要素が同社の経営に大きく
影響することは冷静に考えなければ
ならない。
すでに同社は業績予想を下方修正
した。
2019年度の会社計画では減益が予想
されている。
ただ、計画の前提条件を見ると、
実績が計画を下回る可能性は否定でき
ない。
一方、国内の株式市場参加者の多くが、
会社計画は慎重すぎると考えている。
その理由は、同社の技術力が高く、
競争力があると考えられているからだ。
貿易戦争が熾烈化しても同社の競争
優位性は揺るがないとの楽観が多い。
技術力は企業の成長にとって重要だ。
しかし、それだけが企業の成長を支え
るのではない。
米中の摩擦は一段と激化する可能性が
ある。
その場合、村田製作所の重要顧客で
ある中国や米国企業の業績は想定以上
に悪化する恐れがある。
そうなると、競争力があったとしても
需要の落ち込みに対応することは難しい
だろう。
■米中貿易戦争は村田製作所の経営
圧迫要因
米中の貿易戦争には、企業の自助
努力では対応が難しい部分がある。
特に、村田製作所は部品を手掛けて
いる。
同社の海外売上比率も高い。
自助努力でコストの削減などを徹底
したとしても、世界的なサプライ
チェーンの混乱や取引先企業の経営
の変化に対応することは、口で言う
ほど容易なことではない。
米中摩擦が村田製作所の経営に
与える影響を考える際、貿易戦争は
2つに分けて考えるとわかりやすい。
一つ目は、米トランプ政権による
対中貿易赤字の削減だ。
トランプ大統領は米国の農業や鉄鋼業
などの復興を目指し、中国との貿易
赤字を削減したい。
中国は米国からの制裁関税の引き上げ
に直面しつつも、米国産の大豆を購入
するなどして相応の配慮を示してきた。
この問題自体は、村田製作所に直接
大きな影響を与えないだろう。
もう一つ、米中貿易戦争には覇権国
争いという側面がある。
これは村田製作所にとって無視できない
リスク要因だ。
米国は、世界の政治、経済、安全保障
の基軸国家としての役割を維持したい。
中国は自国の規格に基づいた5GやIoT
(モノのインターネット)の技術を
確立し、国内だけでなくアジア太平洋
地域などに浸透させたい。
それは、中国が各国政府、企業などの
データを入手し覇権を強化することに
つながる。
つまり、IT先端分野は米中が覇権を
争うフロントラインだ。
米国はGAFA(グーグル、アップル、
フェイスブック、アマゾン)を中心と
する自国のIT先端企業を中心に、
競争力を維持、強化したい。
中国はBATH(バイドゥ、アリババ、
テンセント、ファーウェイ)を中心に
米国を上回る競争力を実現し、覇権を
強化したい。
米中がボタンのかけ違いから本当に
互いを傷つけあう制裁の応酬に突き
進むと、村田製作所の取引先企業の
経営は急速に悪化するだろう。
■先行を楽観視する市場参加者
過去、村田製作所はアップルの
iPhone向けの部品供給に注力し、
成長を遂げた。
昨年、iPhoneの販売台数が減少に
転じ、村田製作所の業績拡大には
ブレーキがかかった。
18年度の後半に入ると、中国経済
の減速が重なり、同社の受注が
急速かつ大幅に減少した。
19年度に関して、経営陣は慎重な
計画を立てている。
受注が落ち込むなか、村田製作所
は電子部品の価格を引き上げること
により年度通期ベースで増益を確保
した。
これは、同社の技術力の高さを世界
に示した。
自動車の電動化などに伴い、車載
分野でも同社の積層セラミック
コンデンサーへの需要が高まっている。
言い換えれば、村田製作所なくして、
テクノロジーの高度化は難しい。
昨年後半、中国経済が減速し、
多くの企業が業績を下方修正した。
事業環境が悪化するなかで価格引き上げ
によって収益を確保した 村田製作所の
経営判断は、市場参加者 から非常に高く
評価された。
同社が技術力を高め、高付加価値の部品
を提供して成長してきたことは事実だ。
過去を理由に、同社の先行きを楽観する
市場参加者が多い。
それに加え、5G通信が実用化される
ことも、同社への楽観を支えている。
通信アンテナ部品など5G向け部品でも
競争力が高い。
ファーウェイなど中国の企業に部品を
供給し、5G需要を取り込むことを目指
してきた。
年内に世界各国で5G通信が始まること
を控え、世界各国で“5G特需”が起きると
期待する市場参加者も多い。
5Gが使われ始めれば、従来よりもはるか
に速い速度で大量のデータや情報を送受信
できる。
それは、ビッグデータの収集や分析を
加速化させ、企業の生産現場などに加え、
家庭版のIoTの普及にもつながるだろう。
村田製作所が技術力をよりどころにして
そうした需要を取り込み、会社計画以上
の成長を実現するとの期待は根強い。
【転載終了】
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端末価格がネックになると思い
ますが、キャリアがどれだけ補助
できるか、かな~?
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