来年の消費増税、家計負担額は2.2兆円に・・・
Business Journal
【転載開始】
来年の消費増税、家計負担額は2.2兆円に・・・
景気の腰折る可能性も
■家計負担は2.2兆円
2019年10月の消費増税の負担額
を試算すると、消費増税そのものは
マクロの負担額が前回14年の4分の1
程度になると判断される。
参考のために、1997年と14年、
次回19年10月のそれぞれについて、
マクロの負担額を見ると、
97年は消費税率の引き上げ幅自体
は2%で、負担増は5兆円程度だった。
しかし、特別減税の廃止や年金医療
保険改革等の負担が重なり、
結果的には8兆円以上の大きな負担
となった。
さらに、景気対策がないなかで、
同年7月にアジア通貨危機が起こり、
11月に金融システム不安が生じた
ため、景気は腰折れをしてしまった。
確かに、97年は消費増税以外の
負担増もあったため、消費増税の
影響だけで景気が腰折れしたとは
判断できない。
これに対し、前回14年の消費税率
3%の引き上げは、それだけで8兆円
以上の負担増になり、家計にも相当
大きな負担がのしかかった。
次回19年10月の消費増税の
負担額については、財務省が試算
した税収増減から推定できる。
軽減税率を導入せずに消費税率が
10%に引き上げられると、最終的に
税収は5.6兆円増えることになる。
しかし酒類・外食を除く食料を軽減
税率の対象品目とした場合、
1兆円の減収となる。
また消費増税の使い道として、
増収分の1.4兆円を教育無償化・
負担軽減に充当することになって いる。
このことから、家計全体では2.2兆円
程度の負担に軽減されると計算される。
特に、増収分の1.4兆円を教育無償化
・負担軽減に充てることは、家計全体
では1.4兆円程度の所得減税と同程度
の効果になることが示唆される。
■経済成長率を▲0.7%押し下げ
そこで、内閣府の最新マクロモデル
の乗数を用いて、前回14年の消費税率
3%引き上げの際の経済成長率への
影響を試算すると、
13年度は駆け込み需要により個人消費
の押し上げ等を通じて経済成長率が
0.7%引き上げられた一方で、14年度
は個人消費の押し下げ等を通じて
経済成長率が 1.4%押し下げられたこと
になる。
一方、次回19年10月に軽減税率を導入
した上で消費税率を2%引き上げた場合
の効果を試算すると、前年は駆け込み
需要によると個人消費の押し上げ等を
通じて 経済成長率を0.4%押し上げるが、
引き上げた年は個人消費の押し下げ等
を通じて経済成長率を0.8% 押し下げる
ことになる。
ここに子育て還付のプラス効果が
加わっても成長率の押し下げは 0.7%と
なる。
このように、次回の消費増税は 前回
と比べ経済成長率の押し下げ効果は半分
程度にとどまるが、東京五輪の特需の
反動減が起こる時期と重なる可能性が
あることには注意が必要だ。
五輪特需は建設投資が主だが、1964年
10月開催の東京五輪では経済成長率の
ピークは五輪の前年の63年10~12月期
だった。
20年8月開催の今回の東京五輪にあて
はめると19年7~9月期になる。
このため、外部環境にもよるが、
いくら負担額が少なくなるからといって、
無防備で消費税率を引き上げれば
景気腰折れの可能性が相当高まるだろう。
■デフレ脱却に影響、対策は不可欠に
なお、消費税に軽減税率が導入されると、
IT関連業界への直接的な恩恵もあるが、
事業所などでは会計システムの変更を
余儀なくされることが想定される。
日本経済への影響を考える上では、
そうした負担の影響も考慮しなけれ
ばならない。
また、本試算では内閣府のマクロ計量
モデルの乗数を用いているため、
社会保障充実の効果が平均的に出現する
試算となっている。
しかし、子育て世帯の限界消費性向の
大きさ次第で、GDP押し上げ効果が
変わる可能性には注意が必要 だろう。
今後の消費税率引き上げの課題 と
しては、まずデフレ脱却への影響が
指摘できる。
というのも、日本経済研究センター の
「ESPフォーキャスト調査」に基づけば、
フォーキャスターのコンセンサス通りに
GDPが成長した場合は、19年10月から
消費税率を引き上げると再度GDPギャップ
が マイナスになってしまうからである。
特に14年4月の消費税率引き上げの際も、
引き上げ直前にはGDPギャップが一時的
にプラスになったものの、引き上げ直後に
安倍政権 発足以前のマイナス水準まで
GDPギャップが逆戻りした経緯がある。
また、消費増税は家計の恒常的な購買力低下
で内需への影響が大きいという声もある。
前回の消費増税で家計向けの支援策が
0.7兆円弱にとどまったことからすれば、
ある程度の規模の予算を配分した対策は
不可欠であると思われる。
一方で、将来のさらなる消費税率の引き上げ幅
を抑制する意味でも、社会保障の効率化も必要
といえる だろう。
将来的にも負担軽減策を併用すれば、
その後の消費増税も実施しやすくなるが、
逆に負担 軽減策をおろそかにして国民の
不満を高めてしまうと、その後の消費増税
が政治的に困難になるだろう。
将来の消費税率の引き上げを確実なものに
する意味でも、 家計負担軽減策は不可欠だと
考えられる。
(文=永濱利廣/第一生命経済
研究所経済調査部首席エコノミスト)
【転載終了】
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日本国民は、時間が経つと忘れて
しまいますからね。
10%にも慣れてしまうのかも。
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