元日銀参事があぶりだす「黒田バズーカ」の本質!

 日刊ゲンダイDIGITAL

 注目の人 直撃インタビュー 


 【転載開始】


 ■元日銀参事・岩村充氏があぶりだす 

 「黒田バズーカ」の本質 

 公開日:2020/05/07  


 2013年4月に始まった日銀の異次元 

金融緩和。 

丸7年、吹かし続け、27日、国債買い入れ 

上限撤廃というさらなる追加緩和が決まった。 

だが、黒田バズーカは、本当に経済成長をも 

たらしたのか。 

長期の緩和やゼロ金利によって、誰が得を 

して誰が損をしたのか――。 

元日銀マンが本質をあぶりだす。  


 ◇  ◇  ◇ 


  ――異次元金融緩和から7年が経過しました。 

どう評価されますか。 


 「現金を出すぞ」と言ったら、景気は良く なる

というシナリオのもとに動いてみたが、 まったく

結果を出せなかったということで しょう。中央銀行

が貨幣量を増やすぐらい では人の心は変わらなかっ

た。マーケット の方が賢かったということです。

「黒田緩和」 の問題は、うまくいかなかった時に

どう戻る かを考えずに、ひたすら突っ走ったという 

ところに尽きます。もっとも、コロナで当面、 戻る

必要はなくなり、黒田緩和の是非を問う 意味もなく

なってしまった感じですが。


 ■中央銀行は経済成長のエンジンにはなれない 


  ――金融政策の限界を実証した。  


 金融政策とは、金利ゼロの中央銀行券と そこそこ

金利がある国債を交換することだ と言えます。です

から、どちらもゼロに なったら金融政策は効きませ

ん。そもそも、 経済を成長させるための金融政策と

いう 考え方が間違いなのです。経済成長のエン ジン

は人口増とか技術進歩などの経済の 基本条件から生

まれてくるもの。金融政策は アクセルやブレーキ役

はできても、成長の エンジンそのものではありま

せん。中央銀行 が経済を背負っていると考えるのは

思い上が りの一種です。


  ――日本だけでなく、米国、欧州の中央銀行も 

ずっと低金利政策や金融緩和を続け、経済成長を 

導こうとしてきています。  


 19世紀後半から20世紀は世界的にまれに 見る

経済成長の時代でした。私的所有権が確立 され、

技術進歩にも画期的なものがあった。 その中で国民

国家、民主主義、中央銀行、株式 会社などの「仕掛

け」が世界標準になったので す。今、経済成長が頭

打ちになり、そこで機能 する新しい仕掛けが見つか

らないなかで、中央 銀行と政府の区別がつかなく

なっています。 中央銀行と政府の役割分担は、19

世紀後半か ら20世紀の成長の時代に作り上げた

「二分法」 ですから、成長が止まったら溶けてし

まうのは 仕方がない気がします。


  ――今後も20世紀のように経済成長が続くわけ 

ではないと。 


 続かないでしょう。経済成長が当然だと思うと、

 皆の期待ほど経済成長していないと、政府は何と 

か成長を加速しなければと考える。そこで、中央 

銀行が低金利政策、金融緩和を続けることになる 

のです。


  ――低金利政策の長期化で何が起こりましたか。 


 株式投資とそれ以外の資金運用の間で大きな格差 

が生じてしまいました。金利が下がると、企業は 

借金や社債など資金調達の利払いが抑えられ、株主 

への配当をどんどん厚くします。経済成長がゼロ、 

うまくいっても2%の時代に、株主資本に対する 

当期純利益の割合を示すROE(自己資本利益率) 

について「8%が国際標準だ」という話が大手を 

振って通るんですから呆れた話です。企業は必死に 

株主優遇競争を展開し、それを国家と中央銀行が 

全力で後押しするというのが今の世界なのです。 

そのしわ寄せを受けるのが、一般の預金者なのです。


  ――株式投資をできる人と普通の預金者の格差で 

すね。  


 黒田総裁もパウエルFRB議長も格差を拡大させ 

ようと思って、金融政策をやっているわけではない 

でしょう。しかし、金融政策自体が富の分配でもあ 

ることに気をとめないようでは専門家失格です。 

成長エンジンが失われている状況で、ともかく経済 

成長しようという金融政策が結果として格差をつく 

っているからです。無理な金融緩和で格差づくりに 

関与してしまったという点では、責任は黒田総裁だ 

けでなく、白川方明前総裁やその前任者の福井俊彦 

元総裁も同じなのですが、白川や福井は、今は低い 

金利に抑えるけれどもいずれ取り返すよという考え 

だったと思います。しかし、黒田総裁には、いずれ 

巻き戻すという考えはないようです。だから、ずっ 

格差が拡大するし、それを他人事のように言える 

のですね。


 ■消費税の本質は労働課税 


  ――グローバル化による格差拡大もありますね。


  背景にあるのは国家間の企業呼び込み競争です。

 富裕層や法人を優遇しないと、国外に逃げられて 

国が空っぽになるという恐怖をどこの国の政府も 

抱いています。だから、所得税の最高税率や法人 

税を劇的に下げてきました。その減収分を補うの 

が消費税ですが、消費税の本質は労働課税なので

す。 


  ――といいますと。 


 法人税は、売り上げから物的な仕入れと人件費 

を差し引いた残余に課します。消費税は、売り上げ 

から物的な仕入れを引いた残余が課税対象です。 

人件費は差し引かれません。ですから、国の税収 

の軸足を法人税から消費税に移すということは、 

税負担を株主から従業員に移すことを意味するこ と

になります。労働者の犠牲のもとに、法人や株主 

を優遇しているわけです。このままでは、格差は 

ますます拡大するでしょう。


  ――低金利政策と税制で労働者など中間層は痛め 

つけられている。中間層が決起してもおかしくない 

状況です。 


 中間層はバラバラな方向に向かっています。ひと 

つは、富裕層により多くの負担を求めるという方向 

です。米国型リベラリズムや社会民主主義にはそう 

いう面があります。米国のサンダースの支持者は 

そういう意識なのでしょう。 


 ――ただ、最近はどこの先進国もリベラル勢力や 

社会民主主義はパッとしません。  


 そこで受け皿になってしまうのがポピュリズム 

です。自分が豊かになれない理由を、自分たちで 

ない誰かのせいにしようとするのですね。あれだけ 

おかしなことをやりながらトランプ政権の支持基盤 

が固い理由や、欧州のネオナチや反イスラムの台頭 

にも同じ背景があると思います。 


  ――コロナ禍は世界をどう変えると思いますか。 


  グローバル化には一定のブレーキがかかるで 

しょう。コロナの脅威がある間はそうでしょうし、

 今のコロナウイルスに対するワクチンが作り出せ 

ても、別の新種ウイルスが大流行する可能性は 

消えません。そうした観点からグローバリズムに 

リスクがあると考える人が増えてくれば、能天気 

とも言えそうな国家間の企業呼び込み競争やサプ 

ライチェーンのグローバル化に慎重にならざる 

を得なくなるはずです。


 ■自由の劣化が進む中、コロナ禍が襲った 


 ――新型コロナが終息した後は、どんな国家間 

競争が起きると予想されますか。  


 今回の経験を経て、国家はより強く、市民や

 国民を監視してコントロールする方向に向かう 

可能性があります。欧米型の自由主義体制では 

なくて中国型の政治体制への誘惑が強まってし 

まうのです。医療産業を国家安全保障の文脈で 

守ろうとする動きなどには、国際緊張を増し、 

軍拡競争に転化していく危険すらもあります。 


  ――自由が制約される強権的な体制を国民は受け

入れるのでしょうか。  


 残念ながら受け入れる土壌はできつつありま す。

責任の一端は、サッチャーやレーガン以来 の新自由

主義にもあります。19世紀型国民 国家の理念に

なった自由とは、血と涙で守るも のでした。明治

時代の自由民権運動で「板垣 死すとも自由は死な

ず」というのがありました が、そこでの自由とは

命をかけて守るものなの です。ところが、新自由

主義における自由とは 要するに規制緩和で、つま

り自由は儲けるため の道具におとしめられてしま

ったのですね。 自由を守ろうとする気概も勇気も

劣化してしま っているのです。コロナウイルス

封じ込めの ためには何が何でも外出を取り締まる

べきだと か、個人行動履歴もどんどん追跡すべき

だとい う議論には怖さを感じます。症状のある人

を 治療するための検査は重要ですが、疑わしい人

 を隔離して自分は安全に暮らすための検査拡充論 

として主張されるとしたら僕は反対です。自由とは、

そんなに安っぽいものではありません。 コロナ禍

で、自由や人権に対する私たちの根性、 据わり方

が試されているのです。僕だって感染 の不安がな

いわけではないけれど、ここで譲って しまったら

おしまいだろうなという気がするん です。 


 (聞き手=生田修平/日刊ゲンダイ) 


 【転載終了】

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 結論から言えば、黒田バズーカは 

失敗し、さらに深みにはまっていく 

ということでしょうか?  


 「異次元の金融緩和」を深堀して 

いってますから。  


 日本は、アメリカのように、更に 

貧富の格差が広がっていくということ 

でしょうかね。 


  まあ、根っこは「アベノミクス」で 

すね。  


 安倍政権支持者が、安倍政権を7年も 

つづけさせ、日本の経済崩壊の共犯者 

ということになりますかね。 


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