バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ
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【転載開始】
■バッハ会長らの日本侮辱発言の裏に習近平との緊密さ
2021年5月26日
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
IOCのバッハ会長が東京五輪断行を
無理強いする背景の一つに北京冬季五輪
への配慮があるのは明白だが、
習近平とバッハ会長との関係の濃さが
一連の日本侮辱発言につながっている
ことを考察する。
■IOCバッハ会長とコーツ副会長の
日本侮蔑発言に国民の怒り爆発
5月19日、国際オリンピック委員会
(IOC)のバッハ会長は東京オリンピック
・パラリンピック(以下、東京五輪と略称)
の調整委員会とのリモート会議で、
「大会が可能になるのは日本人がユニーク
な粘り強さと逆境に耐え抜く能力をもって
いるからだ。その美徳に感謝したい」と
精神論をぶちまけた。
そもそもこの発言からして「美徳に感謝」
とは言っているものの、反射的に
「欲しがりません、勝つまでは」という
戦時中に強いられた忍耐力と、
「お国のためなら、この命まで捧げる」
特攻隊精神を想起させて、なぜ私たち日本人
は「コロナ禍でも東京五輪を開催する」と
いう「逆境に耐え抜く能力」を発揮しなけれ
ばならないのかと、腹立たしい気持ちを惹起
された日本国民は少なくないだろう。
これを聞いて「褒められて嬉しい」と思う
日本国民はおらず、「バカにするんじゃない」
と思うのが、良識ある日本国民のはずだ。
この流れの中で5月22日、バッハは
「東京五輪を実現するために、われわれは
いくつかの犠牲を払わなければならない」と
言ったのだから、「われわれ」は「日本人を
指すものではなく、東京五輪関係者すべて」
のことだと弁明しても、誰も聞く耳は持たぬ。
日本国民の怒りが爆発したのは至極当然
のことだ。
かてて加えて、IOCのコーツ副会長まで
が「緊急事態宣言が出されている中でも
東京五輪は開催する」と断言してしまった。
「緊急事態宣言」はそもそも「不要不急の
用は自粛するように」というのが原則だ。
東京五輪は「必要緊急」の用なのかと、
日本国民の怒りの炎に油を注いだ。
自粛のために、どれだけ多くの日本国民
が苦しんでいるか知れない。
自殺者もいれば倒産した会社も数えきれ
ない。
入院できずに亡くなった方も毎日のように
報告されている。
日本国民の命より東京五輪が大事なのかと、
ほとんどの日本国民は思っているだろう。
■習近平が東京五輪を支援する理由
習近平国家主席は頻繁にバッハと電話
会談し、たとえば5月7日の会談でも、
1月25日の会談でも「東京五輪の開催を
支援する」と言っているが、これは、
東京五輪がコロナのせいで開催されなく
なると、人権問題として来年冬の北京冬季
五輪にも影響が出てくると考えていること
は明らかだ。
つまり中国はウイグル問題を抱えており、
そのためにアメリカなど西側諸国から
2022年の北京冬季五輪ボイコットの動き
が出始めている。
日本は東京五輪があるので決して北京五輪
ボイコットとは言わないだろう。
だから東京五輪を支援する。
また、もし東京五輪が中止になったと
すれば、それはコロナ感染のためだ。
コロナ感染を拡大させたのは、2020年1月
の春節期間に習近平が「武漢は封鎖して
いるのでコロナ感染はすでに安全で
パンデミック宣言をする必要はない」と
WHOのテドロス事務局長に言わせたこと
に大きな原因がある
(詳細は2020年1月27日のコラム<
「空白の8時間」は何を意味するのか?
――習近平の保身が招くパンデミック>
や2020年1月31日のコラム<習近平と
WHO事務局長の「仲」が人類に危機を
もたらす>など)。
コロナ感染責任論が爆発的に持ち
上がってくるのを習近平は恐れている。
だから東京五輪はどんなことがあっても
断行してほしいのである。
上記の5月7日の習近平・バッハ電話会談
では、バッハは以下のような趣旨のことを
強調している。
●中国がコロナ感染を世界に先駆けて克服
し経済回復を果たして、全世界のコロナ克服
に協力し、世界経済の回復に重要な役割を
果たしていることを祝賀する。
●中国とともにワクチン接種に協力していき
たい。
●国際オリンピック委員会はオリンピック
憲章を守り、オリンピック運動が政治化
することに断固反対する。
すなわち、習近平はバッハに
「ウイグル人権問題を理由にして北京冬季
五輪をボイコットするようなことがあって
はならない」ということを主張してもらって
いるのである。
そのようなことが「可能か?」と疑問に
思われる方たちのために、習近平とバッハ
の緊密ぶりをご覧いただこう。
■習近平とバッハの緊密ぶり
東京五輪は今年の7月で、北京冬季五輪は
2022年12月だ。
目前に迫った東京五輪に関して、緊密な
話し合いが成されてしかるべきとすれば、
中国より日本だろう。
しかし実態はその逆で、日中両国首脳に
よる電話会談などの接触は、今年に入って
からは圧倒的に中国の方が多い。
3月11日におけるIOC総会では、バッハは
東京五輪に関して「中国がワクチン提供を
する用意がある」と、中国を持ち上げている。
その緊密ぶりが分かるように、バッハの
動向および日中首脳とバッハとの対面会談・
電話会談などを時系列的にお示しする。
データは日中それぞれの外務省および外交部
HPの関連情報に基づく。
赤は中国関係で青は日本関係、バッハ自身
の動向は黒にしたが、2021/2/12の動向は、
習近平に宛てた祝辞なので赤文字にした。
表から明らかなように、2021年に入って
から、日本国首相との電話会談などの接触
はなく、専ら習近平と行っていることが
わかる。
その緊密さがどこから来ているかと言うと、
一つには「金のつながり」であり
(アリババや蒙牛など)、もう一つには
「投票行動の際に中国寄りの国の数が圧倒的
に多いため、中国寄りになっておいた方が
自分に有利」ということなどが考えられる。
2020年4月19日のコラム<トランプ
「WHO拠出金停止」、習近平「高笑い」―
―アフターコロナの世界新秩序を狙う中国>
にも書いたように、国連の専門機関や国連
傘下の多くの国際組織が習近平政権によって
乗っ取られているような状況だ。
中国は大国を相手にせず、小さな発展途上国
を大量に丸抱えする戦略で動いているので、
「一国一票」の原則に基づく多数決議決の時
には、中国に有利に働く。
■情けない日本政府の無為無策
5月24日、アメリカのCDC
(疾病予防管理センター)は日本への渡航に
関する注意レベルを4段階中最高の
「レベル4」に引き上げ、国務省も日本へ
の渡航勧告レベルを「レベル4」に引き上げ
て、「渡航を中止せよ」という指示を出した。
本来なら日本は島国であるだけでなく
国民の衛生意識は非常に高いので、
政府さえ適切な方針を打ち出していれば、
コロナ感染は防げたはずだ。
それが東京五輪直前になって、ことも
あろうにアメリカに見放されるほど、
日本はコロナ対策に失敗したことを如実
に表している。
それでもなお、「アメリカのオリンピック
委員会は選手を送り込むと言っているの
で関係ない」と白を切る日本政府には、
「日本国民の命を最優先する」という考え
は微塵もないことが明らかになったような
ものだ。
■重視するのは金と体裁か。
オリンピック精神とは「人間の尊厳」
を重視して争いを無くし、一時停戦を
してでも平和裏に人が集い不公平を無く
すことにあるのであって、これは
「人の命を最優先すること」につながる
はずだ。
隔離した状態でのスポーツ競技にいか
なる意味があろう。
その精神すら見失っている日本に国家
の理念などを要求しても無理だろうが、
目を覚まして欲しい。
IOCの裏には中国があり、IOCにとって
は日本国民の命などはどうでもいいこと
なのである。
金が入り、権威を保つことができれば
それでいい。
そのようなことのために、「私たちの命」
は「道具」にされていいのか。
私の友人のご親族は、先日、入院できず
に自宅隔離のままコロナで亡くなられた。
これ以上黙っていることは罪悪でさえある
という思いに突き動かされ、本稿を書いた
次第だ。
【転載終了】
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なるほど、IOCの強気の背後に中国がいた
とは知りませんでした。
そうなると、話は変わってきます。
欧米が東京五輪不参加の可能性もありますが、
参加条件に北京五輪のボイコットを交換条件
にしている事も・・・?
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