イラン核合意離脱を欲した米強硬派が夢見る愚かなシナリオ。

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【転載開始】


 イラン核合意離脱を欲した米強硬派が夢見る愚かなシナリオ

 ※抜粋

 2018年5月9日(水)

 スティーブン・ウォルト(ハーバード大学

 ケネディ行政大学院教授=国際関係論)


■アメリカは信用を失った


 トランプは、シリアのバシャル・アサド政権

やレバノンのシーア派武装組織ヒズボラを

支援するイランに対抗しようとしたわけでも

ない。

もしそれが狙いなら、イランの核兵器保有を

妨げる合意を維持し、他の国々をアメリカの

陣営に引き入れて、イランに圧力をかける

ことこそ合理的だったはずだ。


 だが、核合意を成立させた多国間の連合

を新たにまとめることは不可能であるばかり

か、イランはアメリカと交渉する気を失くして

しまった。

トランプはいずれそのことを思い知るだろう。


 信用を犠牲にしてまで核合意を離脱した

トランプの真意は単純だ。

イランをペナルティボックスに入れて、外界

との接触を断とうとしたのだ。


 この点、イスラエルと米イスラエル・ロビー

の強硬派、ジョン・ボルトン国家安全保障

問題担当大統領補佐官、マイク・ポンペオ

国務長官らタカ派の思惑は一致している。


 彼らの最大の懸念は、アメリカと中東の

同盟国がイランを正当な中東の大国と認め

ざるを得なくなること、イランが中東である

程度の影響力をもつのを認めなければなら

なくなることだった。


 イランが中東を支配しようとしている、

という話ではない。

イランはおそらくそんなことをめざしていない

し、達成できる見込みもない。

問題は、中東におけるイランの権益を認め

なければならないことであり、その結果、

地域の問題について話し合うときには、

イランの意向も考慮せざるを得なくなると

いうことだ。


 これは、イランが国際社会から孤立した

「のけ者」であり続けることを望むアメリカ

のタカ派にとって、受け入れがたい事態だ。


 アメリカのタカ派やイランの反政府勢力が

長年追求し続けているのは「体制転換」と

いう甘い夢だ。

1979年にイランでイスラム革命が成功して

からイラクへ逃れた反体制派勢力、

ムジャヒディン・ハルク(MEK)のような

グループの最終目標も「体制転換」だ。

MEKはイラン国内では蔑視されているが、

ボルトンを含むアメリカの民主・共和両党の

政治家の支持を受けている。


 タカ派は、体制転換には2つのルートが

ありうるとみている。


 第1のアプローチは、経済的圧力を強めて

イランの一般国民の不満を煽り、現在の

イスラム共和制が崩壊するのを期待する。

第2は、イランを挑発して核兵器開発計画を

再開させ、アメリカが予防的に戦争を仕掛け

る口実にすることだ。


■制裁による体制転換は望めない


 これらの選択肢をもう少しくわしく見てみよう。


 まず第1の選択肢だが、厳しい制裁が政権

を崩壊させるという考えは甘過ぎる。

アメリカのキューバに対する禁輸措置はオバマ

の歴史的訪問まで50年以上続いたが、カストロ

政権はまだ存在していた。


 北朝鮮には60年以上制裁を続けたが体制

は崩壊せず、核兵器開発も止められなかった。


 イランは何年も前から崩壊の危機に瀕して

いるといわれてきたが、そんなことは起こり

そうもない。

イラクのサダム・フセインやリビアのムアマル・

カダフィも、制裁では倒せなかった。


 数カ月前にイランの一部の都市で反政府

デモが行われたことに強硬派は興奮していた。

彼らの論理に従えば、トランプの大統領選出

以来大規模なデモが頻発しているアメリカも、

体制転換が近いことになる。

イランでもアメリカでも、そんな可能性はない。


 経済的圧力は、時には敵を交渉のテーブルに

つかせたり、敵の政策を変更させたりすることも

あるし、戦争中は敵を弱体化させることもある。

だが核合意からの離脱は、イランを屈服させる

方向には働かない。

私が間違っていて、イランの現体制が崩壊した

としたら、どうなるだろうか。


 これまでにも多くの例で見たように、安定した

親米政権が誕生する可能性は低い。

アメリカの支援によるイラクの体制転換は、

内戦や血なまぐさい反乱、残忍なイスラム国の

台頭を招いた。


 外国から強制されたリビアの体制転換も同じ

ことだ。

アメリカは近年、ソマリアやイエメン、アフガニ

スタン、シリアなどにも介入してきたが、結果的

にすべての国で不安定さが増し、テロリストに

格好の土壌を提供した。


 アメリカがイランでしたことも忘れてはならない。

1953年、民主的に選出されたモハマド・モサデク

首相を追放し、モハマド・レザ・パーレビを王位

に復権させたことは激しい反米主義を生み、

1979年にイラン革命が起こり、以来アメリカは

ずっとそれに対処しなければならなかった。


 さらに、イランの著名な反政府活動家は多くが

イランの核開発計画を支持しており、彼らが体制

側になったとしても米政府の追従者にはならない

ことも覚えておくべきだろう。


■お笑い草の戦争という選択肢


 では第2の選択肢である戦争はどうか。

事態が緊迫し、戦争が避けられない情勢となれ

ば、おなじみの「衝撃と畏怖」作戦により、イラン

の核開発インフラを完全に破壊できるだけでなく、

イラン国民が立ち上がって体制転覆をしてくれる

だろうというのが、アメリカのタカ派の楽観的な考

えだ。


 お笑い草でしかない。

仮にアメリカがイランを爆撃したとして、イラン国民

がこれを歓迎するとはまず考えられない。

逆にイランのナショナリズムを刺激し、国民は

現政権の下まとまろうとするだろう。


 さらに言えば、イスラエルあるいはアメリカによる

軍事攻撃は、イランによる核武装の歯止めとはなら

ない。

せいぜい核兵器の開発を1、2年遅らせるだけだろう。


 このような攻撃を受ければ、イラン国民の大多数

は、自国の安全を確保するには、北朝鮮のように

自ら核抑止力を手にするしかないと確信するはずだ。


 そしてイランは密かに設けた核開発施設の保護を

強化し、核兵器開発に向けた取り組みを一層加速

させる。

イランが核開発の道を突き進めば、周辺の国々も

同じ道をたどる可能性が高い。


 中東に複数の核兵器を持つ政権があるほうが

望ましいと考えるならこの選択肢が望ましいが、

その帰結は言うまでもなく悲惨なものだ。


 そして間違いなく言えるのは、実際に戦争が

起きた場合、さらに多くの人命が失われ、アメリカ

の金が無駄に費やされるだけではなく、より広範

な地域紛争の火付け役となる可能性もあるという

点だ。


 こうした事態を引き起こした責めを負うべき唯一

の存在は、現在ホワイトハウスの大統領執務室

に座っている。

トランプがどれだけ騒ぎを起こし、責任を転嫁し、

言葉足らずのツイートを連発しても、この事実を

覆い隠すことはできない。


 この大失策で改めて浮き彫りになったのは、

トランプが2016年の大統領選でアメリカ国民に

約束したのとは裏腹に、他国への積極的介入

を控えるつもりもないし、オバマ前大統領の

犯した過ちを正すつもりもないということだ。


 むしろトランプは、単純で洗練度に欠けて一面的

で、軍事作戦に重きを置きすぎたジョージ・W・

ブッシュ大統領の1期目の外交政策へと、我々を

引き戻している。


 ボルトンを国家安全保障問題担当補佐官に、

ポンペイオを国務長官に任命し、さらにはテロ

容疑者への拷問を指揮したとされるジーナ・

ハスペルを中央情報局(CIA)のトップに指名した

一連の動きは、ブッシュ政権時代の外交政策へ

の後戻りだ。

それがどれほど「効果的」だったかは、ご存じの

通りだ。


■チャーチルは間違っていた


 かつてドイツ帝国の首相を務め、「鉄血宰相」の

異名を取ったオットー・フォン・ビスマルクは、

「自らの失敗から学ぶことも悪くないが、他人の

失敗から学ぶ方が良い」との名言を残した。


 だがイランとの核合意問題で、アメリカは、自国と

他国、どちらの失敗からも学ぶ能力がないことを

露呈した。


 また、ウインストン・チャーチルの言葉として伝え

られている「アメリカは常に正しい行動を取る」と

いう言葉は、今や訂正が必要だ。


 トランプ政権下のアメリカは、常に間違った行動

を取っているようだ。

しかもこれらの決断は、どう見てもより優れた選択肢

を先に検討しながら、それを退けた上でのものなのだ。

(翻訳:ガリレオ)


【転載終了】

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 日本が米国に追随すれば、親日友好国で

あるイランはおろか、イランと同盟国である

国からも日本は敵国として認識されます。


 トランプ政権のスタッフが、ほぼネオコンに

入れ替わったことを認識すべきです。


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