ロシアの中東覇権を好むイスラエル・・・!?

田中栄の国際ニュース解説。


【転載開始】


■ロシアの中東覇権を好むイスラエル

 2018年8月25日


 イスラエルが8月15日、ガザのハマスと、

史上初の本格的な停戦・和平の協定を結んだ。

イスラエルは、これまで閉鎖されてきたガザと

イスラエル、ガザとエジプトの国境を再開し、

ガザの住民が前面の地中海で漁業をすること

も認める。

今後、イスラエルとハマスの間で、5年から

10年の長期的な停戦、捕虜囚人の交換、

戦死者の遺品の交換が予定され、

ガザの港湾と空港の再建・再開、人道支援の

再開、外国からの支援金によるインフラ整備

の再開が予定されている。

これほど包括的・本格的な和平がガザで締結

されたのは93年のオスロ合意以来だ。

12年と14年に似たような協定が交渉されたが、

対立が再燃し履行されなかった。


 イスラエルは今回、ずっと敵視してきたハマス

と唐突に和解した。

なぜなのか。

マスコミはいつものとおり納得できる説明をして

いない。

私なりに分析していくしかない。

ハマスをめぐる話には、長い前段がある

(いつもながら中東情勢は延々と複雑だ)。


<中略>


 米国仲裁の2国式の中東和平は93年に

オスロ合意としていったん実現したが、

その後イスラエルが右傾化してパレスチナ国家

の創設に反対して頓挫させた(95年のラビン

暗殺など)。

右傾化したイスラエルは、イスラム過激派を扇動

する策略を引っさげて米国の軍産複合体を加勢

して01年の911テロ事件を引き起こし、その後

の「テロ戦争」の体制で、米国がイスラエルを守る

ために中東のイスラム過激派と永久に戦う構図が

作られた。


 しかしテロ戦争の体制は、03年のイラク侵攻後、

失敗がひどくなった。

ネオコンなど、テロ戦争を(わざと)過激に稚拙に

展開する勢力が戦略を立案推進したせいだ。

2011年からのシリア内戦は、米国(軍産)がシリア

にISアルカイダを送り込んで引き起こしたものだが、

内戦でアサド政権が倒されていたら、その後の

シリアはリビアに似た長期の無政府状態の内戦に

なり、再び安定化することが非常に難しくなって

いたはずだ。

イスラエルと国境を接するシリアの長期混乱は、

イスラエルにとって大きな脅威だ。

シリアが無政府状態で長期内戦になったまま、

米国が金融破綻などによって覇権を失って

イスラエルを支援できなくなると、イスラエルの

国家存続が危うくなる。

米国が覇権を失うなら、その前にテロ戦争を終結し、

中東を安定化しておくことがイスラエルにとって

必要になる。


 この点を踏まえた上で、オバマ政権下の2015年

以来米国がやっている、シリア内戦の終結とその後

の国家再建をロシアに任せる戦略を見ると、

これはイスラエルの国益に合致していることが

わかる。

もしかすると、イスラエルが米国を誘導して、

シリアの問題をロシアに任せるようにしたので

ないかとすら思えてくる。

今夏、シリア内戦がアサド政権の勝ちで終わるや

いなや、イスラエル(安保戦略を担当するリーベル

マン国防相)が「アサドはイスラエルの敵でない。

アサドと交渉しても良い」と言い出し、シリア政府軍

が対イスラエル国境(ゴラン高原占領地との国境)

に駐留することを容認した。


 ロシアがシリア内戦を終わらせたことは、

中東の覇権が米国からロシアに移っていくことを

引き起こしている。

米国の覇権を放棄してロシアや中国に分け与え、

世界の覇権構造を米単独から多極型に転換する

ことは、トランプ政権が目立たないよう全力で進め

ている戦略でもある。

トランプはイラン核協定を離脱し、表向き(濡れ衣に

基づく)イラン敵視を強めているが、これは実質的に

イランと露中BRICSとEUが米国抜きで仲良くなる

「多極化」「中東覇権の放棄」の戦略だ。

トランプの米国は、経済難が続くエジプトの面倒を

見ることも放棄し、ロシアと中国(安保がロシア、

経済が中国)に任せている。


 中東の覇権が米国からロシアに移ることは、

米国覇権(テロ戦争の体制)にぶらさがって繁栄を

維持するイスラエルの戦略にとって大打撃だが、

米国のテロ戦争の体制自体が失敗し、

中東が不安定なまま米国の覇権が低下するという、

イスラエルにとって危険な流れになっている。

イスラエルと組んでいた米国の軍産複合体は、

テロ戦争と米国の覇権を立て直そうとしてきたが、

立て直しの試みは逆に、中東の混乱増加、

テロ戦争の濡れ衣的な構造の露呈、米国の信用

低下になっている。

むしろ米国が中東の覇権をロシアと中国の連合体

に移譲し、露中が中東を安定させる道の方が、

成功する確率が高い。

そのような傾向は、オバマ政権時代から見えていた。

当時、リビアもシリアもアフガニスタンも悪化していた。


 そう考えると、2016年の大統領選挙で、イスラエル

のネタニヤフ首相の盟友である米国のユダヤ人

カジノ王のシェルドン・アデルソンが、当初のトランプ

敵視を翻して16年春からトランプを強く支持し始め、

これがトランプの当選につながったことが、

非常に興味深いものに見えてくる。

アデルソンや、その周囲の、イスラエルの主流派

(親イスラエルのふりをした反イスラエルである極右

の入植者たちでない人々)が、トランプを大統領に

して、米国が中東覇権をロシアに移譲する流れを

加速させたのでないか、という読みが浮上してくる。

米国の軍産は、米国覇権の維持をめざすロシア

敵視のクリントンを支援した。

だがイスラエルは、多極化をめざす親露的なトランプ

に鞍替えし、その結果トランプ政権が生まれたの

でないか。


 私が「イスラエルがロシアに頼る?」と題する記事

を書いたのは14年末のことだ。

当時から、イスラエルが米国覇権の退潮や多極化

を見据えてロシアに接近する動きがあった。

イスラエルとかユダヤと一口に言っても、

全く一枚岩でなく、常に隠然と分裂しているのだろうが、

イスラエルやユダヤ世界の中にトランプを支持する

強い勢力がいたので彼が大統領になったという

見立ては有効だと思う。

当時から、イスラエル外交の正面を担当していた

のがネタニヤフで、裏面を担当していたのが

リーベルマンだった。

当時は正面が米国で裏面がロシアだったが、

その後、ネタニヤフ自身が足しげくプーチンに会いに

行くようになり、リーベルマンはカタールやシリア、

イランとの関係をこっそり担当している。

イスラエルの外交は、正面がロシアで、裏がカタール

やシリア(アサド)、イランになっている。


【転載終了】

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 中東は、西側のテロ介入があるため複雑に

なっていますが、ロシアが介入することで

スッキリしましたかね。


 米大統領選で、下馬評を翻したトランプ当選は、

ISの創設者と言われているヒラリーを排除し、

IS殲滅するためだったのかも?


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