「仕事の未来」は残酷かもしれない・・・
現代ビジネス
【転載開始】
コロナショックで氷河期世代が再び直面
する「危機的状況」 20202.4.15
「仕事の未来」は残酷かもしれない
■コロナショックの深刻な影響
内定取り消し、コロナ切り――。
日本労働弁護団は4月5日に実施した
「新型コロナウィルス感染症に関する
労働問題 全国一斉ホットライン」の
集計結果を4月8日に公表。
東京では121件、全国では4月8日時点
で412件の問い合わせがあったという。
相談内容は多い順から、
「賃金不払い」 (80件)、
「休業・休暇など」(75件)、
「委託・フリー個人事業主からの相談」
(41件)、
「非正規労働者の契約終了」(25件)、
「正規労働者の契約終了」
「労働条件変更」 (各21件)、
「派遣切り」(16件)、
「採用内定取り消し」(12件)
――など深刻だ(重複相談を含む)。
厚生労働省は一般の労働相談のほか、
4月13日からは全国56か所の新卒応援
ハローワークに
「新卒者内定取消等特別相談窓口」を
設置するほどの事態になっている。
こうしたなかでは、就職氷河期世代の
採用がより困難な状態になるのは避けら
れないだろう。
そして、雇用が悪化する経済環境ができ
つつある。
■“世界のトヨタ”でさえ…
新型コロナウィルスの拡大で4月7日、
政府による緊急事態宣言で5月6日まで外出
自粛が要請され、飲食店や小売業は軒並み
臨時休業を迫られた。
外出自粛要請により、食品や生活必需品を
買う以外の消費行動は制限され、経済は停滞。
“世界のトヨタ自動車”さえも減産体制に踏み
切るというコロナショックが起こっている。
帝国データバンクは4月8日時点での上場
企業の業績修正動向調査を発表。
新型コロナの影響で業績予想を下方修正した
のは161社で、減少した売上高は合計で
約1兆4100億円。
影響の拡大が今後も懸念されるとした。
りそな総合研究所は4月9日に
「ショートコメント」を発表。
緊急事態宣言によって全国で4兆9000億円の
消費が減少すると試算した。
2月頃から3月にかけての消費減少分は
3兆5000億円としており、合わせると
8兆4000億円もの消費が失われることになる。
東京商工リサーチの「新型コロナウィルス」
関連倒産状況によれば、4月10日正午時点、
全国で経営破たんが51件に達し、うち倒産が
26件、準備中が25件だった。
「新型コロナ」関連の経営破たん第1号は、
2月21日までに事業を停止して破産準備に
入った富士見荘(愛知県蒲郡市)だったとし
ている。
経営破たんは、4月に入ってからの急増ぶり
が目立つという。
都道府県別では北海道が最多の7件、次いで
東京都の6件となる。
業種別では、宿泊業12件、飲食業7件に集中
している。
各社の報道によれば国際通貨基金(IMF)
のゲオルギエワ専務理事が4月9日、
新型コロナウィルスのパンデミックによって
経済成長率が大幅なマイナスとなり、
2020年の世界経済が1929年の世界恐慌以来、
最悪の見通しになると予測した。
もはや、派遣切りが起こった2008年の
リーマンショック以上の雇用不安どころでは
なくなるだろう。
■また置き去りにされる氷河期世代
こうしたなかで懸念されるのは、就職氷河
期世代が、またも置き去りにされることだ。
遅きに失したとはいえ国をあげて始まった
ばかりの就職氷河期世代の支援を担当する
西村康稔経済再生担当大臣は今、コロナ対策
に追われている。
かろうじて中央省庁や地方自治体での就職
氷河期世代を対象とした中途採用は続いてい
るが、もともとコロナショックで打撃を受け
ている飲食業や小売業、タクシー運転手など
の業界に氷河期向けの求人が多かったため、
企業の採用意欲にブレーキがかかることは避け
られないだろう。
2020年度、就職氷河期支援プログラム関連
の予算は合計1300億円が計上されたが、
細かく事業を検証すると、ほとんどが過去の
施策の焼き直しになっている。
そして、もともと他の年齢層も対象となる事業
も多い。
政府が昨年度の段階で打ち出していた
「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」
のなかで新規の新規事業として柱となるのは、
「ハローワークへの専門窓口の設置」と業界
団体を通じて行われる「短期資格等習得コース
の創設」の2つとなる。
短期資格等習得コースの事業には、今年度
34億6500万円の予算が投じられる。
建設、運輸、農業、ITなどの業界団体に委託
する形で、1万5000人の就職を目標としている。
ただ、建設や農業は外国人労働者を頼みに
するほどの人手不足。
裏返していえば人気のない業界だ。
そこに就職氷河期世代が就職を決めるとは考え
にくい。
日本総研の下田裕介主任研究員は、
「全体を通してこれまでの支援策の延長線上
であることは否めない。就職氷河期世代を
ピンポイントで支援する意思があるのか疑問
を感じる。業界団体を通じで運輸や建設など
の資格をとって就職するという出口一体型
支援を見ても、同世代の実情に即したサポー
トというよりも、とりわけ人手不足の業界に
呼び込もうという意図が透けて見える。ただ、
IT業界であれば高い技術が身につくことで
ステップアップが期待できるだろう」と見
ている。
ITの求人状況を見ると、情報処理・通信
技術者のパートを除いた常用雇用の有効求人
倍率は2.17倍と高めだ(2020年2月)。
ほかに有効求人倍率が高いのは、
「採掘の職業」(9.98倍)、
「建設躯体工事の職業」(9.45倍)、
「保安の職業」(7.25倍)、
「建築・土木・測量技術者」(6.65倍)で、
ほかに高いのは、「保安の職業」(7.25倍)
「土木の職業」(5.95倍)「建設の職業」
(4.92倍)など。
一方で、一般事務には応募が殺到し、
有効求人倍率は0.37倍という低さで
ミスマッチが起こっている。
■労働コストを安く済ませたいという圧力
1991年にバブルが崩壊してからは、
大卒の 就職先は製造業が低下する一方で
サービス業 と卸売・小売業、飲食業が
増加して、1994年 にサービス業が逆転、
95年に卸売・小売業、 飲食業が逆転した。
2000年の段階で高卒の約2割が就職し、
就職先は男子では生産工程・労務作業者が
約6割を占め、サービス職業と販売従事者
がそれぞれ約1割、専門的・技術的職業が
約5%、保安職業従事者が約5%となっている。
女子はサービス業従事者が約3割、
事務従事者、生産工程・労務従事者、
販売従事者がそれぞれ2割前後だった。
就職氷河期はおおむね1993年から2004年
に大学や高校などを卒業した世代となる。
1991年のバブル崩壊、1997年の金融不安、
2001年のITバブル崩壊、2008年の
リーマンショックを経ており、都度、翻弄
されてきた世代でもある。
高校卒業後3年以内の早期離職率は4~5割、
大卒で約3割。不況期にはブラック企業の
正社員採用が目立つため、たとえ卒業後すぐ
に正社員として就職しても辞めることになり、
その後に非正規雇用になるケースもある。
学歴に関係なく、単純作業がメインの職場
で非正規を転々とすればスキルを積めなくなる。
質の高い雇用にどうやってつないでいくか、
そして、どこに質の高い雇用を求めるのか
という課題は大きい。
こうした問題は3年ほど前にも指摘されて
いる。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミ
ストは「生産性問題の急所」というレポート
を2017年3月30日に出しており、雇用吸収
の受け皿になっているのがサービス業という
点で生産性が上がらず、雇用が非正規化へ
シフトすると言及。
内閣府「国民経済計算」(2014年度)から
産業別の1人当たり生産性は、製造業が1時間
当たり5708円であるのに対して、卸小売業は
同3585円、サービス業は同2785円、建設業は
同2191円であると試算。
「サービス業には労働コストを安く済ませたい
という圧力が強く、スキルを蓄積した正規雇用
を吸収する力に乏しい」としている。
過去20年の間で、高いスキルの仕事の割合
が10%以上上昇していることから、新たに
生まれる仕事に必要なスキルを労働者が持って
いないため教育訓練が必要だとしている。
OECDは「非標準的な働き方(非正規雇用)は
教育を受ける機会が少ないままでスキルを上げ
られない。日本の氷河期世代への教育訓練の
支援は必要不可欠」としており、国際的にも注目
されている。
■産業構造の問題に向き合うとき
雇用の受け皿となってきた業界は今、コロナ
ショックで大打撃を受けている。
新型コロナウィルスによる影響で訪日外客数
は2019年2月の260万4000人から2020年2月は
108万5000人となり、前年同月比で58.3% も
減った(日本政府観光局、3月19日発表)。
観光地は閑古鳥が鳴き、“インバウンド・バブル”
は今、消えてなくなってしまった。
コロナショックを機に日本が抱える産業構造
の問題を考えていかなければ、就職氷河期世代
がますます置き去りにされてしまう。
同世代のなかでも40代後半には226万人
(2018年時点)もの非正規雇用の存在があり、
今、非正規で働いていたとしてもコロナ切り
にあって失業する可能性も大きい。
同世代が、そのまま50代に突入するのが目前
としているなか、緩めず対策を打たなければ
ならない。
【転載終了】
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コロナ収束した時の、政府による景気テコ入れ
が重要になります。
一律10万円は当面の生活維持費ですね。
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