金融市場は日銀総裁の発言を疑い始めたか・・・
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【転載開始】
■アベノミクスに暗雲…
金融市場は日銀総裁の発言を疑い始めたか
日本銀行が超低金利政策を続けて5年超。
副作用が「時限爆弾」のように膨らみ、
軌道修正を図ったと受け止められた。
アベノミクスの先行きに暗雲が漂う。
* * *
国債を取引する債券市場で8月1日午後。
住宅ローンの指標にもなる長期金利が
上昇して0.120%をつけ、翌日は0.145%
まで駆け上がった。
1年半ぶりの高水準だ。
7月31日午後に一時0.045%まで急降下
してから一気に反転した値動きの荒さは、
市場の「戸惑い」の深さを映している。
すこし前まで寝たように静まっていた市場
をたたき起こしたのは、日本銀行が金融政策
を“微修正”させたことだ。
投資家の間で、日銀が金利を低く抑える
金融緩和が弱まったり「出口」に近づいたり
するとの予想が広まると、国債は売られ、
価格が下がって金利が上がりやすくなる。
逆に緩和が強まったり長びいたりすると
予想されれば、国債は買われ、金利が
下がりやすくなるのが定石だ。
日銀は7月末の金融政策決定会合で、
「ゼロ%程度」に誘導する長期金利の振れ
幅を広げると決定した。
従来の「プラスマイナス0.1%」を
「プラマイ0.2%」に。
金利の上昇も容認する形で、正常化に向け
た「一歩」とみる向きもある。
これだけなら金利は上昇一辺倒だ。
ところが、公表文のタイトルは〈枠組み強化〉。
そこに〈当分の間、現在のきわめて低い長短
金利の水準を維持する〉との記述も加わった。
金利の急騰を抑えるための「牽制」ではあるが、
プロの債券ディーラーでさえ、言葉の真意や
政策の方向性をつかみあぐねて迷ったのだ。
「早期に出口に向かうとか、金利が引き上げ
られるのではないかという一部の観測を完全
に否定できる」
日銀の黒田東彦総裁は会合後の記者会見で
勇ましく語った。
しかし、会合の翌日以降も金利の上昇圧力が
続くのは、黒田総裁の発言を額面通りには受け
止められない、と感じる市場参加者が少なくない
からだ。
自業自得としか言いようがない。
アベノミクス「第1の矢」として、異次元緩和が
華々しくスタートしたのは2013年4月。
目先の景気を優先する政権の意に沿って、
黒田日銀は物価上昇率2%の目標を2年で
実現すると約束し、巨額の緩和マネーを市場に
つぎ込んできた。
当初は円安・株高に弾みがつき、不動産など
の資産価格が上昇、企業業績も上向いた。
しかし、賃金が増えて消費も伸びる「好循環」は
呼び覚ませず、物価は思いどおりに上がらない。
資金供給量を増加させ、中央銀行としては異例
の“株買い”も漸次拡大、マイナス金利にも手を
つけたが、物価上昇率は変わらず、むしろ緩和
の「副作用」が膨らむのを加速させた。
筆頭は苦境にあえぐ地方銀行の経営だ。
人口減少に追い打ちをかけるように、長びく
超低金利で収益を奪われ、体力も蝕まれる。
18年3月期の決算では地銀104行の過半で本業
の利益が赤字となり、そのうち40行は3期以上の
連続赤字だという。
市場のゆがみもめだつ。
日銀が国債の4割超を買い占め、国債の取引は
細り、価格がつかない異例の事態が今年だけで
6度起きた。
株式市場では日銀が株式の5%以上を実質保有
する“大株主”企業が100社を超え、日増しに介入
度合いが強まる。
黒田総裁は緩和の副作用について
「今の時点でものすごく大変なことになっている
とも思わない」と意に介さない様子で、
2%の実現までは強力な緩和を続ける考えを強調
した。
そう言い続けなければ、デフレ脱却を金看板に
大企業と富裕層を潤わせるアベノミクスの根幹が
揺らぎかねないという事情もある。
ただ、日銀が新たに示した見通しでも、2%の達成
は21年度以降になる。
副作用が膨張して限界を迎えるのとどちらが先か。
「チキンレース」のような金融政策の行方が、
私たちの生活を左右する金利の趨勢も握る。
(朝日新聞記者・藤田知也)
※AERA 2018年8月13-20日合併号
【転載終了】
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市場が株を放出しだしたら、下落は止められ
ないかも?
国債も買うところがなく、日銀が限界を迎え、
にっちもさっちもいかないことになるのでしょうか?
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