武田薬品、格付け会社が一斉に格付け引き下げ・・・
Business Journal
【転載開始】
■武田薬品、格付け会社が一斉に
格付け引き下げ・・・
財務悪化で株価急落、巨額買収
の落とし穴
「財務リスクは承知しているが、
好機を逃すわけにはいかなかった」
武田薬品工業のクリストフ・ウェバー
社長は、アイルランド製薬大手
シャイアーを買収する議案が、
2018年12月5日の臨時株主総会
で承認されたことを受け、
メディアの 取材にこう答えている。
買収総額は460億ポンド
(約6兆6000億円)。
日本企業による海外企業のM&A
(合併・買収)としては過去最大で
ある。
この買収により武田薬品は世界
第8位の売上規模となり、悲願と
してきた世界のベスト10、
“メガ・ファーマ”の仲間入りを果た
した。
しかし、その代償は大きい。
買収資金は新株発行と3兆円超の
借り入れや社債で賄う。
有利子負債が6兆円近くに膨らむ
上に、1兆円以上の「のれん」が
急増する。
買収後の経営に疑念が渦巻く。
格付け会社は、当然のことだが、
財務リスクを懸念する。
格付投資情報センター(R&I)は、
武田薬品の発行体格付けを
「ダブルAマイナス」から「シングルA」
に2段階引き下げた。
ムーディーズ・ジャパンは、
発行体格付けを 「A2(シングルAに相当)」
から 「Baa2(トリプルBに相当)」に3段階
下げた。
東京株式市場の評価も厳しい。
18年12月7日、武田薬品株は一時6%安の
3859円まで急落した。
4000円を割り込むのは13年1月以来 6年ぶり。
下落は続き、12月19日に年初来安値の
3498円をつけた。
12月28日の大納会の終値は3705円
(87円安)。
17年12月29日の大納会の終値6401円と
比較すると42%の下落だ。
巨額負債による財務悪化が改めて
意識された。
■シャイアーの買収案は、89.13%の
賛成で可決
18年12月5日、アイルランド製薬大手
シャイアーの買収の承認を得るための
臨時株主総会をインテックス大阪
(大阪市)で開き、約850人が出席した。
ウェバー氏は冒頭で買収の意義を説明。
「年間4000億円以上の研究開発投資が
可能になる。世界でも競争力のある水準だ」
と述べ、新薬の開発や営業面で規模の拡大
がメリットをもたらすと強調した。
質疑応答に先立ち、事前に株主から受け
た質問に回答した。
有利子負債の削減計画に関連し、買収から
3年後には統合コスト圧縮効果が年14億ドル
(約1600億円)に達することや、
非中核資産の売却を進めることを説明した。
事前に質問状を提出した創業家筋の
武田和久氏やOBら約130人でつくる
「武田薬品の将来を考える会」
(持株比率1%)は、買収の検討が明らか
になった18年3月以降、財務リスクを理由
に一貫して買収に反対してきた。
臨時株主総会を目前にして、
「武田薬品最後の創業家社長だった武田國男
氏も反対している」と発表。
臨時株主総会2日前には武田和久氏が外国特派
員協会で記者会見し、買収反対を力説した。
「考える会」は反対したが、株主の過半を
占める機関投資家が賛成し、株主の3分の2
以上の同意を得た。
シャイアー買収のために発行される普通株式の
募集事項を取締役に委任する議案は89.13%の
賛成で 可決した。
19年1月8日、武田薬品はシャイアー を完全
子会社とし、年間売上高が 3兆円超と
メガ・ファーマが誕生した。
■買収後の焦点は「のれん」の
減損テスト
一方、巨額買収で財務の健全性は悪化
する。
本業の収益力を示す指標として海外投資家
が重視するEBITDA (税引き前利益+支払い
利息+ 減価償却費)に対する純有利子負債
の倍率は2倍弱から5倍に悪化する。
シャイアーの純利益率は28.2%で、
武田薬品の9.0%を大きく上回る。
これは世界の製薬業界でもトップクラス。
低収益にあえぐ武田薬品の収益力の強化
につながる。
シャイアーのEBITDAは約7300億円で、
武田薬品の約2倍という高収益企業なの
だ。
投下した資金を買収先企業の何年分の
利益で回収できるかを示す
「EV/EBITDA倍率」は11倍。
製薬業界のM&Aは13~14倍程度といわれ
ている。
シャイアー 買収を
「武田薬品がグローバル製薬業界になるため
の好機だった」と捉えたウェバー氏の決断
を評価するアナリストは少なくない。
ウェバー氏は、2023年3月をめどに
EBITDAに対する純有利子負債の倍率を
買収前とほぼ同じ水準の2倍程度まで
圧縮する方針だ。
そのために武田薬品本体の収益力の
アップを急ぐ。
まず着手するのが、最大の収益源になる
と期待する米国事業の拡充。
さらに、最大100億ドル(約1兆1000億円)
規模の非中核 事業の売却も検討している。
話題を集めそうなのが「アリナミン」 に
代表される大衆薬部門の売却だろう。
もし、同部門が売りに出されれば、
製薬会社や投資ファンドの争奪戦になると
予想されている。
武田薬品が採用する国際会計基準では、
のれんの定期的償却は不要だが、減損
テストを毎年実施する 必要がある。
海外企業を巨額買収した日本企業が減損
テストによって多額の損失を出したケース
は多々ある。
それが海外大型M&Aの落とし穴だ。
シャイアーののれん (4兆~4兆4000億円)
や無形資産 (6兆3000億~6兆7000億円)の
減損リスクは無視できない。
格付け会社が格下げし、株価が下落した理由だ。
ウェバー氏は株価を押し上げる具体的な
施策を打ち出せるのか。
19年は「選択と集中」の実行力が試される
年になる。
(文=編集部)
【転載終了】
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日系企業のM&Aはことごとく失敗
していますから、買収してもシェア8位
と下位なのが不安要素なのでしょう。
シャイアーの目玉薬品の期限切れが
短いのも不安要素なのでしょう。
市場でも、東芝の二の舞が心配され
ていましたが、株価下落の一因でもある
のでしょうね。
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