「総理!今夜もごちそう様!」

 立岩陽一郎 「インファクト」編集長 


 【転載開始】


 ■総理大臣と記者との会食が引き起こ 

 している問題の深刻さに気付かない 

 メディア  1/13(月) 9:09 


 「(店名)にて、いつもの腐れメンバー 

(朝日:曽我、毎日:山田、読売:小田、 

NHK:島田、日テレ:粕谷、日経:石川、 

田崎しゃぶ野郎)と総理はご会食なされ 

ました」  


 そのツイートを1月12日に私が 

リツイートしたところ、たちまち2000 

を超えるリツイートで拡散した。 

常日頃の私のツイートに対する反応の 

実に100倍だった。  


 ここは個々の参加者というより、 

参加の形態に注目したい。 

何れも日本を代表するメディアから1人 

が参加している。

これが会食の肝であり、 

同時にそれが問題点であることは後述 

したい。  


 この安倍総理と「くされメンバー」 

との会食は度々批判されてきた。 

それは、森友、加計問題から桜を見る会 

の問題にいたるまで、国民の多くが抱い 

ている疑問に総理とその政権が応えて 

いない中で、メディアが取り込まれて 

いるという印象が強くもたれているからだ。 

特に、桜を見る会については安倍総理は 

勿論、夫人の関与も明らかになっている。 

こうした中で「いつもの」のメンバーが 

総理と会食したという事実は、 

ジャーナリストの見識の無さを物語って 

余りある。 


 一つ言えることがある。 

これは少なくとも私が知るアメリカの 

ジャーナリズムの世界では記者の倫理違反 

になる。  


 私はNHKに在職していた2010年から 

2011年まで、アメリカのジャーナリズム・ 

スクールに在籍した。 

また、NHKを退職した2017年にも再び、 

フェローとして在籍した。  


 そこで教えられることは、コンピューター 

やFOIA(情報公開法)を駆使した取材法 

などだが、実は、最も重視されているのが、 

ジャーナリストの倫理だ。 

これは基本中の基本として教えられるし、 

常に議論をしている。 

担当していたリン・ペリー教授は次の様に 

語った。  


 「例えば、取材先と食事をしたり、 

取材先に過度な贈り物をしたりする 

のは、取材者としての倫理に違反 

することになります」 


 ペリー教授はアメリカの全国紙である 

USAツデーで記者、デスクを経験した 

ベテラン・ジャーナリストだ。 


  私は次の様に問うた。 


 「日本では、取材者は取材先の懐に 

入り込むことが重視されるが、その際 

に、食事をしたり酒を飲んだりといった 

ことが奨励されているが?それはアメリカ

では違う?」 


 ペリー教授の答えは明快だった。  


 「私自身は約30年近い記者生活で、 

取材先から食事に誘われたことは何度 

も有りますが、そうしたものに応じた 

ことは有りません」 


 つまりアメリカでも、取材される側が 

ジャーナリストを食事に誘うことは有る 

ということだ。 

では、ペリー記者はなぜ断ったのか? 


 「それは単なる癒着だからです。例えば、

取材先と親しくなって得た情報で記事を

書いても、それは評価されません。それは

単に、相手に利用されているだけとみなさ

れる危険も有ります。そうなったらジャーナ

リストとしては終わりです」 


 その時、なるほどと思わされたのは、 

日米のジャーナリズムの質の違いだ。 

それを説明する前に、補足しておきたい。  


 情報は権力を持った人間に集まる。 

それは日本でもアメリカでも同じだ。 

その情報は、あらゆる人に対して甘い蜜を 

発する。 

だからアリが蜜に吸い寄せられるように 

日本のジャーナリストは権力に群がろう 

とする。  


 その権力とは、総理大臣を頂点に、 

有力政治家、高級官僚、捜査機関の 

トップ、自治体の長、財界トップ、 

有力企業のトップなどだ。  


 しかし、そうして得られる情報は、 

権力の側に都合の良いものであるケース 

がほとんどだ。 結果、日本のメディア

には権力側の広報 機関のような報道が

蔓延することになる。 

カルロス・ゴーン氏が検察、日産への批判 

と同時に、日本のメディアへの批判を展開 

したのはそれを指しているし、これまでも 

そうした批判は有った。  


 ところが、アメリカのジャーナリストに 

とってその蜜は実はあまり甘くないという 

ことだ。  


 元日本経済新聞編集委員でコロンビア大学 

ジャーナリズム・スクールを卒業している 

牧野洋氏も、その点を指摘する。  


 「例えば、日米でジャーナリストに与え 

られる賞が有ります。アメリカでは 

ピューリッツアー賞、日本は新聞協会賞。 

日経は大型企業の合併をスクープしたと 

して何度か受賞しています。ところが、 

世界的な企業の合併を何度もスクープして 

いるウォールストリート・ジャーナルは 

それらでは受賞していない」 


 そこに日米のジャーナリズムの違いが 

有ると牧野氏は指摘する。  


 「合併の記事は何れは発表されるもの 

です。それを先に書いただけのことで、 

それはアメリカでは評価されない」  


 当然の話だが、企業の合併話とは、 

ジャーナリストが頑張って書かなくても 

何れ発表される内容だ。 

発表を待って書いたところで、社会に 

とって何の不都合もない。 

合併記事に限らず日本のいわゆる 

「スクープ」にはそうしたものが多い。 

否、正直言うと、ほとんどがそうした 

ものだ。

そして、それが評価される。 


 そう考えると、なぜ日本ではメディア 

が権力に吸い寄せられるのかが理解で 

きる。 

それが「スクープ」を生み、自身の 

ジャーナリストとしての評価を上げる 

ことになるからだ。 

その結果が、「いつもの腐れメンバー」に 

よる総理大臣との会食となる。 


 例えば、「日米貿易協定の締結へ」 

とか「安倍総理、トランプ大統領と会談へ」、 

「ゴーン会長逮捕へ」などといった報道は、 

そうした日本ジャーナリズムの産物だ。 


 しかし考えなければいけないのは、 

それはあくまで「」付きのスクープでしか 

ないという点だ。 

否、ここは明確に書いた方が良い。 

何れ発表される内容を先駆けて書くのは 

スクープではない。 

本来、そこに日米の差は無い。 

それをことさら高く評価するのは日本の 

メディアの悪しき慣習でしかない。  


 前出の牧野氏は、企業合併の「スクープ」 

には顕著な点があると指摘する。  


 「そうした企業合併のスクープで使わ 

れる言葉が、『業界再編が加速する』です。 

つまり、それは良いこと、それによって 

社会が良くなるという意味付けをする。 

まさに、リークする側はそれを求めている 

わけで、それを思ったように書いてくれる 

記者にリークするわけです」 


 つまり、後に発表される情報を先駆けて 

「スクープ」するという作業そのものが、 

ジャーナリズムが権力のしもべになる過程 

になっているということだ。 


 そうなると更にわかりやすのは、 

「~へ」という記事が顕著なのはNHKの 

政治報道だ。 

それを「スクープ」と称して自画自賛して 

いる。 

勿論、あらゆる報道機関にとって政治日程 

を事前に入手することは意味が無いわけ 

ではない。 

事前に準備が進められるという内向きな 

側面以外にも、それを多くの人に知ら 

せることに意味が有ることも間違いない。 

しかし、それを報じるためにのみ 

ジャーナリストが権力に吸い寄せられる 

現状はそろそろ終わりにしないといけない。  


 ここで今回のツイートに戻りたい。 

安倍総理との会食に参加したのは 

主要メディアから各社1人だ。 

ここがまさに、安倍総理の狙いでもある。 

実は、日本の記者は他社との競争以上に、 

自社内での競争を意識している。 

これは間違いない。 

そうした心理をうまくついて、 

「あなたの会社で私が信頼しているのは 

あなただけです」と言葉を投げるわけだ。 

この「信頼」とは、裏を返せば、 

「あなたは私の信頼を裏切りませんね」 

ということになる。 

まさに、権力によるジャーナリストの 

懐柔以外の何物でもない。


  そう指摘すると、 

「私の筆は会食をしても鈍ることはない」

 と大見えを切る自称「大物記者」がいる。 

しかし、そうした記者が取材先を一刀両断 

にした記事を私は読んだことがない。 


 この会食についてメディア各社は、 

「それは記者の個人的な取材活動だ」 として

コメントを避ける。 

しかし、私のリツイートに書かれたコメント 

を読んでいると、そういう状況ではなく 

なっていることがわかる。 


  例えば、コメントの中に次の様なものが あった。 


 「毎日(新聞)が頑張っているので購読を

始めたが、毎日(新聞)も参加していること

を知り解約した」  


 容易に想像がつくのは、この書き込み 

をした人は意識の高い人だ。 

そういう人にとって、記者が定期的に総理大臣

と会食するという行為は、不祥事と等しく感じ

られるようになって いるということだ。 

極めて健全な反応であり、その声を重く見た方

が良い。  


 ジャーナリストとはどうあるべきか? 

メディアの役割とは何か?もう一度、 

考え直す時が来ている。 


 【転載終了】 

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 日本のメディアも、 

「安倍晋三と不愉快な仲間たち」となり、 

信用を無くしているということでしょう。

 

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