衝撃はまだ序章 これから二幕三幕もある日産ゴーン逮捕劇!
日刊ゲンダイ
【転載開始】
■衝撃はまだ序章
これから二幕三幕もある日産ゴーン逮捕劇
2018/11/22 日刊ゲンダイ 文字起こし
この逮捕劇は序章に過ぎない。
自らの報酬を過少申告した金融
商品取引法違反(有価証券報告
書虚偽記載)の疑いで日産自動車
会長のカルロス・ゴーン容疑者が
東京地検特捜部に逮捕された事件
は、世界中が今後の展開に注目
している。
とりわけ関心を集めているのは、
3社の会長を兼務してきたゴーンと
いう「扇の要」を失ったルノー、日産、
三菱自動車のアライアンス(連合)
の行方だ。
日産の未来はどうなるのか。
自動車業界のみならず、
その背後には各国政府の思惑も
蠢き、予断を許さない。
19日にゴーンが逮捕されたことを
受け、フランスのルメール経済・
財務相と世耕経産相が20日に電話
会談。
「日産・ルノーアライアンスに対し
ても、 協力関係を維持していくと
いう彼らの 共通の意志に対しても、
強力に サポートすることを確認した」
という 共同声明を発表した。
だが、日仏政府がいくら「協力の維持」
をうたっても、市場はまったく信じてい
ない。
株価下落がその証拠だ。
実際、早くもアライアンスの足並み
は乱れ始めている。
日産は22日、取締役会を開き、
ゴーンの会長解任を決める。
三菱自もゴーン解任を発表。
一方のルノーは21日未明の臨時
取締役会でゴーンのCEO解任を
見送った。
これはルノーの筆頭株主である
仏政府の意向だ。
ルメール経済・財務相は仏メディア
の取材に対し、
「仏政府が解任を求めない理由は単純だ。
(不正の)証拠がないからだ」 と言い切った。
■仏政府は異例の対応でバックアップ
「ルメール氏は『事件発覚後に調べ させたが、
不正は出てこなかった』とも コメントしていて、
まるでゴーンの不正を確認したという日産の社内
調査を信じていないような口ぶりです。逮捕直後
にはマクロン大統領が『ルノー、日産のグループ
の安定性を注視していく』とコメントを出し、
20日にはフラ ンスの駐日大使が東京拘置所に
出向いてゴーンと面会していますが、どれも
異例のことで、フランス政府のゴーンを守ると
いう強いメッセージに見える。 マクロン大統領
はかねてルノーと日産の経営統合を求めていま
した。ルノー としても、利益の半分を稼ぎ出す
日産を絶対に手放したくない。そのために、まだ
ゴーンの存在が必要なのです」
(経済ジャーナリスト・有森隆氏)
仏ルモンド紙の電子版は20日、 ゴーン逮捕は
「日本側のクーデター」というルノー経営陣の声
を報じた。
自国産業強化のためルノーと日産の経営統合を
志向する仏政府に、日本側が反発していたと解説
している。
英フィナンシャル・タイムズ紙も、
ゴーン逮捕劇の背景には経営を巡る内部抗争
があったと分析。
仏政府の意を受けてルノーとの経営統合を進め
ようとするゴーンに日産経営陣が抵抗し、
これが逮捕の引き になったとしている。
日産側は仏政府による経営介入を警戒し、
独立したままの資本関係の維持を望んでいたが、
社内のガバ ナンスではゴーンを引きずり降ろせ
ないため、東京地検の“外圧”を利用して追い落と
しにかかったという見立てだ。
■クーデター劇の背後で跋扈した魑魅魍魎
の主導権争い
「今回のゴーン逮捕劇の背後にある のは、
単に日産内部だけの抗争ではありません。
日産の子会社化を推進するマクロン大統領
のバックにいる国際資本と、米国に協力的
でない ゴーンを快く思っていなかったトランプ
大統領とその周りにいる金融グループ の綱
引きという側面もある。勢力争いに東京地検
まで巻き込み、クーデター まがいの反乱を
起こしたものの、これ で反ゴーン派がすん
なり主導権を握ることにはならないでしょう。
ゴーンが 日産を私物化していたことは許され
ませんが、潰れかかっていた日産を短期間で
立ち直らせたことも事実です。ゴーンがいな
くなれば経営が不安定になるのは避けられない
し、ルノーとの提携解消も現実的ではない。
アライ アンスのおかげで販売台数が世界2位
に上り詰めたわけで、提携を解消れ ば、二流
メーカーに転落しかねません」
(経済評論家・斎藤満氏)
日産はゴーン逮捕を機に、 ルノーとの持ち株
比率の不均衡など、提携関係のあり方について
見直す 方針だ。
22日の取締役会では、企業ガバナンス や経営
体制の刷新も議論される。
また、ゴーンを早く取締役から外すため、来年
6月を待たずに臨時株主総会を開催する案も
浮上しているという。
勾留されて不在の間、一気に外堀を埋めて
ゴーンを追放してしまうというシナリオだろうが、
果たして思惑通りいくかどうか。
まず、ゴーンの長期勾留は難しいだろう。
国際的に問題視されている日本の「人質司法」が
批判の的になりかねない。
それに保釈後、ゴーンが国籍を有するフランスや
レバノンに逃げ込んだら 東京地検は手を出せる
のか。
仮に裁判に持ち込めても、有罪にできる保証は
ない。
世界中の政財界に顔が利くゴーンの反撃は必至だ。
仏経済紙レゼコーは、ゴーンを追い 落とした
日産の西川広人社長を 「ブルータス」に例え、
「目をかけてくれたゴーン氏を公共の場で引き
ずり降ろした」と断罪した。
有名な「ブルータス、おまえもか」は
シェークスピアの戯曲のセリフだが、
暗殺されたカエサルは劇中でこう言う。
「Ettu,Brute?Thenfall,
Caesar! (ブルトゥス、おまえもか?
もはや カエサルもここまでか!)」――。
■カリスマを失ったイエスマン集団に何が
できるのか
第一幕では失脚したかに見えるゴーン だが、
このまま黙って引き下がるとは思えない。
日産との徹底抗戦が始まるのではないか。
「ゴーンは日産と三菱自動車の会長を解任
されても、ルノー・日産・三菱自動車アライ
アンスのCEOとして実質的な支配力を維持
しています。今回の事件で、かえってルノー
と日産の経営統合を強引に進める方向に行く
かもしれない。それに、言われているような
不正が、わずか数人の側近だけで実行できた
のかも疑問です。不正行為が何年も続いて
いたのなら、 見抜けなかった現経営陣は無能
のそしりを免れない。そもそも現経営陣は
ゴーン に気に入られて引き上げられたイエス
マンばかりです。集団指導体制で難局を乗り
切ると言っているが、この陣営では不可能で
しょう。日仏政府の思惑もある中で、カリスマ
を失ったイエスマン集団が独自の舵取りなんて
できるのか。有価証券 報告書の虚偽記載は
ゴーン個人の問題ではなく、法人としての
責任も問われる。会社に多大な損害を与える
不正行為を黙認してきたとすれば、株主代表
訴訟に発展する可能性もある。実に前途多難
です」(有森隆氏=前出)
ただでさえ、激動の自動車業界である。
日本車メーカーは米国が突きつけてくる
関税引き上げや数量規制に翻弄されている。
さらには米中貿易戦争の影響。
ガソリン車を諦め、EVでの覇権を狙う
中国は、海外メーカーの技術に触手を伸ば
している。
もちろん、仏政府も虎視眈々だ。
欧州メーカーもしのぎを削る中、無能経営陣
が迷走を続ければ、日産が誇るEV技術は
草刈り場に なりかねない。
事件の行方は、国の経済政策と雇用に関わる
問題だ。
仏政府は新たな独裁者をCEOとし 送り込ん
でくるのか。
はたまた日産を守るために日本政府が動くのか。
ゴーンはどんな反撃に出てくるか。
あまりに衝撃的だったカリスマ経営者の突然の
逮捕は、国際社会も巻き込んで、まだまだ
二幕も三幕もありそうだ。
【転載終了】
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ゴーン解任で来週の市場にも影響がでそうですね。
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