安倍政権はこのままでいいのか!安倍外交は「100年の禍根を残す」 。

倉重篤郎のサンデー時評(サンデー毎日)


【転載開始】


 安倍政権はこのままでいいのか!

 安倍外交は「100年の禍根を残す」

 ※後段文字起こし


■「従米・嫌中」路線を変えられるか!

 山崎拓・元自民党副総裁、宮城大蔵・上智大教授


 米国支配が終焉を迎え、東アジアに

緊張緩和が生じている今、

「従米・嫌中」の安倍外交が、著しく時代

と乖離してきている。

この転換期に安倍路線を突き進むことは

100年の禍根を残すことになると見る

倉重篤郎が、自民党国防族のボスだった

山崎拓氏(81)と、上智大教授の宮城大蔵氏

(50)に「あり得べき別の外交」を訊く―。

(一部敬称略)


 かつて、元官房長官の後藤田正晴氏が

日米同盟見直し論に言及したことがあった。

冷戦が終結しソ連が崩壊した直後、

1990年代初頭のことである。


 曰(いわ)く。ソ連がなくなった以上、それを

共通の仮想敵にした日米安保条約のあり方

も見直すべきであり、軍事同盟ではなく日中

平和友好条約レベルのものにいったん格下

げするのも選択肢の一つである、と。


 米ソ冷戦崩壊、という安全保障環境の激変

に、日本の安保・外交政策は幅広い選択肢を

持つべきだ、という後藤田氏流の問題提起

だったが、当時でも思い切った発言だった。

というのも、戦後日本外交の主流は、一貫

した日米同盟基軸にあり、政権中枢部で

それ以外の選択肢を唱える人はほぼ皆無で

あったからだ。


 氏の発言の背後には、旧内務官僚として

米占領軍の内務省解体や一連の頭越しの

対日政策を経験した者としての対米不信と、

逆に、日中国交回復に踏み切った旧田中派

特有の中国への親近感、贖罪(しょくざい)感

があった。

行き過ぎた対米従属的外交に対する氏特有

のバランス感覚も働いた、と推察する。


 ただ、後藤田氏ほどの政権与党有力者が、

日本外交の背骨にもあたる日米安保体制に

疑義をはさむことは、外務省をはじめとする

日米同盟至上主義論者たちにとっては、

許されざることであった。

よってたかってご説明や説得があったの

だろう。

その問題提起はいつの間にか、選挙制度

改革やPKO問題といった、これまたポスト

冷戦を機に盛り上がった一連の政策論議

の波間に消えていった。


 その後、船橋洋一氏(元朝日新聞主筆)

の言葉を借りれば、日米同盟はしばし漂流

した。

が、まもなく、北朝鮮や中国という新たな

仮想敵を見つけてそのミッションを復活、

橋本龍太郎政権下での日米安保再定義

とガイドラインの見直し、小泉純一郎政権

下での特別措置法を使った自衛隊の

アフガン、イラクへの派遣といった一連の

同盟強化策が取られてきた。


 さて、そこで再び安保環境の激変だ。


 米国1強支配が終わりを迎え、東アジア

では中国の圧倒的台頭と、米国の相対的

後退、という新たな力の再編・均衡が生ま

れようとしている。

朝鮮半島の緊張も緩み始めている。

この安保新環境に日本がどう対応していく

のか。


 日本政治は、50年代の米ソ冷戦の始まり、

90年代の冷戦崩壊に続き、戦後3度目の

外交・安保上の大転換期とその政策的岐路

に直面しているのだと思う。


 そういった根源的論争をする場が、9月の

自民党総裁選であり、来年の参院選である

べきだと思っている。

安倍晋三政権が示してきた道、つまり、

特定秘密保護法制定であり、集団的自衛権

行使の一部容認であり、新安保法制定であり、

米国の要請に沿った武器の購入、防衛予算

の増額……という従米構造の中で日米同盟

をさらに強化していく選択肢しかないのか。

それとも、かつての後藤田氏的発想まで

選択肢を広げて考え直すべき時期にきて

いるのか。


 そんな問題意識を持ちながら2人の識者に

安倍外交の総括をしてもらった。

日米同盟の維持・管理の日本側窓口を務め

てきた元自民党副総裁・山崎拓氏と、

『現代日本外交史』(中公新書)で、安保環境

の変化がいかに連立組み替えや政界再編

に影響してきたかを活写した上智大教授の

宮城大蔵氏だ。


■安倍外交に成功は一つもない


 山崎氏には、まず政権の最重要外交課題で

ある拉致問題から質(ただ)した。


 「安倍氏側の動きを一言で言うと、日朝首脳

会談の回避、先延ばし論だ。前に進めたくない

といえば身もふたもないが、結果が怖いのでは

ないか。責任を追及されるからだ。周辺も慌てて

やるべきではないと」


 千載一遇の好機では?


 「横田めぐみさんが拉致されて41年の歳月が

流れた。横田早紀江さんはトランプ大統領にも

会いに行っており(2017年11月6日)、大統領

も日本側の要請を受けて金正恩(キム・ジョンウン)

氏との会談で拉致問題を提起、『いいですよ、

話し合いましょう』となっている。それなのに安倍

氏は腰を上げようとしない。大統領に家族まで

会わせる。そこまでやっておいて本人が会わ

ない手があるのか」


 家族会にとってみれば?


 「一刻一秒、命を削って待っているんですから」


 人道上の問題だ、と。


 「ただ、人道上の問題と強調し過ぎると、問題

解決が遠ざかる。第一に、トランプは関心がない。

マネーだけだ。第二に、金正恩政権そのものが

人道上の問題を起こしている。2500万国民の

人権を踏みにじっている。第三に、日本が植民地

化時代に戦時動員、炭鉱に連れて行きタコ部屋

に入れたこと。それも人道上の問題だ。それに

全く触れないで、拉致問題だけが人道的という

のはどうか。むしろ、主権侵害、ゆえに外交問題

だ、というべきだ」


 朝鮮半島の和平、非核化、という大局はどう見る?


 「米朝首脳会談ではCVID(完全かつ検証可能

で不可逆的な非核化)まで至らず、これが尾を

引いている。その後、ポンペオ米国務長官が

何度も訪朝したが、交渉が進んでいない。首脳

会談で、いつまでにと年限を切らなければいけ

なかった。下手すると核保持を事実上認めて

しまうことになる」


 「もちろん、これはトランプ自身の問題だが、

安倍氏の働きかけが不十分だったともいえる。

というのも、安倍氏がそれを強調し、トランプが

耳を傾ける、というのが2人の関係だったはずだ。

安倍氏はそう喧伝(けんでん)し、安倍氏周辺も、

トランプが言うことを聞くのは安倍氏だけだと

言ってきた」


 今後、大国外交の行方は?


 「北側は体制保証と経済援助を求めている。

経済援助は中国が出てきた。北の貿易の9割

は中国だ。今後の展開として最も懸念される

ことは、中国が国連に制裁決議の解除を申し

出ることだ。米国が拒否権を使うことになる。

トランプとの関係がおかしくなっている英仏が

どう出るか。従来、拒否権を発動してきたのは

中露だったし、米英仏はイラク戦争を除けば、

基本的に協調してきた。国連が機能しなくなる

恐れがある」


 その中で日本の役割は?


 「日本は常任理事国ではないから手が届か

ない。安倍・トランプ関係も底の浅さが証明

されてしまった。中露にも影響力がない」


 日本外交の限界か。


 「もともとの姿が出ただけだ。日本の外交安保

政策自体が対米従属でやってきたわけだから。

独自に中国とパイプを持つ政治家やチャイナ

スクールの優れた外交官もいなくなった」


 「だから、対米従属一辺倒を改めないと新しい

外交路線は出てこない。外務省にとっては極め

て恐ろしい選択だが、これを見直さなければ

しょうがない」


 安倍政権に従米路線の見直しはできるのか?

 「できない。戦略がない。抱きつき、甘えて成果

を得ようとするだけだ」


 抱きつき外交?


 「米国に行ってはトランプに抱きつき、ロシア

ではプーチンに抱きつき。トランプの前はクリン

トンに抱きついていた。トランプが強いと知って

君子豹変(ひょうへん)だ。オバマには失礼だった」


 日露外交はどうか。


 「2島返還ですらロシア側は認めなくなった。

1956年の日ソ共同宣言からも後退していると

いうことだ。きちんとした戦略、シナリオがない。

共同経済行為の餌で領土を釣れると思って

いるが間違いだ。領土は寸土といえども渡さ

ない、というのがプーチンの立場だ。外交は内政

の延長だから寸土を渡せば彼の政権が脅かさ

れる。親しくなったので何でも言うことを聞いて

くれると思っているが逆だ。なめられ切っている」


 近隣外交はどうか?

 「何の進展もないが、最近は中国が対日融和

工作を開始した。米中貿易戦争の余波を受けた

ものだ。日本を取り込むためだ。米国からすれば

この動きは面白くない。日中が一緒になって米国

の保護貿易主義に対決するという立場に立てば

必ず反発が起きる。それは日米関係に大きく響く」


 山崎氏に言わせると、安倍外交に成功は一つも

ないことになる。


■ぐるぐる地球上を回るだけの外交


 続いて宮城大蔵氏に聞く。まずは、総論である。


 安倍外交5年の評価を。


 「政権基盤が強いから強力な外交ができる、

だから、これだけ外交成果を上げた、と言う人

がいるが、話は逆ではないか。つまり、外交を

使って内政基盤を強化した。外交自体の成果

もこれといってない」


 「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交というが、

ぐるぐる地球上を回って、行く先々で中国を

牽制(けんせい)したり、安保協力めいたもの

を作っているだけだ。日露関係で言えば、

一昨年山口県にプーチンを招いて、何かが

起こるような演出をしたが、結局、2島すら

もはや難しくなりつつある」


 「内政のための外交というのは、拉致問題が

典型的かもしれない。北朝鮮に強い態度を取る

ことで強力なリーダーシップをアピールし、政権

基盤の強化につなげてきたが、結局それで物事

が動いたかというとそうでもない。実質的な外交

成果は生んでいない。ある意味、外交の政治

利用をこれくらいやりつくしている政権はない、

と思う」


 かつてある外交筋からあらゆる外交に失敗は

ないと聞いたことがある。

事前の事務折衝で互いの成果になるようシナリオ

作りや演出をするからだ、という。

テレビで他国の首脳と握手していれば国民はよく

仕事をしている、と勘違いする。


 「政治利用には弊害も出てくる。例えば、北朝鮮

に対しては、対話のための対話はしないと強い

姿勢を打ち出し、ミサイル警報としてJアラートを

流した。憲法改正をするためには、近隣諸国と

少しさざ波が立っている方がいい、という世論

喚起の狙いも感じられた」


 「今政治に必要なのは、いい意味での内向き

の政治だと思う。静かな環境の中で、人口問題、

財政問題、来るべき大地震対策など、内政の

諸課題、危機に向き合っていく、抜本解決して

いくことに本当の政治の役割を見いだすべきだ

が、今の政権は全く逆だ。対外危機を煽(あお)っ

て改憲を持ち出す。極端な話で言えば、改憲は

できたが、大震災が来て、財政は破綻して、もは

や立て直す力はないという最悪のシナリオだって

ありうる」


 肝心な日米関係は?


 「疑問に思うのは、政権周辺の人たちが安倍氏

はトランプ外交の指南役だと言うが、本当か。

日米基軸が大事なのは間違いないが、米国と組ん

で中国の台頭に対抗する、という路線にも落とし穴

がある。例えば、尖閣だ。強い米国がついている

から多少強硬に振る舞っても大丈夫だろうと勘違い

することが怖い。尖閣は米国にとってみれば自国

のことではなく、ガイドライン(2015年4月に改定

された日米防衛の新指針)には島嶼(とうしょ)防衛

は自衛隊の任務と書いてある。米国はせいぜい

後方支援だ。辺野古新基地を造れば海兵隊が

守ってくれるというのは幻想だ。尖閣に中国が介入

し、米国が守ってくれないということもありうる。

そうなった時に日米同盟は終わってしまう」


 「(新基地問題も)安保法制と一緒で、必要以上

に対決型にした。お互い知恵を出し、技術レベル

で納得できる案を探るのが政治の仕事なのにそれ

ができない。政治の幅が狭い。残念というより愚か

な政治だと思う」


 対中国では?


 「緊張の度合いを政治努力で引き下げるという

本来やるべきことを怠った。むしろ緊張を煽ること

で強い指導者であるという自らの自画像を固めて

きた」


 中国何するものぞ、という強気世論を追い風に

した。


 「この20年間、中国崩壊論という本が山のように

あったが最近見なくなった。崩壊どころか日本の

経済力の3倍になった。むしろ、中国の台頭が日本

にマイナスになることを極力減らしていく外交が

必要だと思う」


■「軍拡的従米路線」は持続不能だ


 対北朝鮮、日米、日中、日ロ、といずれもお二方の

採点は大辛だった。


 その議論を二つに集約したい。

一つは、安倍外交が果たして、外交本来の目的で

ある国(民)益にかなってきたか、という点である。

俎上(そじょう)に載せられた拉致、領土問題では

とても前向きな評価ができない。

拉致でいえば、被害者家族にもう残された時間は

ない。

である以上、それがどんな冷厳なものであろうと、

あらゆる手段を講じ一日も早く真実を確定、

問題を終結させるべきだ。しかも好機到来というのに、

その政治責任が果たされていない。

北方領土も然(しか)り。

安倍・プーチン間の固い信頼関係という政権側の

宣伝と、交渉で得られた現実の落差がどんどん

広がっている。

説明も不足している。

いずれも国民益に反しているのではないか。


 二つ目は、冒頭述べた転換期の外交という

ニーズに応えているか、という問題だ。

自民党国防族のボスだった山崎氏から、従米

外交の見直しという言葉を聞けたのは収穫

だった。

行き過ぎた従米路線をどうするか。

一方で、大きくなり過ぎた中国とどう向き合うか。


 安倍外交の選択肢、つまり軍拡的従米路線へ

のさらなる邁進(まいしん)は、持続不能である。

日本の財政事情はこれ以上の軍事費突出、

米国産兵器の過大な購入を許さないだろうし、

少子高齢化は若者を戦場に送るわけにはいか

ない新たな理由でもある。

沖縄県民が告発する基地負担の不均衡問題は、

従米路線の不正義と限界を衝(つ)くものである。

この転換期に安倍従米外交を続けることは、

100年の禍根を残すことになりかねない。

後藤田氏ではないが、日米基軸絶対主義の壁

を破る論争が欲しい。


【転載終了】

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 支持者以外は、外交成果なし、地球を

ぐるぐる回って円だけバラ撒いただけと

いうのは共通認識ですね。


 安倍3選に危機感がうかがわれます。


LC=相棒's のじじ~放談!

時事関係や自動車関係などの記事を書いています。

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