地方の国公立大学も存亡の危機・・・

 Business Journal 


 【転載開始】


 地方の国公立大学も存亡の危機・・・ 

激変する全国大学教育 

2019.12.10


 ■平成の30年間で様変わりした大学のあり方 


 ――平成時代の大学を振り返って、 

いかがですか。


 木村誠氏(以下、木村) 平成の30年間、 

文部科学省は大学の新設を次々と認可して 

きました。国立、公立、私立をあわせて、 

1986年(昭和61年)には465大学でした 

が、2018年には782大学に増えています。 

この間、18歳人口は微減でしたが、その

 一方で大学進学率は年々上がってきました。 

18年度の大学・短大進学率は過去最高の 

57.9%を記録しています。 

 ただし、大学が増える一方で平成が終わ 

り、18歳人口の大幅減少時期に突入し、 

大学進学率が上昇しても大学進学者数は減少 

していくという局面に入っています。日本 

私学事業団の調査によると、私大の約4割が 

定員割れになっており、大学経営も赤字が 

増え、まさに岐路に立たされています。 


――地方の大学の状況は、どのように変わった 

のでしょうか。 


 木村 昭和後期から、地方自治体が既存の 

学校法人と協力し財政支援をする「公私 

協力方式」が、地方の私大を中心に広がって 

いきました。具体例としては、苫小牧駒澤 

大学、石巻専修大学、いわき明星大学など 

です。しかし、苫小牧駒澤大は学校法人 

駒澤大学が経営から手を引き、中国と関係 

が深い学校法人京都育英館に18年に無償 

譲渡され、21年には校名が変更される予定 

です。有名私大の系列でも思ったように 

志願者が増加せず、平成に入ると、地方 

自治体の求めに応じて地方に系列大学を 

新設するケースが減少しました。  


 それに代わって、実質的に公設であり 

ながら法的には民営(私立学校法人)と 

いう「公設民営方式」の私大が台頭します。 

しかし、これも結局は失敗に終わります。

 地方の進学校は地元の国公立大への合格を 

重視する傾向があります。また、公設民営 

方式の大学は学費が東京の私大並みに高く、 

私学で歴史も浅い点が嫌われたのです。 

 そこで、非進学校からの推薦枠を拡大 

しましたが、この動きも逆に進学校生徒 

から嫌われ、さらに地元の受験生から支持 

されなくなるという悪循環が生まれ、結果 

的に定員割れするケースが増えました。 

実質的には公設民営である萩国際大学の 

ように民事再生法適用を申請したり、 

公私協力方式の愛知新城大谷大学、三重 

中京大学のように閉学を余儀なくされた 

りする例も出始めています。

  また、公立化で起死回生を図った私大 

もあります。代表例が、福知山公立大学 

(旧成美大学)や実質的に公設民営である

山口東京理科大学などです。


 ――地方私大は全般的に厳しい環境に置か

れていますね。


 木村 平成の後半に入ると、少子高齢化 

を反映して医療系大学が増えました。

 たとえばこの17年に開学した私大は、すべて

医療看護系です。 

  また、平成の時代に個性派大学の評価が

高まりました。秋田県の国際教養大学 (公立)

は授業がすべて英語であること で知られて

いますが、難易度は旧帝国大学 並みです。

福島県の会津大学(公立)は 情報科学で存在感

を示し、学内に復興支援 センターを設けるなど、

地域貢献の面でも 注目を集めています。また、

大分県の立命 館アジア太平洋大学(私立)は海外

留学生 が多く、キャンパスで国際交流ができる 

と評判です。

  一方、開学したものの志願者が集まらず、 

経営に行き詰まっている大学も少なくありません。

定員割れになった大学は淘汰され るべきとの意見

もあります。確かに、特に 短大や女子大から

四年制に昇格したものの 特徴のない大学は、思い

切った改革を断行 する必要があるでしょう。そう

しなければ、 今後は廃学が続出する可能性があり

ます。


 ■大学をめぐる文科省と財務省の思惑


 ――国立大については、いかがでしょうか。


 木村 高知県、島根県のように、地方には 国公立大

のみで私大がない県があります。 そこで、地方創生

・地域振興のプラット フォームのひとつとして、

地方の国立大へ の期待が高まっています。しかし、

実際 には地方の国立大は国の運営費交付金の 査定

が厳しく、経営的には苦しい立場に 立たされてい

ます。

  特に厳しいのが教育系の単科大学です。 愛知教育

大学、宮城教育大学、京都教育 大学、奈良教育大学

などがあり、小学校 教員養成課程に強みがあります。

ところ が、これらの教育系大学の運営交付金の 配分

が厳しい状況です。一方で、小学 教員課程はこれまで

国立大がメインだった のですが、関西大学、関西学院

大学、 立命館大学、早稲田大学などの私大が参入 して

きました。附属小学校の教員を自前 で養成できる

メリットがあり、経営基盤 の安定にもつながります。

また、中堅私大 でも小学校教員養成課程新設が増え

てい ます。

  教員養成課程は設備的なコストはあま りかかり

ませんが、国語、社会(地理歴史 ・公民)、数学、

理科、英語、音楽、美術 など学ぶ専門分野が多く、

教育心理などの 専門分野もバラエティに富んでいま

す。 そのため、有名私大でも総合的なコストが かか

るのです。これを私立大にシフトさせ るという狙い

も文部科学省にあるのでしょう。


 ――国立大は経営統合の動きも活発化して いますね。


 木村 19年5月に、1法人が複数の大学を 運営する

「アンブレラ方式」を可能とする 改正国立大学法人法

が施行されました。 すでに、名古屋大学と岐阜大学は

東海国立 大学機構を設立して法人統合することで 基本

合意しています。奈良女子大学と奈良 教育大学も法人

統合で21年10月を目標に、 新たに国立大学法人奈良

カレッジを設立 することで合意しました。さらに、

帯広 畜産大学と小樽商科大学と北見工業大学 が統合、

静岡大学と浜松医科大学が統合と、 国立大学の再編

が続いています。複数の 大学がそれぞれの伝統と個性

を生かして 存立するには、アンブレラ方式が有利と 

判断したのでしょう。 

 アンブレラ方式による統合は文科省の 意向もある

のでしょうが、一方で財務省 は評価の高い大学に

経営資源を集中させ たいと考えていると思います。

財務省は 「日本はヨーロッパと比較して国立大の 

予算や教員が多い」などと、地方の国立 大を批判する

内容の論文を発表している ほどです。おそらく、財務省

は各都道府県 すべてに国立大法人は不要だと考えている 

のでしょう。

  しかし、地方は国立大がなければ確実 に衰退して

しまいます。地方創生を真剣 に考えるならば、大学経営

資源は全国に 分配すべきです。東京大学や京都大学など

は企業からの寄付金も多く財務的に 豊かですが、地方の

国立大ではそうは いきません。地方の国立大は、「競争 

と集中」の美名のもとに権限と予算が 削られているのが

実情です。むしろ、 地方国立大学からノーベル賞級の

研究を 生むような政策が必要でしょう。


 ■千葉大、15年ぶりに授業料値上げ 


 ――国立大の改革例としては、どんな ケースがありますか。


 木村 九州大学は18年3月に、50年ぶり の新学部「共創学部」

を創設しました。 課題発見から解決に導くために必要な態度 

・能力を分類し、「共創的課題解決力」 の獲得を目指すとの

ことです。島根大学 は19年度から、夏休みの間に

「フレック スターム」という4週間の集中期間を設けています。

あくまで強制ではなく学生の 自主性に任せるかたちですが、

長期の インターンシップ、海外留学、ボランティア などに

じっくり取り組むための制度です。  

 16年4月に国立大初の「国際教養学部」 を創設した千葉大学

は、20年4月から15年 ぶりに授業料を値上げします。これは、

 全学生に留学体験を提供する制度の導入に 伴うものです。  

 地方の国立大は東大のような“総合百貨店” ではなく、

高度な“専門店”となることで生き 残りを図っているように

思います。今後は、 大学の経営改革と地域活性化の活動が

リンク することで、大学と地方がともに飛躍する ことを期待

しています。 

 (構成=長井雄一朗/ライター) 


 【転載終了】

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  今年に入ってからでしたかね、経団連 

が「文系の大学生」入らないと発言しま 

した。 


 文系は、マスコミ関係か教師に限られ 

てしまうのでしょうか?  


 また、最高学府の東大への留学生が 

減ってきています。 

世界大学ランキングを大きく下げて 

いることが関係していますかね? 


LC=相棒's のじじ~放談!

時事関係や自動車関係などの記事を書いています。

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