仕事も命も奪う「コロナ困窮」の実態・・・

人生100年時代の歩き方


【転載開始】


■仕事も命も奪う「コロナ困窮」の実態・・・

 1年以上の長期失業者は2年連続増の66万人

 公開日:2022/04/25


 コロナ禍は、多くの人の職を奪っている。

2月の完全失業率は、1月より0.1ポイント

低下の2.7%だが、休業者数は前年同月比

12万人増の242万人。

1年以上仕事を失った状態が続く長期失業

者は増加傾向だ。

コロナ禍で困窮する事例を知ると、決して

他人事とは思えない。


 ◇  ◇  ◇


 総務省の労働力調査によると、働く意欲

がありながら仕事が見つからない完全失業

者は、2021年の月平均で193万人。

20年より2万人増えている。

このうち長期失業者は対前年比13万人増の

66万人で、増加率は24.5%。

2年連続の増加だ。失業が長期化し、再就職

が難しい現実が浮かび上がる。


 そんな中、全日本民主医療機関連合会

(民医連)は、20年10月から21年12月末

までに全国の加盟医療機関やコロナ相談会

に寄せられた困窮事例346件を分析。

今月18日に都内で「コロナ禍を起因とした

困窮事例調査報告」を行った。


 民医連常駐理事の久保田直生氏が言う。

「20年9月までの事例をまとめた前回と同様

に複数回答で困った事象を尋ねると、『失業』

『病気の発症・悪化』が増加。コロナ禍の

長期化で、収入減が受診控えを招き、健康を

害している印象です。困窮した原因は、派遣

切りによる失業とコロナ禍による解雇が圧倒

的で、世代別では50代が突出していて、50代

を頂点としたピラミッド型。50代と60代の

男性が特に多い。相談を受けたときに住居を

失っていたケースも31件あり、健康や命に

かかわる事例が噴出し、コロナ禍による困窮

が深刻化しています」


 家族構成は独居が43%で、職業はパート・

アルバイトや派遣社員などの非正規労働者

が27%、無職が47%だ。

「男性」「中高年」「独居」の3条件が重な

ると、困窮リスクが高いという。


■去年は箱根駅伝を見ていたが、路上生活に


 具体的にどんなケースがあったのか。

 50代の男性は派遣労働者として工場で勤務。

20年4月、新型コロナの影響で生産ラインが

止まると、予告なく解雇され、工場の寮も

退去させられた。

住居を失い、ネットカフェを転々としながら

求職活動を続けたが、住所がないため不採用

の連続。

所持金が尽きてホームレスになったとき、

手元に残っていた現金は12円だったという。


 「寒い12月を路上で過ごしていたときは、

絶食状態。死のうと思って街をさまよってい

た正月に、警察に発見され、『あそこにいけ

ば助かるかもしれない』と民医連の相談会を

紹介されました。スタッフのサポートで、

その日のうちに生活保護を申請。アパートに

入居すると、『久しぶりに布団で寝られる。

1年前は、会社の寮で箱根駅伝を見ていた。

コロナさえなければ』と悔やんだそうです」


 住居を失った別の40代男性は、12月の夜

は凍死を防ぐため夜通し街を歩き続けていた。

所持金15円で食事ができず、公園などの水

飲み場で水を飲んでしのいだ。

深夜に見回り訪問スタッフに発見されたとき

は、両足が凍傷になっていた。

コロナ禍で、日雇いの仕事を奪われたことが、

路上生活に転落する原因だったという。


 前述の50代男性には、糖尿病の持病が

あった。

派遣社員で働いていたときはきちんと治療

していたが、解雇後は保険料の負担が重く、

健康保険に加入せず、治療を中断していた。


■解雇で健康保険未加入の負の連鎖


 民医連事務局次長の山本淑子氏が言う。

「コロナ禍による困窮では、男性のように

健康保険に未加入で、医療費負担の重さか

ら、通院をためらう人がとても多く、治療

の中断による持病の悪化が怖いのです。

しかし、男性のように非自発的離職なら、

国民健康保険料は減免対象になります。

このことを説明すると、男性も納得し、

加入手続きを済ませ、受診につながりました」


 別の60代男性は、鶏卵会社などでアルバイ

トをしながら生活していたが、コロナのあお

りで鶏卵会社を解雇。

収入が大幅に減り、腹痛を感じても市販の

鎮痛薬で我慢し、受診は控えていた。


 「この男性は国保に加入していましたが、

生活費とのバランスで医療費の負担がネック

でした。それで受診を控えた結果、歩けない

ほど腹痛が悪化し、2020年10月に受診する

と、検査の結果、胃がんが判明。肝臓への

転移もあり、緊急入院を余儀なくされました。

手術はできず、入退院を繰り返しながら、

抗がん剤で治療をしましたが、わずか5カ月

で亡くなったのです」(久保田氏)


 解雇で収入が減れば、多少症状があって

も様子を見るだろう。

が、それがアダとなって、がんを悪化させ、

寿命を縮めてしまったのだ。


■80代の親も50代の子も全員感染で・・・


 コロナ禍は、つましく暮らしていた親子を

困窮の底に突き落とす。

そんなケースもあったそうだ。


 「80代の母と同居する50代の息子夫婦です。

母は要介護状態で年金が少なかったため、息子

夫婦のサポートが不可欠。ところが、家族全員

がコロナに感染し、息子夫婦は人工呼吸器を

装着するほどの重症で仕事ができなくなりまし

た。母はコロナ感染でさらに体の機能が低下し

て、機能を回復させるためのリハビリが絶対

必要で、当院に来られたのです。息子夫婦は、

コロナが治ってからも後遺症に悩まされ、仕事

ができず、医療費を心配されていました」

(久保田氏)


 コロナ感染で親子共倒れのシナリオは、

持病を抱えて重症化リスクがある中高年世帯

なら、十分ありうる。

それで仕事を失ったら、一気に転落だろう。

今の世の中、そんな怖い現実と隣り合わせ

だ。


 その対策は後述するとして、歯科は内科

の病気より手遅れになりやすいという。


 「50代の女性は、パート勤務でしたが、

コロナ禍でシフトを減らされた上に、夫も

胃がんで休職状態になりました。それで歯

の痛みを我慢していたら、虫歯の悪化で歯

が数本抜けてしまったそうです。口腔内の

状態がとてもひどく、その治療と義歯の

作製などの治療も必要になりました」

(山本氏)


■無料低額診療の利用は最大6カ月


 では、コロナ禍の余波で所得が激減した

り、無収入になったりしたら、どうやって

健康や生活を守ればいいのか。


 「健康面については、一つは無料低額診療

事業を利用することです。80代と50代の親子

も、50代の女性も、これで治療することが

できました。中には20代の男性タクシー運転

手がコロナの後遺症で職を失い、治療ができ

ず苦しんでいたケースも、この制度で治療に

結びついたのです」(山本氏)


 無料低額診療事業は、低所得者ら基準を

満たした人に医療機関が無料または低額で

医療サービスを行うもの。

低所得者だけでなく、生活保護者、DV被害者、

ホームレスなども対象だ。

その基準は、約700の実施医療機関によって

異なるが、世帯収入が生活保護基準額の140%

以下とするケースが多い。

基準より収入が少ないほど減免額が増える。

ただし、この制度を利用できるのは、

最大で利用開始から6カ月だ。


 「無低」を利用するほどでなければ、高額

療養費制度を使うといい。

医療費は世帯で合算でき、1カ月の自己負担

限度額を超えた分は還付される。

その限度額は、70歳未満の低所得者だと、

3万5400円。

世帯合算だから夫婦でこの金額が天井になる。

保険を運営する自治体や保険組合などに申請

して利用することが重要だ。


 生活支援については、生活保護になるが・・・。


 「346件のうち3分の1近い124件は、生活

保護の受給対象でありながら受給していませ

んでした。その理由として、45人は『自分の

力で頑張りたい』と回答していますが、これ

は額面通り受け入れられません。申請の現場

では、さまざまな手口で申請させずに追い

払う手口が横行しています。役所の対応が

トラウマで、『生活保護を受けるなら、死ん

だ方がマシ』という人の背景に、そんな事情

があるのです。それでも困窮した人は、生活

保護をためらわずに利用することが重要。国

には、生活保護制度を簡素化し、現場の対応

を改善することを望みます」

(久保田氏)


 困ったら、使える制度をとことん使うのだ。


【転載終了】

**********************


 いま、社会保障サービスがどんどん削減

されてきています。


 我々の子供や孫の世代が暮らしていける

のか不安になりますよね。


0コメント

  • 1000 / 1000