古賀茂明「反安倍勢力に広がる無力感・・・」
AERA dot. 連載「政官財の罪と罰」
【転載開始】
■古賀茂明「反安倍勢力に広がる無力感
沖縄県知事選も新潟の二の舞いか」
モリカケ問題などで、安倍内閣支持率は、
一時、第2次安倍政権成立後最低を記録した。
その後も共産党が、財務省内で文書公開を
巡って恣意的な選別を行ったり、官邸から
法務省に影響力が行使されていることを示唆
する文書の存在を暴露したりしていて、
まだまだ火種は尽きない。
また、文書がない、あるいは真偽不明などと
いう話から、結局あったという展開になることも
十分ある。かなり危うい状況だ。
一方、安倍総理の武器と言われる外交では、
日米首脳会談もG7サミットも不発に終わり、
安倍総理の最大の庇護者であるはずのアメリカ
からも厳しい通商の課題を突き付けられてしまった。
北朝鮮問題では、関係6カ国の中で、唯一置き去り
にされるなど、徐々に、その戦略に対する不信感が
国民の間に醸成されつつある。
少なくとも外交で起死回生の一打とはなりにくい
状況だ。
こうした八方塞がりに見える状況にもかかわらず、
世論調査では、安倍内閣支持率は下げ止まり、
上昇の兆しすら見せ始めた。
国会は32日間の延長が決まり、安倍政権は、
主要法案をすべて今国会中に成立させる強硬策に
出ている。
野党が反対するだけでなく、世論調査でも今国会中
の成立に反対の声が強い「働き方改革法案」や
「カジノ法案」も、このまま行けば、「強行採決」も
含めて成立させる準備は万端整ったように見える。
さらに、秋の総裁選での安倍3選はほぼ決まりだと
いうのが政治部記者たちの見立てである。
「こんなことがあってもいいのか」
「日本の民主主義はどうなったのか」
「どうしてこうなるのか、理由がわからない」
「このままでは、終わってしまう」という声が、
野党や安倍批判を展開する識者から聞こえ
てくる。
さらに、「もう駄目だね」「もう終わってるんだよ」
「疲れたよ」という諦めの声さえ漏れ始めた。
ある韓国人の友人は、私にこう言った。
「これだけ酷いことをされたら、韓国では政権に
対する批判が一気に高まって、ローソク革命の
ような民衆の反乱が起きるのに、どうして日本
では何も起きないのだろう」
本当に不思議なことだと言いながら、
その友人は別れ際にこんな言葉を残して韓国に
帰国した。
―日本人は何でも許せるんだね
許せることはいいことかもしれないけど
許してはいけないこともあるんだよね
日本人は本気で怒れないんだね
怒らないのはいいことだけど
本気で怒らなければいけないこともあるんだよね
そうしないと、国が壊れちゃうんだよね―
本当に、日本という国が壊れてしまうのでは
ないか。
海外の友人も心配するほどの深刻な状況だと
いうことだ。
<中略>
■新潟県知事選敗北に危機感を持てない野党
こうした日本の政治状況を端的に表す「事件」
が起きた。
6月10日投開票の、新潟県知事選で、自公が
推す花角英世候補が勝利したのだ。
地方では自民が強いから驚きではないと思う方
も多いだろうが、この選挙は、野党にとっては、
絶対に勝たなければならない選挙だった。
なぜなら、今回の選挙では、野党有利の条件が、
これ以上ないというほどそろっていたからだ。
その選挙で勝てなかったのだから、野党にとって、
これは衝撃のはずだ。
そもそも、新潟は、昨秋の衆院選で野党が
6小選挙区で4勝という全国でも珍しい野党
優勢県だ。
前回知事選では、連合と民進党(当時)が
野党候補の米山隆一氏を推さなかったが勝利
した。
いわば、片翼飛行での勝利だ。
一方、今回は、野党6党・会派が共闘した。
前回よりもはるかに態勢が強化されたのだ。
さらに、保守層に大人気の小泉純一郎元首相
が新潟入りし、野党候補の池田千賀子氏を
事実上応援した。
それに比べて、モリカケ疑惑で自民党は不人気
の極致だった。
新潟入りした自民党幹部は街宣もできず、
花角候補は、ひたすら自民色を消すことに必死
だった。
沖縄県名護市長選で破壊的威力を見せつけた、
自民党の切り札、小泉進次郎議員が新潟県連
の再三の要請にもかかわらず、応援に来なかった
のも野党にとっては願ってもないことだった。
さらに、浮動票がどの程度増えるかという観点
で注目を集めた投票率も、事前予想に反して
前回を5ポイントも上回った。
もちろん、これまでの常識では、これは野党候補
に有利な材料だ。
安倍政権は森友・加計スキャンダルに苦しんでいる。
この知事選に勝てば、来年の統一地方選や参院選
を控え、自民党内では、「安倍政権では選挙を戦え
ない」と、安倍降ろしが始まる。
これが安倍政権打倒の第一歩だ、と、一瞬、野党の
夢は広がった。
しかし、野党はこの“恵まれた”新潟ですら、
勝てなかった。
しかも、ショックなことに、浮動票が多いはずの
新潟市内でもかなりの票差をつけられてしまった
のだ。これでは勝てるはずがない。
そこにはいくつか理由があるだろう。
野党側が嘆くのが、「原発再稼働が争点にならなかった」
ということだ。与党の花角候補が、徹底して
「柏崎刈羽原発再稼働に慎重」という姿勢をアピール
したため、池田候補との違いが見えなくなったと言うのだ。
しかし、果たしてそうだろうか。
実は池田候補は、最初から「再稼働させない」と明言
していない。
米山前知事が始めた検証結果を待つ姿勢を示した
だけだ。
ニュアンスとしては脱原発だが、「絶対に動かさない」
と言えなかったので、新聞などでは「慎重」という言葉
で花角候補と同じように扱われてしまった。
もし、「絶対に動かさない」と言っていれば、花角氏との
差別化は可能だったはずだ。
では、どうしてそう言えなかったのかと言えば、結局、
連合などに気を使ったということなのだろう。
花角候補は、当選するや否や、いかにも再稼働を
否定しないととれる発言をして、野党側から、
「やっぱり、嘘つきだった」と批判されているが、
こうした「嘘」で票を集めるのは、鹿児島の三反園訓知事
のときも同じだった。
嘘だと暴くより差別化された公約を掲げられなかった
ことが敗因の一つだと素直に反省すべきだが、
それを言うと、共闘態勢にひびが入るので、
そうしたことを公に言う野党議員も市民連合幹部もいない。
■沖縄は新潟の二の舞いとなるのか
新潟県知事選を終えて、非常に心配していることが
ある。
それは今年11月に実施される予定の沖縄の那覇市長選
と沖縄県知事選も新潟と同じ構図となり、与党候補が
勝利を収めるのではないかということだ。
反基地を掲げて前回選挙で自民候補に勝利した
翁長雄志現沖縄県知事だが、すい臓がんを患い、
復帰はしたものの、次の選挙に出られるかどうかは
わからない。
しかも、知事を支える連合体の「オール沖縄」から
経済人が次々と離脱するという危機的事態に立ち
至っている。
その象徴が「かりゆし」グループと「金秀」グループの
脱会だ。
実は、沖縄でも、常に、基地反対と経済振興という
二つの課題が二律背反のテーマとして取り上げられ
てきたのだが、近年は、県内のホテル、建設大手の
ツートップがこぞって「基地のない沖縄の方が経済
発展できる」と主張したことで、経済界や一般庶民は
反基地と経済発展が両立できると安心し、翁長知事
や反基地候補に票を投じやすくなったという側面が
あった。
もし、このまま、経済界が「オール沖縄」から離れて
いけば、沖縄県知事選は新潟県知事選と同じ構図に
なり、結果も同じになる可能性は極めて高いのでは
ないだろうか。
野党の経済政策への不信が根強い状況を考えれば、
自民党がついて来れない、本気の規制緩和など
既得権と闘う政策を打ち出せるかどうか。
例えば、今回、安倍政権の骨太方針でも途中で
落とされた、米国のウーバーや中国の滴滴出行など
が展開するライドシェアの解禁。
日本は大きく立ち遅れ、海外観光客も不満を高めて
いるこの分野で、本土に先駆けてこれを解禁すること
など、自民党ができない成長戦略を打ち出すべきでは
ないだろうか。
ただのバラマキでは、すぐに自民党にパクられて、
また、「抱き付き作戦にやられた」と言い訳をしなければ
ならなくなるだろう。
これは、新潟や沖縄に限った話ではない。
どんなに失点が続いても安倍政権が持ちこたえる
現状に対して、「マスコミが悪い」とか「自民党が嘘を
つくからだ」と嘆くのではなく、新潟県知事選に敗北
した今こそ、野党は、敵失批判とただのバラマキ公約
から脱して、自民との「違いがわかる」経済政策こそを
「戦略的に」語るべきではないのか。
もちろん、原発についても、拘束力のない脱原発
基本法案を出しましたなどというアリバイ作りではなく、
明確に「再稼働は絶対にさせない。
すべての原発は廃炉に追い込む」ことを明確にした
実体法を提案してほしい。
そして、その政策を信じてもらうためには、連合との
関係など、しがらみは、明確に断ち切ったという姿勢
を示すことも重要だ。
どん底にあるのは安倍政権だけではない。
野党の方こそどん底にある。
その危機感を持つこと、それが最初の一歩になる
のだと思う。(文/古賀茂明)
【転載終了】
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我々でも、「この国はもうどうでもいいや」と
いう気持ちですからね~!
安倍3選は、既成事実のようですから、
もうだめでしょう。
諦めるしかないような気持ちですが、
せめて、子供たちと家族を守らないとね。
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